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【 義の無き戦争 】 [中国]

【 義の無き戦争 】 

上越の英雄、上杉謙信のモットーは「義の戦い」だったそうです。直江兼続の方は「愛」だったそうですが・・・。

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集団で行う人殺しの事を戦争というのですから、義のある戦争などあるのか?と思いますが、歴史を見ると、逆に義の無い戦争の方がありません。 どの国も、戦争を始める時には、それなりの理由をこじつけて正義の戦い・・という事にします。 戦争が終わってから、勝った方が負けた方を断罪して、自分たちは正義だ・・という事にしますから、戦争を始めた方が負けた場合のみ、不正義の戦争となります。

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そうはいっても、恥知らずな戦争と、そうではない戦争というのを区別する事はできます。破廉恥な戦争とは、下記の条件に該当する場合です。

1.開戦の動機が邪悪である。

2.戦力や武器の性能に大差があり、一方的な戦いになる場合。

3.非人道的な兵器を多用する場合。

4.捕虜の虐待や占領地の蛮行がある場合。

5.戦後処理において、過大な負担を敗戦国に求める場合。

あれ? 考えてみれば、全ての戦争はやはり破廉恥じゃないか。

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そこで、歴史上の三大破廉恥戦争というのを選んでみました。いつも、三大ナントカというのは、一体誰が勝手に決めたんだ?と疑問を呈しているのですが、今回は、母と私で選びました。

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第一に、オヒョウが選ぶのは、アヘン戦争です。中国から大量のお茶や絹を買うものの、そのバーターとして、中国に売る品物が無かった英国は、植民地であったインドで生産した阿片を、無理やり中国に押し付けた訳で、それに中国が反発してそれを焼き払ったら、それを口実に攻め込む・・・なんて、全くひどい話です。現代なら場末のヤクザだって顔を赤らめ、そんな恥知らずな行為はしません。

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しかし、当事者である両国では、この戦争の評価は異なります。ロンドン郊外の大学町 ケンブリッジにある一番大きな中華料理店はその名もOpiumでした。洒落でつけたのかも知れませんが、英国人は阿片や阿片戦争に対して、あまり罪悪感を持っていないのかも。英国人向けにアレンジされて美味しくもない、その店では、英国を代表するインテリ(らしき人々)が食事していました。

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一方、中国の人は阿片戦争をどう思うか?例によって、中国語の先生に訊いてみた事があります。彼女の意見では、中国人にとって阿片戦争は屈辱ではありますが、英国に対する反発や被害者意識はないみたいです。

これはなぜか? その理由は3つあります。

1.英国が最終的に第二次大戦の戦勝国であり、中国が一度も戦争で買ったことがないから。

2.阿片戦争で負けたのは清であり、中華人民共和国でない事。しかも150年も昔の事である事。

3.中国人にとって、白人に戦争で負けるのは仕方ない・・という意識があって、日本による侵略ほどの屈辱感が無い事。

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むしろ、夜郎自大的になっていた中国を覚醒させてくれた点で、感謝すべき点もある・・という具合で、自分の国が敗北した戦争という意識は薄いようです。 また戦争の結果、奪われた香港の返還も、中国人にはあまり感慨をもたらさなかったようです。日本の北方領土や竹島問題とは大違いです。

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10年前になりますが、150年の租借の後に、香港が返還された時、中国では「阿片戦争」という映画が制作されましたが、ヒットしなかった様です。 それに対して英国では、反発しました。

「平和的に香港を返還しようというのに、反英的な映画を上映するとは何事か?香港のように植民地の方が本国よりも経済成長した例など他にあるか?中国は感謝すべきだ」。

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年間の一人当たりの労働時間が1600時間以内の英国と2000時間以上の香港では、香港の方が景気が良くて当然・・という気もしますが、これに対しても中国は反発していません。国策として、中国が非難する対象は、英国ではなく、日本、米国、インドなどに限定しようという考えがあるのかも知れません。

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鎖国中だった日本にも強い衝撃を与えた、不義の戦争である阿片戦争ですが、160年後の今日、中国の人々は案外、気にしていないのです。日中戦争とはえらい違いです。

