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【 貪吏を疾む(にくむ)也 その1 】 [中国]

【 貪吏を疾む(にくむ)也 その1 】

 

「中国共産党の核心」いう名前の皇帝に就いた習近平国家主席をTVで見ていて思います。彼は自分を毛沢東と同格のカリスマにしたいようですが、これまでの彼の実績とは何か?あるいは、彼は何をしたがっているのか? 今回はそこを考えてみます。

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マスコミ報道によれば、彼が特に拘っているのは、人民解放軍の近代化と強化、そして官僚の腐敗の撲滅つまり綱紀粛正です。今回はその内の後者について考えます。

彼の「官僚の腐敗を撲滅する」というキャンペーンに反対する人はいません。反対の余地が無い正論です。しかし、その実現を危ぶむ人と、習近平のキャンペーンは単に政敵を潰すための口実に過ぎない・・と考える人は沢山います。

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なぜなら、中国の高級官僚で腐敗していない人はいないと思われるからです。前の首相だった温家宝は一家で8,000億円もの蓄財をして、それを海外に置いています。それは米国のマスコミによって暴露されましたが、もちろん中国では報道されません。あのパナマ文書で明らかになったタックスヘイブンに財産を置いている資産家の中には習近平その人もいます。

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どうでもいいけれど、このスキャンダルが中国で報道されないのは仕方ないとして、日本でもほとんど報道されませんね。

重慶市のトップだった薄熙来も、腐敗が理由で失脚しましたが、重慶市の共産党の書記だった頃は、黒社会のヤクザと戦い彼らを懲らしめた英雄だったそうです。ちょうど遠山の金さんか、鬼平犯科帳の長谷川平蔵のような正義の味方だったのに、叩けば埃がでました。彼を失脚させた方も腐敗しているのは同じですが、権力闘争となれば、相手の腐敗だけをヤリ玉に上げます。それはともかく彼の逮捕でがっかりした重慶市民がたくさんいることを私は知っています。

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そして高級官僚だけではありません。下位の公務員も立派に腐敗しています。

私が昆山で暮らしていた頃、外国人が住めるマンションは、1,2軒しかありませんでした。市の公安当局によって、日本人が居住していいマンションが指定されていたのです。それほど高級という訳ではありませんが、洋式のトイレ、エレベーター、インターネット、完全冷暖房で、衛星放送で海外のTVが見られる高層マンションは限られていたのも事実です。そのマンションで暮らしたのですが、私の部屋の家主は、一介の巡査でした。彼は私の部屋以外にも複数の部屋を持っていて外国人に貸していました。その家賃収入は警察官の俸給をはるかに上回っていたはずです。

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どうして彼がそんな不動産を所有できたか? それは警察官の役得があったからです。

露天商などの営業許可の発行、交通違反のもみ消し、黒社会への情報提供等、賄賂の材料はどこにでもあります。ひどい話ですが飲酒運転で死亡事故を起こしても、賄賂を警察に納めれば、翌日からまた車を運転できる社会です。

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話は脱線しますが、警官が腐敗しているのは中国だけではありません。米国ではパトロール中の警官がレストランで飲食してもお金を払わないことも多いのです。メキシコでは警官だけには道を訊いてはいけない・・と言われました。ベトナムの警官も賄賂を貰います。

英国の警官は潔癖で有名なので、ロンドンにいた頃、秘書嬢にそれを言うと、顔をしかめて、「ロンドンの警察が潔癖ですって? とんでもない!」と否定されました。

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警察が本当に信用できるのは、日本とシンガポールぐらいかな? いや日本も微妙だ。

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警察官だけではありません。電力会社の人も同じでした。今はかなり改善されましたが、華中地域で電力不足が深刻だったころ、供電局の配電係の人は接待漬けになっていました。電力不足のために突然停電になったりすると工場が止まってしまいます。なんとか我が社の工場だけは、停電対象から外してください・・・と接待と賄賂攻勢です。ロレックスを腕にはめた供電局の担当者は昆山の高級レストラン全てで接待を受け、ある高級店に案内すると、「ああ、またここですか」と言い、高級ワインを飲んでは、「やはり国産よりもフランス製ですね」とつぶやきました。

電力不足の夏が終わり、少し涼しくなると、今度は月餅を配ります。もちろん、月餅の菓子折りの下には別のものが入っていて、「来年の夏もよろしく」となります。

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一つ間違うと、贈賄で捕まるかも知れない、この仕事は中国人幹部に任されていました。もし問題が露見しても日本人に罪が及ばないようにということと、機微にふれるデリケートなやり取りは日本人には無理だったからです。

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これらが悪いことであるのは論を待ちません。しかし、ある種の汚職や賄賂で社会が円滑に回っていたのも事実です。今、綱紀粛正を求める中国社会では贈答用の高級品が全く売れなくなり、景気は悪化し、官僚は李下に冠を正すまいと何も決定しなくなったために、公共事業の停滞が問題化しているそうです。

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話をもとに戻します。中国では、腐敗した役人を貪吏と言いますが、詳しく言えば「貪官汚吏」です。貪官は、強欲でさもしい高級官僚、汚吏は腐敗し賄賂を受け取る小役人です。マンション経営に余念のない巡査などは後者かも知れません。

この上から下までの腐敗の原因は何なのか?

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直接の理由は官僚の志の低さですが、その根底には儒教文化があるのではないか?と私は考えます。 それについては次号で申し上げます。


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