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【 カサブランカの法則 】 [映画]

【 カサブランカの法則 】

 アメリカでアンケートをとると、今でも最高の恋愛映画に「カサブランカ」が第一位に選ばれるそうです。制作されてから70年近く経つというのにです。 実は、オヒョウはある目的で、この映画を文字通りビデオテープが擦り切れる程、繰り返し観た事があります。DVDではなく、ビデオテープの時代です。 その結果、恋愛映画の法則とでもいうべき、幾つかの項目に気づきました。 カサブランカだけでなく、同時期の他の映画にも通用する法則です。

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1.主人公は、実に格好良い男ですが、なぜかヒロインには、振られてしまいます。 ヒロインの方は、2枚目だけれど、どこか頼りない男性の方に惹かれてしまいます。「色男金と力がなかりけり」を絵に描いたような男性がヒロインをものにするのです。

 2.主人公は失恋しますが、代わりに得難い友情を手に入れます。

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観客の男性は、皆主人公のハンフリーボガードに感情移入します。「そうさ、僕も失恋したけれど、格好悪くて失恋した訳じゃないんだ。あんなに格好いいボガードだって恋人をものにできない。僕と同じだ 」実際には、自分とボガートは全く違うのですが、その部分の思考は欠落します。

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これはカサブランカだけでなく、幾つかの映画のストーリーに共通します。「風と共に去りぬ」でも、ヒロインのスカーレット・オハラは、一番格好いいレット・バトラーではなく、「金と力がなかりけり」のアシュレー・ウィルクスを思っています。不思議なことに、美しい女性に振り向いてもらえない方がスマートに見えるのです。

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確かに、人がうらやむ美男美女が、相思相愛となって、ハッピーエンドではストーリー展開としては、全く平板になってしまいます。

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しかし「カサブランカ」にせよ、「風と共に去りぬ」にせよ、女性の側から見ると、これはちょっと違うようです。イングリット・バーグマン演じる、ヒロインは2人の男性を天秤にかけて弄ぶ、虫のいい、自分勝手な女性となりますし、ビビアン・リーが演じるスカーレットは、力の無いアシュレーに憧れる愚かな女性に見えるとの事です。

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ヒットする恋愛映画とは、男性から見て不可解なヒロイン、一方女性から見て愚かなヒロインが登場するものなのでしょうか?

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ところで「カサブランカ」は日本のストーリーに翻案され、映画になっています。ご存知 石原裕次郎の「夜霧よ今夜もありがとう」ですが、全く不自然な設定と無理なストーリーで、名作とは言い難い作品になっています。少なくとも、米国のオリジナルと比較する事はとてもできません。但し、裕次郎が歌う「夜霧よ今夜もありがとう」は名曲ですが。

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ところで、私が「カサブランカ」を何度も何度も観たのは、映画に惚れ込んだからからではありません。ある時期英会話の聞き取り能力を少しでもあげたくなって、洋画の台詞の聞き取りに挑戦したのです。字幕スーパーの日本語の台詞から、元の英語の言葉を推理し、耳に入った内容との符合を確認するという作業を続けました。

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今ならDVDですから、英語の字幕も、日本語の吹き替えも自由に選べますし、巻き戻しの手間もないし、スロー再生も簡単だし、作業ははかどるはずですが、当時はビデオテープでした。

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その結果、どうなったかと言いますと、英語の力はぜんぜん向上しませんでした。今でも「This is a pen.」に毛の生えたぐらいのレベルです。しかし、意外な効果がありました。

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「カサブランカ」については、主だった台詞をほとんど暗記した訳ですが、それが、アメリカのマスコミに頻繁に登場する事を発見したのです。 実は米国の新聞や雑誌の見出しや、挿絵の噴出しには、有名な言葉がそのまま引用されたり、ちょっともじって使われていたりします。それを理解する人には、その洒落が面白い訳です。理解しない人には、何の事か分かりませんが、それはそれで不自由はありません。

