SSブログ

【南北戦争、太平洋戦争、イラク戦争・・・それぞれの戦後】 再掲 [アメリカ]

【南北戦争、太平洋戦争、イラク戦争・・・それぞれの戦後】

 イラクの新政権(米国の傀儡政権?)による統治がうまくいっていない様です。

多くの人が指摘していますが、この戦争は、バグダッド占領までより、その後の方が大変です。 

オヒョウの推測ですが、ブッシュは、かつて日本に進駐したアメリカ軍が統治に成功し、日本が短期間に模範的な民主国家になった事を念頭に置き、それと同じ事をしようと考えたのではないか?・・と思います。

 しかし、イラクと日本では全てが違います。アメリカは日本に民主主義を植え付けたと考えているかも知れませんが、日本には戦前から議会制民主主義がありました。完全ではありませんが立憲君主国の憲法の枠の中で、民主主義は実行されていたのであり、フセインが統治していたイラクとは随分違います。 それに加え、イラクでのイスラム教宗派対立や、日本の天皇制の存在、戦争の始まり方等、全ての状況が違うのに、日本とイラクを同じ様に考えるのはナンセンスです。

----------------

戦後の日本の復興と民主国家の建設は(いろいろ問題はあったにせよ)、史上希にみる成功だったと聞いています。 

日本人が優秀だったからに他ならないでしょうが、成功の背景には、米国の占領政策が、今回のイラクの場合ほど拙劣ではなかった事もあります。 日本に進駐したアメリカ人は、敗者の痛みを知っていたのかも知れません。以下は、オヒョウが昔、K大学の雑誌で読んだ話の転記です。

-----------------

第二次大戦終結と同時に、占領軍(後で進駐軍と言い換えました)はK大学の日吉キャンパスを接収し ました。終戦までそこには大本営があり、それと入れ替わる形となりました。 着任した米軍のある将官は、日吉キャンパスを明け渡す大学関係者を前に以下の演説をしたそうです。 

「諸君は、我々が勝者として君臨する為に、ここに来たと思うかも知れないがそうではない。 私は米国南部の出身であり、我が郷土は南北戦争の敗者である。私の祖父は南軍に参加し敗北した。 だから私は戦争に敗れた諸君の心情をよく理解する。早く日本が新しい民主的な国として復興するのを期待するものである」

 残念ながら、大学関係者は、まだ復員していなかったり、疎開から戻っておらず、その演説を聴いた人は少なかったとの事です。それに、その将官の発音には強烈な南部なまりがあり、聞き取りにくかったようです。

------------------

オヒョウは、彼がリッジウェイ将軍ではないか? と考えたのですが、そうではないようです。リッジウェイはバージニアの出身です。

------------------

しかし、南北戦争の敗戦と太平洋戦争の敗戦で、アナロジーが成り立つものか? 

これについて、オヒョウの母は

「負けた時の有様は、どの戦争でも似たようなもの」と語っています。  

母がこう語るのは、映画で「風と共に去りぬ」を見ているからです(小説でも読んでいます)。

戦争に負けた時の、虚脱感、権威の失墜、食糧不足、治安の悪化、敗残兵の復員、そしてなぜか負けた側に大発生するシラミ・・・という具合に、敗戦後の日本とアメリカの南部はそっくりだ と母は主張するのです。 

母がこの映画を見たのは、戦争が終わって、それほど時間が経っていない時だったので、余計共感したのかも知れません。

 「アメリカは、戦争をしながら、一方で 総天然色のこんな豪華な映画を作っていたのだ」と 感心する反面、アメリカ人にも敗者の気持ちを理解する人がいるのだ と思ったそうです。 だから、日吉で演説をした将官の話は本音だったのだと思います。

-------------------

翻って、現在のアメリカ軍はどうか?彼等にイラクの人々を思いやる気持ちはあるか?彼等はイスラム教徒とイスラム世界を理解しようとしているのか? 

パパブッシュは湾岸戦争でバグダッドに迫りながら、敢えてそれ以上兵を進めませんでした。(彼は、太平洋戦争に参加し硫黄島で撃墜された経験もあります)。 

今、湾岸戦争で多国籍軍がバグダッドを占領せずに停戦した理由をアメリカで議論する人がいます。もしパパブッシュが占領後の泥沼状態を予測したのであれば慧眼です。或いは自身の戦争経験が影響したのかも知れません。 一方、息子のブッシュは戦争の経験がありません。アメリカ人が心の疵として持つベトナム戦争も、本人は経験していません。彼の政策には、甘さがあるのかも知れません。 少なくとも、息子のブッシュは、日吉の講堂で演説をした将軍の様な人物を占領政策にあててはいないのではないか? 

でも不思議です。ブッシュだって南部の出身であり、先祖を辿れば敗戦の記憶があるはずなのですが・・・。 それに、なぜか彼の発音には南部なまりもあまりありません。 


nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 3

コメント 2

無用ノ介

アナロジーは南部出身者にとっては、自然な感情かもしれません。フォークナーは、1995年に日本に来た際、南北戦争に敗れた故郷・南部と敗戦した日本とは、似た運命にあると述べています。
by 無用ノ介 (2010-12-25 02:29) 

笑うオヒョウ

無用ノ介様 コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、南北戦争の敗者である南軍と、太平洋戦争の敗者である日本に類似点を見つけるのは困難ではないかも知れません。でも私の母の世代は日本の敗戦を直に経験しており、戦争に負けた国を見ると、過剰に感情移入してしまう可能性があります。はるか昔の杜甫の詩「春望」が特に日本で人気があるのは、冒頭の「国破れて山河あり」の一行が敗戦を経験した世代に、特に印象的だからだと思います。そのあたりの情緒的な面を排除して、アナロジーを考えたいと思います。またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-12-27 12:21) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。