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【 産業を嫌う行政 その2 】 [アメリカ]

【 産業を嫌う行政 その2 】 

20年近く前ですが、カリフォルニア州ロングビーチにある、スリッター屋さんに出かけた時です。 スリッター屋とは冷延鋼板の広幅コイルを短冊状にスリットして小売りする鋼材加工業者で、その工場のユダヤ系の主人は、ありがたい事に高価な日本製鋼材を買ってくれていました。 

いつになく、ピリピリと緊張しているので、なぜか?と尋ねると、今役所の検査官(Inspector)が来て、工場が汚染物質を出していないかチェックしている・・・と言うのです。 検査官は、マンホールを開けて棒を突っ込み、油などの汚染物質が付着しないか、チェックしています。

少しでも、汚染物質が付着すれば、操業停止になります。 スリッター屋の設備から漏出するとすれば、油圧の作動油や潤滑油ぐらいですが、有機溶剤を扱う塗装業者などは、もはやカリフォルニア州では新しい工場を建設することができず、隣の州に逃げ出したよ・・との事。 

当時、日本では、カリフォルニア州の自動車排ガス規制が厳しい事が知られていましたが、工場に対する締め付けは更に厳しかったのです。 勿論、カリフォルニア州には、環境保護意識が高く公害問題を深刻に考える人が多かったからですが、それだけでもありません。

その背景には、第二次産業の汚い工場を忌避する雰囲気がありました。そして、人々には、3Kの仕事や製造業を軽蔑する風潮もありました。 

重厚長大型の産業が主体の五大湖地域、エネルギー産業が盛んなメキシコ湾岸地域と異なり、西海岸ではハイテク産業やIT産業が盛んでした。製造業といっても、シリコンバレーのコンピューターや情報通信産業はスマートで、あまり汚くありません。カリフォルニアの人達はそれを好んだのです。

一方で、古典的で、汚れる製造業の工場は嫌われました。 米国の第二次産業全体が衰退していった、80年代~90年代にかけて、IT産業や航空機産業は好調で、相対的に、シリコンバレーを抱えるカリフォルニア州や南部のサンベルト地帯の経済は良好でした。彼等の選択は正しかったのか?

21世紀に入り、米国はますますものづくりを離れています。学校を卒業した人は、第三次産業か、第四次産業に就職し、第二次産業には優秀な人が廻ってきません。 

その結果が・・・昨年来の経済危機です。 今、米国には、日本で言えば財政再建団体にあたる、破産に瀕している州が4~5、あるそうです。 ニューヨーク州、ニューヨーク市に隣接するニュージャージー州、シカゴのあるイリノイ州、ロサンゼルスのあるカリフォルニア州、フロリダ州・・という具合で、大都市を持ち、第三次産業や第四次産業が盛んな州ばかりです。 とりわけ、財政が厳しいカリフォルニア州では、小切手でもない、ただの借金の証文を濫発して、資金不足に対応しているというから驚きです。

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オヒョウは、これは製造業を軽蔑し、価値を生産する工場を、汚いからという理由で締め出した報いではないか・・?と思います。 そして、その傾向は今も続いています。

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カリフォルニア州唯一の自動車工場 NUMMIが閉鎖されれば、同州にとって、雇用の喪失と税収の減少など、大きな痛手になりますが、今のところ州政府が、NUMMI閉鎖に関してコメントしたりアクションをしたという話を聞きません。 オヒョウがシュワルツェネッガー知事なら、菓子折とカリフォルニアワインでもぶら下げて、トヨタ本社を訪れて、NUMMI閉鎖の再考を促すのですが、彼はそういう事をしないようです。

お土産を用意する予算が無いなら、シュワルツェネッガー知事がトヨタのCMに無料で出演するから、何とかしてくれ・・・とでも頼みます。 日本じゃ県知事が県産品の広告宣伝に登場するのは当たり前なのですから・・・。 何もしないシュワルツェネッガー知事は、このままではカリフォルニア州の第二次産業の息の根を止めるターミネーターになってしまうかも知れません。 

日本の民主党政権も、製造業いじめとも言える無茶なCO2排出量削減目標を掲げ、一方で景気刺激策を打ち出せなければ、同じ事です。 かつて鉄鋼メーカーの製鉄所だけは、海外に逃げ出せない・・・と言われましたが、政府の方針次第では、高炉も外国に逃げ出すかも知れません。 

ターミネーターの様に” I’ll be back”とは言わずにね。


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