SSブログ

【 コレリ大尉のマンドリン 】 [映画]

【 コレリ大尉のマンドリン 】

 今回は、最近DVDで観た映画「コレリ大尉のマンドリン」について感想文を書きます。

・・・・・・

戦争を舞台にした恋愛映画は星の数ほどあります。第二次大戦の映画の場合、大抵 男性の方は連合軍の将校、女性の方は母国に残した恋人か、戦地で知り合った恋人・・・という設定なのですが、「コレリ大尉のマンドリン」はそうではありません。コレリ大尉は全くさっそうとしない、イタリア軍の連絡将校です。

・・・・・・

そして、ギリシャを舞台にした映画も山ほどありますが、それには何通りかの分類があります。以前のブログ【 蜂の旅人 】でも申しましたが、大まかに分ければ3種類です。

1.ギリシャ人俳優がギリシャ人の役を演じて、ギリシャ語の台詞を語るもの。  「日曜はダメよ」「シテール島への旅立ち」「蜂の旅人」等、

2.外国人が、ギリシャ人の役を演じて、英語の台詞を語るもの。「その男、ゾルバ」「コレリ大尉のマンドリン」 等

3.外国人が外国人として登場し、英語の台詞を語るもの。その場合、ギリシャ人は端役として登場。

・・・・・・

多分、ギリシャ人自身が、観る映画は1.でしょうが、「コレリ大尉のマンドリン」は、2.と3.が合体したもので、ギリシャ人の為の映画ではありません。 そしてイタリア人の軍人が異国でその国の娘と恋に陥るのは、「マダムバタフライ」のパターンですが、ストーリーは全く違います。

・・・・・・

不思議な事に、イタリア軍大尉の主人公をアメリカ人のニコラス・ケイジが演じています(もっとも父方は、映画界で有名なコッポラ一族でイタリア系ですが)。一方、ヒロインとなるギリシャ人の娘役はスペイン人のペパロニ・クルツが演じています。ギリシャ人などはその他大勢のエキストラにしか登場しません。

・・・・・・

そして出演者が話すのは、ギリシャ人役も、イタリア人役も、ドイツ人役も、皆さん英語です。但し、カンツォーネを歌う時と、女の子をナンパする時にかける声だけはイタリア語です。 ギリシャ語の台詞は一切登場しません。 これはギリシャ語がヨーロッパの中でも異質の言語であり、他の国の人にはさっぱり理解できないからかも知れません。

・・・・・・

そんないい加減な・・・とは思いますが、先日、取り上げた「カサブランカ」では、フランス人もドイツ人もなぜか英語を話し、賭場のディーラーの掛け声と「ラ・マルセイエーズ」の歌詞だけがフランス語でした。

・・・・・・

それはともかく、この映画も悪人がほとんど登場しない映画です。あえて言えば、ドイツ軍のトップが悪者ですが、コレリ大尉を射殺するのをためらったドイツ軍大尉は、善人です。そして善人ばかりでも、悲劇は発生します。それは戦争だからです。

・・・・・・

戦闘シーンは、後半で登場しますが、戦争の勇ましさを訴える訳でもなく、戦争の悲惨さを特に訴える訳でもありません。それでもぜんぜん軍人らしくない大尉を主人公に据えて、要所要所の台詞や、ダンスや音楽をひたすら好む主人公の行動を通じて、厭戦というか非戦の姿勢を明らかにしています。

・・・・・・

オヒョウは、露骨な反戦映画も下品で嫌いだし、甘ったるい恋愛映画も苦手ですが、軟派なイタリア人将校を主人公にして、反戦を隠喩で語るこの作品を気に入りました。

「なるほどイタリア軍というのは弱かったのだろうな」と思う反面、「イタリア人ってのは、とても素敵な連中じゃないか」と納得します。

・・・・・・

コレリ大尉は、友達になったドイツ軍大尉から、軍人としての信条を尋ねられ、「僕は殴られている人を見れば、その人を兄弟に思う」と答えています。 全く軍人らしくありません。そしてこれは、村上春樹が、エルサレム賞の授賞式で語った言葉

「高くて、固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵側に立つ」によく似ています。どこかにオリジナルがあって、それを引用しているのでしょうか・・?

・・・・・・

この軟弱な将校役はニコラス・ケイジがまさにぴったりでハマリ役です。オヒョウはこの作品で初めて彼を評価しました。

・・・・・・

ところで、第二次大戦を描いた映画の場合、時代考証が重要です。当時を知る人も多くいますし、資料も豊富で、間違いがあるとすぐ判るからです。最近の日本映画は時代考証が杜撰で、台詞や話し方が今風だったり、登場する兵器がでたらめだったり、日本兵が皆長髪だったりするのですが、オヒョウなどはそれだけで興をそがれます。

・・・・・・

コレリ大尉のマンドリンの場合はどうか?この作品はかなり正確だろうと思います(台詞の方は分かりませんが)。ただ一つだけ挙げれば、ヒロインの父親の医師が「ペニシリンも無いのにどうしろというのだ」と嘆く場面がありますが、これは嘘でしょう。ペニシリンが実用化されたのは1940年代で、映画の中でこの台詞が登場する1939年より後です。

・・・・・・

しかし、それは些末な事です。むしろ、ギリシャの離島に残るダンス(クレタ島の踊りに似ています)や蝉の声にギリシャらしさを感じ「この映画は史実に忠実だ」と、オヒョウを納得させます。

・・・・・・

アルプスの北側にはいない蝉ですが、夏のギリシャではやかましい程、蝉が鳴いています。英国でギリシャを舞台にした映画を制作する場合、しばしば蝉の声を入れるのを忘れるのですが、この映画にはしっかり収録されています。 この映画はいい映画だとオヒョウは思います。


nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。