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【 甘味の研究 その2 】 [雑学]

【 甘味の研究 その2 】

かつて人々は甘味を欲しがり、そして砂糖は貴重品であり、戦略物資でした。 しかし、20世紀の後半、砂糖の供給は過剰になりました。

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米国を睨む位置にある、共産主義国キューバの特産品は、農産物ばかりで、特に砂糖と葉巻とラム酒が有名です。ソ連(当時)は貧しいキューバをなんとか支援しようと、大量の砂糖を買い付けていましたが、実は、自国内でも大量のてんさい(砂糖だいこん)を生産しており、国内で砂糖はだぶついていたのです。おそらく、ソ連は国内で消費しきれない砂糖を共産主義の衛星国に分配していたのではないか・・?とオヒョウは思います。 20世紀後半、生活物資が不足しがちで、一様に不自由だったと言われる共産圏で、甘味の不足についての話は聞かなかったからです。

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一方、キューバ産の砂糖をソ連が大量に買い付ける事で、西側の自由経済圏の砂糖相場も暴落せずに高値で推移しました。熱帯のサトウキビ畑は典型的なプランテーション農業で、就労者はしばしば貧しく、労働は過酷だった訳で、砂糖価格が暴落すれば、彼等の生活にもしわ寄せが行った可能性があります。

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ソ連が崩壊し、キューバを支えきれなくなった時、オヒョウはまず砂糖相場が暴落するかな?と思いましたが、そうはなりませんでした。その前から、西側先進国では砂糖離れが進んでいたのです。人工甘味料(合成甘味料)と異性化糖の影響が強くなっていたからです。特に天然の産物から作られ、砂糖より安価で甘味の強い、異性化糖の出現が砂糖の需給を緩め、価格を下げたのです。

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人工甘味料の歴史は、開発と規制・使用禁止の繰り返しです。当初サッカリンは、あくまで砂糖が入手できない場合の安価な代用品として開発されましたが、ほとんど体内に吸収されない事から、今ではダイエット甘味料または糖尿病患者用食品として重宝されています。

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しかし一方で、発ガン性などの健康への影響については、必ずしも真っ白とは言えません。

・サッカリンは、一度禁止され、復活しました。

・ズルチンは禁止されたままです。

・シュガロン、チクロも禁止されました。

・アスパルテームは禁止されていません。

新世代の人工甘味料である、アスパルテームはまだ、人体への悪影響が発見されていません。 でも将来はどうなるか分かりません。

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サッカリンについては、米国の食料安全局の局長がどうしても認可しないので、就任直後のレーガン大統領が、この局長を解雇してサッカリンを認めさせた・・・というエピソードがあります。たかが甘味料の許認可で、大統領が権力を行使するなど不思議ですが、もし、米国でサッカリンを認めなければ・・・大変な事になったかも知れません。甘い炭酸飲料が大好きな米国民が、砂糖や、もっと安価だけれど血糖値を上げる異性化糖を大量摂取すれば、米国民の肥満度は、もっと増し、生活習慣病の患者は増大します。

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飛行機のエコノミークラスは、座席寸法を見直し、旅客機の定員は減り、警察官は泥棒を追えなくなり、ボクシングは重量級だけになります。相撲が米国の国技になるかも知れません。国民の肥満が原因で、米国の医療費は増大するでしょうし、軍隊は弱体化するでしょうし、超大国の位置を滑り落ちる事になります。人工甘味料がなければ、米国は没落したかも知れず、サッカリンはアメリカを、ある意味で救ったのです。

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まあ、笑うオヒョウは何時も少し大袈裟ですが、砂糖の問題は決して小さな問題ではありません。

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異性化糖の種類と消費量は、これからますます増えるでしょうが、メーカーからの情報が足りません。 TVのCMを見ると、トレハロースとかパラチノースとか、キシリトール、ステビア・・・といった名前が多数、登場しますが、何が何だか分かりません。虫歯にならないから、どれだけ食べても大丈夫だと思ったら、ちゃっかりカロリーは吸収され、肥満になったとか、糖尿病になった・・なんて事も予想されます。それぞれの糖についての消費者への説明が必要です。

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これから、砂糖の将来がどうなるのか、オヒョウには見当もつきません。でも、流れの方向は、下記の四点でしょう。

1.人工甘味料(合成甘味料)は、健康への影響懸念から、次第に廃れるでしょう。 人々はカロリー摂取コントロールを人工甘味料以外の方法で行う事になります。

2.異性化糖は、前述の通りますます増えるでしょう。実は、異性化糖の種類は、国によって異なります。キシリトールを好む国やトレハロースを好む国があるのです。 どの国で発明/開発されたかが関係するのですが、やがて、お菓子を分析すれば、フランスのお菓子だ・・とか、ベルギーのチョコレートだとか・・・識別できる時代が来るかも知れません。

3.砂糖の消費は減っていくでしょうが、アルコールに変換してバイオ燃料にする分は今後も増加するでしょう。(ラム酒として飲んでもいいのですが)。 勿論、和三盆やメープルシロップの様な特殊な砂糖は高価格を維持して、一定量の生産が続くでしょう。そして、農産物のグローバル化の観点で砂糖原料を見た場合、甜菜とサトウキビのどちらか生き残り、一方は淘汰されるかもしれません。

4.経済封鎖の効き目を判断する材料として、国民が甘味に飢えているか否かは、引き続き重要なポイントでしょう。 例えば北朝鮮の子供達は、ふんだんに甘いお菓子を食べているか・・・は経済制裁の効果の判断材料になります。

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誰かの時事川柳にありましたが・・・・

「北朝鮮、ジョンイルだけが 糖尿病」

というのが実態かも知れません。 

世界中の人々が、甘いものを好きなだけ食べて、かつ健康に暮らせる時代は21世紀の現在でも実現していません。


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夏炉冬扇

今晩は。
サッカリンなつかしく。
それにして内容深い文章です。思うに、随筆集お書きになれます。

時雨れております。冬当たり前のことですが、昨今は…
by 夏炉冬扇 (2009-11-17 20:40) 

笑うオヒョウ

はっこう先生 niceをありがとうございます。近々、はっこう先生のブログにもおじゃまさせて頂きます。

by 笑うオヒョウ (2009-11-18 05:32) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇さん、コメントありがとうございます。
私は、とても随筆などという立派なものは書けません。
ただ、散文系か韻文系か・・と尋ねられたら、散文系の文章を主に書きます・・と答える事にしています(誰も尋ねませんが)。

更に正確に言えば、野坂昭如が言うところの「雑文」という表現が
笑うオヒョウには、最も適していると、思っております。
by 笑うオヒョウ (2009-11-18 05:35) 

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