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【 ファジイ制御/ファジイ推論の時代は来るか? 】 [雑学]

【 ファジイ制御/ファジイ推論の時代は来るか? 】

 

先日、ちょっと面白い記事がありました。 腕利きの戦闘機パイロットが操縦する戦闘機と人工知能(AI)が操縦する戦闘機が空中戦を行ったところ、人工知能側が圧勝したというニュースです。これは勿論シミュレーションで、実際に空を飛んで撃ち合った訳ではないのですが、もはや高度な専門性と経験が求められる仕事でも、人間はコンピューターにかなわないということでしょう。

http://www.msn.com/ja-jp/news/world/%e3%80%90%e8%bb%8d%e4%ba%8b%e3%83%af%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%83%89%e3%80%91%e3%80%9d%e3%83%88%e3%83%83%e3%83%97%e3%83%bb%e3%82%ac%e3%83%b3%e3%80%9f%e3%81%8c%ef%bd%81%ef%bd%89%e3%81%ab%e6%83%a8%e6%95%97-%e6%91%b8%e6%93%ac%e7%a9%ba%e6%88%a6%e3%81%a7%e4%b8%80%e6%96%b9%e7%9a%84%e3%81%ab%e6%92%83%e5%a2%9c-%e3%80%8c%e5%ad%90%e4%be%9b%e7%94%a8%e3%83%91%e3%82%bd%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%81%8c%e3%83%8f%e3%83%bc%e3%83%89%e3%80%8d%e3%81%ab%e4%ba%8c%e9%87%8d%e3%81%ae%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%82%af/ar-BButWJO?ocid=LENDHP#page=2

実は人が乗らない戦闘機の時代が来る・・というのは昔からある発想です。神林長平の「戦闘妖精雪風」では、人が操縦する戦闘機ではなく、人工知能を積んだ戦闘機がパイロットを乗せている・・という形で、イニシアチブを機械側が取っている場面が登場します。その戦闘機もやがて人の乗らないAIの戦闘機に置き換わっていくというストーリーです。

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現実のアメリカ軍は、このAI搭載に非常に消極的ですが、その理由はロマン溢れる仕事であるパイロットが要らなくなるのは困るから・・というものです。

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でも私がこの記事に興味を持ったのは、AIが人に置き換わる・・という点ではありません。その制御に安価で単純なファジイ制御が使われていることです。

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ファジイ制御は、奇妙な制御です。「あいまい制御」とも呼ばれますが、離散的な数値を元に制御するのではなく、0と1の間の中間値という形で連続的なあいまいさを許容する制御です。ではデジタル制御ではなくアナログ制御なのか?といえばそうでもありません。

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ファジイ制御はIBMの研究所にいたザデーという変わり者の研究者によって開発されましたが、他の制御理論の研究者の間では異端視され、まともに扱われませんでした。従来の微分方程式やラプラス変換を元にした理論とは異なったからです。

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それでもファジイが一時もてはやされたことがあります。人間が操作するシステムを機械に置き換える際、人間の思考が持つ曖昧さを表現するのに、適していると思われたからです。

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人間が乗り物を運転する際、必ずしも頭の中で微分方程式を解いている訳ではありません。 直感的に、なんとなくハンドルやブレーキを操作します。このなんとなく・・という感覚をシミュレーションするのに都合が良かったのです。エレベーターの昇降や地下鉄の自動ブレーキ等、乗り心地が重視される用途で、ファジイ制御は使われましたが、その後、あまり話題になりません。

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それは、既に運動の解析解が得られ、PID制御などで制御モデルが確立した世界では、ファジイ制御などは不要だ・・という考えからだと思います。

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しかし、安全工学の観点から見ると、ファジィ制御には優れた機能があります。

(1) 複数の制御系を並列で並べると、精度が向上する。それに安全。

例えば、秋田の竿灯祭りのように、棒を立てて、その下を指で支え、棒が倒れないように、指を水平に動かして制御するモデルがあります。このバランスをとる制御はファジイが得意とする制御ですが、制御システムを並列にして増やせば増やすほど安定します。 逆に、並列する制御システムの一つが故障しても、幾らかフラツキが大きくなるだけで、倒れたりしません。 自動制御の構成システムが一つ壊れたら制御全体が停止する従来型の制御方法に比べるとはるかに安全です。航空機の安全性の確保には好適です。

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特に、機体の姿勢に動的不安定性を伴うヘリコプターの操縦の補助に、このファジイ制御は適しているのですが、採用されたという話は聞きません。また、最近研究が盛んな自動車の自動運転にもファジイ制御は向いていると思いますが、採用されたという話は聞きません。

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(2) 他の制御システムに比べ、安価で単純である。

昔、自分で入力したファジイ制御のプログラムは、Quick BASICという言語で書かれていましたが、別にBASICである必要はありません。 この制御プログラムは、いろいろな言語で書くことができますし、CPUなどのハードウェアも、何世代も前の廉価品で対応できます。 他の自動制御システムに比べて安価に作ることができます。

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自動運転技術の開発にあたって、安全性と搭乗者の乗り心地のよさと低コストを追究する自動車メーカーには最適の制御方法だと思うのですが・・・採用されていないようです。どうやらファジイとか曖昧という言葉が嫌われているのか?

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機械や交通機関の制御技術・・という観点を離れて考えても、ファジイ推論は極めて有用です。例えば医師の診断補助です。

医学の世界の進歩は目覚しく、医学生が医師になるまでに記憶せねばならない情報量は、20年毎に1.5倍に増えているそうです。 やがて人間の頭で医学知識の全てを記憶することは無理になります。 その場合、患者を診察する際に、コンピューターのデータベースに参考情報を求めながら判断していくことになるでしょう。

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既にNHKの番組「ドクターG」でもインターネットを検索しながら診断していく研修医が登場しています。 しかし、コンピューターによる自動診察には問題があります。

これまでの人工知能は、確定した情報に基づいて結論を求めていくアルゴリズムなのですが、それでは対応できない場合があるのです。

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一般に「不定愁訴」と呼ばれる、とらえどころの無い、患者の訴えに対して現在の人工知能は無力です。 患者の顔色、表情を見て、患者は何を訴えているのか、その痛みはどういう表現で示されているのか? と言う事柄はまさしくファジイで、ファジイ推論が適した世界です。

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やがて、大学出たての新米医師を、経験を積んだ人工知能が補佐する時代が来るかも知れません。 その診断は、老練な大学教授の診断に優るということになるかも知れません。こちらの方がヘリコプターや自動車の制御よりよほど重要な問題かと思います。

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しかし、本当にファジイであいまいなのは、人の心の中です。いささか古い話ですが、薩摩焼酎「二階堂」のCMの中に、恋文を庭で燃やす少女の映像の背後に。「イエスとノー。その二つの間には、何もないのだろうか?」というフレーズが流れるものがありました。

http://www.nikaido-shuzo.co.jp/cm/2007/index.html

 一種の後悔やほろ苦さと共に過去を思い出す時、はっきりしなかった相手の答えを恨み、人のこころのあいまいさを考えます。 ああ、若い頃の私に、他人のファジイな表現を許容する論理回路があったなら、違った人生になったかも知れない・・・。そう思ったりします。

但し、念の為に申し上げれば、私はこれまで失恋した時には、いつもきっぱりと断られてきました。だから、もやもやが残ることは無かったのです。


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