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では、破廉恥な戦争の第二位と言えば、これは第二次ボーア戦争です。もともとオランダ人が移民して暮らしていた土地(オランダ人とて、現地人から見れば侵略者)を英国人が奪う訳ですが、金とダイヤモンドが発見されたから、奪うというのは仁義にもとります。しかも軍の装備は段違いで、ボーア人(オランダ系移民)は近代的な武器なしで、ゲリラ戦を強いられました。恥ずべき捕虜への虐待もあったそうです。

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今、オランダは60年以上前のインドネシアでの日本軍の残虐行為を厳しく非難していますが、100年前のボーア戦争について、英国を非難しているのでしょうか?

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そして破廉恥な戦争の第三位は、第二次大戦初頭のイタリアによるエチオピア侵攻だ・・とオヒョウの母は言います。当時、日独伊の三国同盟があっても、日本にはエチオピアに同情する声が高かったそうです。 

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侵攻の動機がまたひどいです。遅れてきた帝国主義者であるファシストが、自分達にも植民地をよこせ・・・というメチャクチャな理由でアフリカに侵攻し、日本の皇室を超える3000年の伝統と格式があったハイレセラシエ皇帝を追放して植民地化したのです。言うまでもなく近代兵器を装備したイタリア軍に対して、エチオピア帝国軍は弱体でした。

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第二次大戦集結後も、イタリアが占領した国は混乱が続いています。エチオピア、スーダン、ソマリアですが、左翼ゲリラが占拠した後、無政府状態になり、治安維持ができない国もあります。今問題になっているインド洋の海賊だって、もともとはイタリアのアフリカ侵攻が原因だとオヒョウは思います。

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でも・・・、義があるかどうかではなく、人道にもとるかどうか・・で考えた場合、やはり最も恥ずべき戦争は、原子爆弾を非戦闘員が暮らす都市の上に落とした戦争でしょう。 いや全ての戦争が非人道的です。そう考えると、やはり正義の戦争などどこにも無かったのです。


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夏炉冬扇

こんばんは。
いつものご来訪ありがとうございます。
兄が海兵でしたが、戦争のことは話しません。
by 夏炉冬扇 (2009-12-21 21:54) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇さん コメントありがとうございます。
兄上は、海兵でしたか・・
私の中学時代の恩師(数学の先生)も海軍兵学校でしたし、
私が就職した会社の製鉄所の副所長のひとりも海軍兵学校でした。
それから私の遠い親戚にも海軍兵学校に行った人がいます。
小津安二郎の「さんまの味」では、笠智衆が演じる、娘を嫁がせる主人公が
海軍兵学校卒でしたね。
こんど、そのあたりの話題も、雑文に書いてみようか・・と思っております。

by 笑うオヒョウ (2009-12-22 09:57) 

白熊パパ

笑うオヒョウさんに嫌われるかもしれませんが、
日中戦争は侵略ではないと理解してます。
by 白熊パパ (2009-12-24 01:00) 

笑うオヒョウ

白熊パパさん コメントありがとうございます。
一連の日中戦争が、日本の侵略戦争であったかどうかは、議論のあるところだと思います。
個々の戦争を観た場合、例えば、済南事件や通州事件などで日本人が襲われたのに対して、邦人保護の目的で軍隊を派遣した行為などは正当防衛と言え、日本軍の正当性を主張できます。義和団の事件以来、中国にいる外国人の生命財産を守る為に軍隊を派遣する事は、
各国が了解していましたから。しかし、日中戦争の全てに於いて、日本を守るための戦争であったとするのは、やはり無理があると、オヒョウは考えます。中国で交戦しなければ、朝鮮・台湾・満州を含む日本が危険にさらされるとは言い難いからです。
むしろ、日本が加害者である事を認めた上で、中国側が被害を過大評価している点、あるいはその後の、共産党八路軍と国民党の戦争や文化大革命時の被害と日中戦争の被害を混同している点を、ただすというのが、適切ではないか?とオヒョウは考えます。
またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2009-12-24 11:44) 

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