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例えば、ある犯罪捜査がおざなりだと、雑誌記事が指摘する場合は、挿絵にRound up the usual suspects. と話す警官が登場します。これは、ご存知の方も多いでしょうが、警察署長ルノーが、ドイツ側につくか、主人公リックの味方につくか・・・という切羽詰った場面で、リックの味方につくことを明らかにした台詞で、このおかげでリックは助かり、二人の間の友情を確認する形になります。

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無論、雑誌の記事や見出しに引用される名台詞は「カサブランカ」だけではありませんが、オヒョウの知るところ「カサブランカ」が一番頻度が高いと思われます。アメリカ人が大好きな映画の名台詞を覚える事は悪い事ではありません。

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しかし、オヒョウは次に、変な事を考えました。英語の聞き取り能力の勉強に映画を使ったけれど、中国語の勉強にも使えるな・・・と。中国で暮らし始めて、オヒョウは中国で売られている「カサブランカ」のDVDを購入しました。他の映画でもいいのですが、台詞を暗記しているので、便利かな?と思った訳です。

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中国バージョンの題名は、発音に基づいた「卡薩布蘭卡」と、映画の意味から名付けた「北非諜影」の2種類がありますが、内容は全く同じです。しかし、この試みは全く失敗でした。ハンフリー・ボガードやイングリット・バーグマンがしゃべる中国語が不自然で可笑しくて、笑い転げてしまいます。すぐに挫折しました。

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代わりに、中国映画「老鼠愛上猫」という劉徳華(アンディ・ロー)主演の映画を繰り返し観ましたが、効果はさっぱりです。発音は広東なまりの北京語で、字幕は北京語ですが、スピードが早くて、オヒョウにはついていけません。 初心者には無理な試みでした。だから私の中国語は「此是筆」のレベルを超えません。

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その後、勤務先の中国人女性が、私も英語を勉強したい・・と言い出したので、中国語版カサブランカ「北非諜影」を上げました。その後、彼女の英語力が向上したかどうかは分かりません。


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コメント 4

はっこう

はっこうです。
「カサブランカ」も「風と共に去りぬ」も観ましたね。
イングリッドバーグマンの大ファンでもあります。
ちなみに
「君の瞳に乾杯!」
とは言ってませんね(笑
字幕も危ういですね(^^)
by はっこう (2009-12-11 18:05) 

夏炉冬扇

今晩は。
ゆったりとした、いい文章ですね。心が和みました。
映画は久しく見ません。本も読まないし、脳が軟化してしまいます…
by 夏炉冬扇 (2009-12-11 21:13) 

笑うオヒョウ

はっこう先生、コメントをありがとうございます。私もバーグマンのファンです。
ご指摘の「君の瞳に乾杯!」の元のセリフ Here's looking at you kid!をどう訳すかは、いつも議論の対象になりますね。ネットで調べてみたら、諸説紛々でした。Here'sを「ここにいるよ」ではなく、乾杯の時の声だとする説もありました。 そこで気づいたのですが、中国語でこのセリフをどう訳したか・・たしか感心した記憶があるのですが、肝心のセリフを忘れました。
その他、ご指摘のとおり、字幕スーパーでは、会話の内容が大幅に省略されていたり、思いっきり意訳になって正確でなかったりします。多分、文字量や会話の速度が異なるために、日本語ではそうとう省略せざるをえないのかと思います。その省略の癖に、翻訳者の個性が現れる様に思います。 個人的に好きなのは戸田奈津子氏や額田やえ子氏の字幕スーパーです。 それらについては、また書こうかな・・と思っております。
またコメントをお願いします。

by 笑うオヒョウ (2009-12-12 01:25) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇さん、コメントありがとうございます。
かくいう私も、最近はずっと映画館に足を運んでおりません。
映画の論評はもっぱら、レンタルビデオ店で借りたDVDを見たものだったり、古い映画館の記憶を思い出したものだったりします。
なぜなら、オヒョウの暮らす北陸の小都市には、映画館が、数件しかなく、
まともな映画がかかっていないからです。 それに加えて単身生活が長く、夜の退屈を紛らわすのに、DVDを見るか、このブログを書くという日々を送っているからです。 時々は飲みにでかけたりもしますが・・。
またこれからもコメントをお願いします。
by 笑うオヒョウ (2009-12-12 01:31) 

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