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【 Kyoto ProtocolとCopenhagen Consensus その1 】 [中国]

【 Kyoto ProtocolとCopenhagen Consensus その1 】

20世紀以降の主要国際会議をみると、成果があったものと、全く空回りしただけに終わったものの2種類がある事に気付きます。
「会議は踊る、されど進まず」と言われたパリ講和会議は後者の代表ですが、1997年の地球温暖化防止京都会議(COP3)もひどいものでした。
地球温暖化防止の為のCO2排出量の削減目標を定めた京都議定書(Kyoto Protocol)は、最初から達成困難でしかも極めて不平等な内容でした。 その内容を見ると、中国は削減義務を負いませんし、日本は徒に高い目標を設定されています。 そして米国は批准しなかったので、CO2排出量削減の取り組みが破綻する事は最初から明白でした。
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でも多分、今年のコペンハーゲンの会議は違うでしょう。
米国の大統領は乗り気ですし、中国もここまで経済が肥大化して影響力が大きくなると、逃げる事はできないでしょう。
ここでは特に中国に注目します。
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コペンハーゲンでのCOP15では、中国は最後まで、削減義務を負う事や目標を科せられる事に反発し、合意を渋るものと思います。
おそらく、開発途上国の代表という立場を最大限強調して、中国一国の
立場ではなく、途上国を代表して反対する・・・と言うでしょう。
そして最後の土壇場で、多くの対価とひきかえに、しぶしぶ削減目標を受け容れる事になるでしょう。 中国の代表にとっては、いかに高く売りつけられるかが、腕の見せ所です。
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でも実際には、中国のCO2排出量削減計画は、ちゃくちゃくと進んでおり、コペンハーゲンの会議時点では、相当高い削減目標を提案できる立場にあります。

中国の計画とは・・・即ち、原子力発電です。
日本では「脱化石燃料」といえば、即、再生可能エネルギーの活用を考え、太陽電池だの風力発電だのバイオ燃料を考えますが、中国の場合は
まず原子力発電です。
中国には日本の様な原発アレルギーはありませんし、住民の反対運動も弾圧できます。 そしてこれまで、中国の原子力発電は決定的に遅れていたので、これから取り組めば、CO2を削減できる余地は非常に大きいのです。

中国の電力供給には、いろいろな問題があります。
1.石炭火力が圧倒的に多い。
  ・中国国内の非常に安価な石炭を使わない手はありません。
   これが石油だったら、国際価格で調達しなければなりませんが、
   国内炭であれば、安価な上、輸入に頼らなくてもいいです。
   物価も賃金も安い中国で電力料金を抑えるには、国内炭の
   石炭火力が一番です。
  ・もし国内炭を使用しないことになれば、山西省などの零細な炭坑は
   経営危機になり、社会問題化します。
  ・しかも、産炭地から消費地までの石炭輸送は、運河でのバージ、
   輸送、鉄道輸送など、インフラができています。
  ・一方で、中国の炭坑は非常に劣悪かつ危険な環境での労働であり一種の人権問題です。
   映画「プラットホーム」では、姉の学費を稼ぐ為に、一日10元(150円程度)の賃金で炭坑で働く弟が
   登場します。
   事故も多発し、犠牲者も多い事から、中国政府は小規模炭坑の閉鎖を進めています。
   つまり時代遅れです。
  ・石炭火力は排煙脱硫装置と粉塵除去設備が不可欠ですが、
   これが全く不十分です。この問題は日本の大気汚染にも繋がりますが、
   勿論、一番被害を受けるのは中国で暮らす人であり、石炭火力の近代化または、エネルギー革命が
   必要な事は、皆さん理解しています。

2.小規模発電所が多い。
  ・文化大革命当時の発想からか、発電所は市や郡(鎮)単位で置かれ、小規模なものが多いのです。
   発電所は規模が大きいほど効率もよくなりますが、中国の場合は小さいのです。 
   日本の火力発電所では一般的な超臨界圧発電もあまり一般的ではないようです (この部分推測です)。

3.送電線網がスマートではない。
 ・発電所が小規模で、地域社会に給電するためだけであるため、
  中国全土の電線網をコンピューターで管理して、電力を融通して
  電圧変動や停電を無くすシステムが未完成です。
 ・この為、夏季の電力不足時には、停電が頻発します。

上記の通り、中国の電力事情には改善すべき点が多くあります。
では、なぜ中国は原発の導入が遅れたのか?
これは、せっかくある石炭を使う事を優先したという事情の他に
いろいろあります。

1.導入したい西側の原子力発電設備がなかなか導入できなかった。
  中国だってチェルノブイリ型は嫌ですから、西側の軽水炉(沸騰水型または加圧水型)を導入したかった
  訳です。
  しかし、それには時間がかかりました。
  中国は既に核保有国として認められていますから、安全保障上、
  原子力の技術を渡せない・・・というものではありません。

  問題は知的財産権です。中国に1基原発を建てると、あとはそれをまねして
  同じ原発を沢山建設するに決まっています。
  そうなると、原発メーカーは何らかの補償を求める事になりますが、
  中国の知的財産に関する理解は、西側のそれと大きく異なりますから、簡単ではありません。

2.ウラン燃料の確保・調達に問題があった。
  ウランの採掘と濃縮、燃料棒の製造を外国に委託するのでは
  エネルギー安全保障上、問題があります。
  石炭の場合は可能なエネルギーの国内調達が、原発化する事で
  海外調達になるというのでは確かに抵抗があります。

3.内陸の大型発電所の経験が少なかった。
  日本の原子力発電所は、全て臨海です。これは、冷却水に大量の
  海水を使用する事に加え、大型の設備の搬入や、核燃料の搬入、
  使用済み核燃料の搬出に用いる港が近い方が都合がいいからです。
  もっとも、内陸でも大きな河川の近くなら問題ありません。
  中国の場合、既に開発が進んだ沿海部の電力不足も深刻ですが、
  これから開発する内陸の電力需要の増加への対応が必要であり、
  内陸部に大型発電所を建設する必要がありました。

中国が原子力発電所を多数建設するには、上記の3項目の解決が必要でした。 その目処がつくまでは、CO2排出量削減目標についても安易に合意できなかったはずです。 しかし、最近、それらの3つの問題が一挙に解決しました。 だからCOP15に、中国は余裕をもって出席できるはずです。 その詳細については、次号で述べます。

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