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【 邪はそれ正に勝ちがたく 】 [雑学]

【 邪はそれ正に勝ちがたく 】 

高校野球の春の甲子園も、今日で決勝戦が終わりました。自分の出身校が出場する訳でもなく、縁のある県の代表校が勝ち残る訳でもなく、勿論自分の知る選手が登場する訳でもないのですが、ぼんやりとテレビで見てしまう事があります。そして気付く事があります。

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それはスタンドに陣取る応援団のブラスバンドの演奏が、超ワンパターンだという事です。 せっかくだから自分達のご当地ソングを演奏したり、地元の民謡のメロディーを取り入れてもいいように思うのですが、だいたい、神宮球場で演奏される東京六大学野球の応援歌をそのまま使っています。

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これは、戦後の教育で、勇ましい歌や好戦的な音楽を忌避した為に、人を励ましたり、鼓舞する適当な音楽が存在しないからでしょう。そして今でも軍歌がながれます。

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気付く人は気付くのでしょうが、かならずブラスバンドの演奏するメロディーの中に、山田美妙作詞 小山作之助作曲の「敵は幾万ありとても」の一部があります。

しかし、そのサワリの部分ではなく、中間の「邪はそれ正に勝ちがたく 直は曲にぞ勝ち栗の」の部分の数小節が、繰り返し金管楽器で演奏されます。

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これは考えてみれば不思議な事です。そもそも、高校野球の敵味方に正邪などはありません。無論、作戦として姑息な手段をとる場合もあるでしょうが、すべてルールに許容された範囲であり、高校球児は正々堂々とプレイします。 こちらが正義で、向こうが邪であるという、論理は成立しません。

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この歌の冒頭の歌詞にある「敵は幾万ありとても、すべて烏合の勢なるぞ」というのも、高校野球にはそぐいません。 なぜなら野球の試合でベンチに入れる選手の数は限られていて、敵味方同数だからです。

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兵の数では劣っても、こちらには正義があり、負けないぞ・・と奮い立たせるこの軍歌は、全く高校野球にはふさわしくないのです。それが、甲子園で演奏される滑稽さをオヒョウは思いました。

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あの曲を演奏する生徒達や選手達は、曲の歌詞やその意味を知っているのかな? いやそれ以前に、平和主義を標榜し軍国主義的なものを嫌う、朝日新聞や毎日新聞が主催する大会なのに、軍歌とは面白い・・。

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では、本物の戦争に於いて、正邪はあるのでしょうか? そして本当に戦争では、正義が勝つのでしょうか? 幼稚な様ですが、これは難しい問題です。

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オヒョウが子供の頃、漫画やテレビ番組の主人公は、必ず正義の味方でした。 悪を懲らしめ、必ず正義が勝つ・・・というストーリーでした。すると困ってしまいます。 日本は、オヒョウが生まれるかなり前に戦争に負けています。すると・・日本は悪者だったのか?

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この質問をされた大人は誰もが困った様子でした。確かに20世紀の前半に日本が行った幾つかの戦争について、日本に非がある事は事実です。 しかし相手の国にだって非はあろうし、祖国を悪者扱いして非難して得意になる訳にもいきません。国家に限らず、本当は応援したい対象が(悪であるから)、正義に負けてしまった・・という場合、どう解釈すればいいのか・・・。

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実は答えは簡単です。 争いごとで正義が勝つとは限りません。むしろ負ける事の方が多いかも知れません。 だから勝ったからといって、自分を正義だと考えるのは間違いですし、負けたからといって自分を全否定する必要もないのです。人々はしばしば願望と真理を意図的に混同して、自らを慰めたり励ましたりします。

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例えば「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」という格言。 あれはどちらかというと「健全なる精神は健全なる肉体に宿ってほしい」という願望であり、現実を正確に表現するものではありません。もし格言が真実なら、不健康な人、体の弱い人は精神も不健康だ・・という事になり、立つ瀬がありません。実際には肉体ばかりが発達して精神が未熟だったり、素行の悪い青少年が多い事を嘆き、体と心の成長のバランスが取れていたらいいのにな・・という願望を示した言葉であると、オヒョウは理解します。

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同じように、正義が勝利する・・という言葉も、そうであってほしい・・という願望が滲んでいます。 しかしそれはあくまで一般社会の問題です。スポーツ競技に於いては、申し上げた通り、正義も悪も無い訳です。しかし、それにしても、アマチュアもプロも勝敗にこだわり過ぎているな・・・と思っていたら、4月2日の日経新聞のコラム欄に豊田泰光氏が面白い事を書いていました。 その話は次号で。


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