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【 Kyoto ProtocolとCopenhagen Consensus その2 】 [中国]

【 Kyoto ProtocolとCopenhagen Consensus その2 】

21世紀になってから、中国は原子力発電を急拡大しています。
といっても、原子力先進国であるフランスや日本に比べるとその比率は低いのですが、これから増加します。

具体的には、2002年では、中国の商業用の原子力発電に用いる原子炉はわずか11基で、発電能力は907万8000Kwしかなく、総発電量に占める比率は1.9%だったのが、2020年時点の予想は、設備能力4000万Kwで設備能力としては総発電設備の5%、発電量では全体の8%になる上、更に、1800万Kw分が建設中になる見込みです。

この2020年の予測は、昨年変更され、全発電に占める原子力の比率は1%引き上げられています。
中国は対外的にはCO2排出量削減枠の設定に反対していますが、
国内ではちゃくちゃくとその準備をしているのです。

では、どうしてそれが可能か・・・と言えば、西側の原子力発電プラントメーカーとの契約で打開策が見つかったからです。具体的には東芝/ウェスチングハウスの新型原子炉(加圧水型軽水炉)を購入する際の知的財産の扱いで一つの方法が確立したからです。
ポイントは3点です。
1.中国は、自国内で同型原子炉を建設する分には、
 東芝/ウェスチングハウスに縛られずに建設可能(つまりコピー可)。
2.但し、同型の原子炉を中国は外国に輸出してはいけない。
3.中国独自の改良を加えて、出力を現在の型以上に大きくした場合は、
 中国独自の技術として輸出を認める。

中国にプラントを売りたい東芝が、かなり譲歩した条件と思われますが、これはある意味で画期的です。 日本から中国へは原子力以外でも数多くのプラント技術の輸出が検討されており、これが一つのモデルケースになるかも知れないからです。 ハイテク機器だけではありません。製鉄プラント、化学プラント、高速鉄道技術等、あらゆる分野で、中国の知的財産軽視懸念で、ためらわれていた案件が進む可能性があります。

でも、手放しでは喜べません。その理由は下記の2点です。

1.先端技術は、単にプラントメーカーや設計技術を持つ会社だけの
  ものではありません。幅広い分野が関係しており、特に素材産業の
  基盤の有無は問題です。
  加圧水型軽水炉の場合、燃料棒はジルカロイの管で被覆
  されますが、この管を中国は果たして高品質で安定生産できるのか?
  当たり前ですが、耐熱性が必要で、強酸に対しても耐食性があり、
  強い放射線を浴びても大丈夫な素材である必要があります。
  もし、燃料棒にトラブルがあれば・・・大変です。
  制御棒でも加圧水型では、銀、インジウム、カドミウムの合金が
  用いられますが、誰でもどこでも製造可能なものではありません。

  高速鉄道だって、中国は国産化に拘りますが、車輪、レールに
  使用する高品質の鋼材を本当に確保できるのか・・?
  ちょっと心配です。

  日本の場合、原子力用途の工業製品は厳しい品質管理を行い、
  認定手続きも厳重ですが、これも中国の風土にはあまり
  馴染まないものです。

  東芝の新型加圧水炉の場合、最初の1基、2基は東芝の監視の
  目が届きますが、やがてそのコピーを何十基も中国が国産で
  建設しだした時、果たして品質管理は大丈夫か?
  誰が担保するのか?
  なんちゃってジルカロイの燃料棒やなんちゃってハフニウムの
  制御棒が使われるのではないか・・とオヒョウは心配します。

2.もう一つの問題はオペレーターの問題、または操業システムの
  問題です。
  加圧水型は、原子炉の構造が複雑でメンテナンスが難しいと
  されています。 もし地震が発生した場合に的確に対処できるのか
  心配です。
  また加圧水型は沸騰水型と違って、一次冷却水が沸騰したり
  水量が減った時に、自動的に出力低下する安定性がありません。
  非常時に、対処を誤ると、まさにチャイナシンドロームが
  発生してしまいます。

つまり、中国の原子力発電所の一斉建設には、心配すべき点が
幾つかあります。

米国のスリーマイル島の原発(加圧水型)が炉心溶融の事故を起こした時、反原発運動家は、こぞって日本と米国の原発反対を唱えましたが、より危険で深刻なチェルノブイリ型原発の事故が発生した時は沈黙しました。 
中越沖地震で柏崎・刈羽原発は、深刻な被害を受けた訳ではありませんが、それでも反原発運動家は再稼働に反対しています。
しかし彼らは、これから中国で多くの加圧水型原発が建設される事については、全く反対しません。
(ちなみに、柏崎刈羽原発は沸騰水型です)。
技術的、科学的理由で原発に反対するのではなく、イデオロギーや政治的理由で原発に賛成したり反対する人々の存在こそ困った問題であり、解決すべき”チャイナシンドローム”であるとオヒョウは考えます。

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