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【 毒ガス論 その2 】 [広島]

【 毒ガス論 その2 】

現在、国際的に大量破壊兵器とされるA(Atomic:核兵器),BBio:生物兵器),C(Chemical:化学兵器)の使用はタブーとされ、もし使用すれば厳しい制裁を受け、場合によっては同種のA,B,C兵器で報復を受けるので、使用をためらわざるを得ません。いわゆるモラトリアムです。

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しかし、比較的に安価で容易に製造できる化学兵器(毒ガス)については、「貧者の核兵器」と呼ばれるごとく、世界中で製造され、一部は使用されています。神奈川大学の常石敬一教授は、ホームセンターで売っている肥料や農薬から毒ガスが製造できるかのように言っていますが、それは言いすぎとしても、世界中のどこでも毒ガスが製造可能で、使われているのも事実です。

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例えば、シリアの内戦ではサリンや他の毒ガス(多分、タブン)が使用されています。使用したのはシリア政府軍で、被害者は反政府系の組織やクルド人の団体です。そこまで分かっていますが、ABC兵器の使用に対するペナルティは課されていません。

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使用される前に察知していた米国は「非人道的な大量破壊兵器が使用されるなら、アメリカも覚悟がある」と牽制しましたが、背後にロシアがいるシリア政府から警告は完全に無視され、結局毒ガスが使用された後も、米国は何もできないままです。

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大量破壊兵器の拡散と使用を防ぎたい、自称「世界の警察官」こと米国は、ガセネタに基づいてイラクに侵攻し、多くの悲劇を生み出しました。しかし、シリアで実際に使用された毒ガスについては何もできず、だんまりです。

毒ガス使用に対する懲罰として米国がこれ以上にシリア内戦に介入すれば、ベトナムと同様の泥沼が予想されるからです。オバマ大統領は、禁じ手である毒ガス兵器を使ったシリア政府に対して何もしなかったのです。

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これは、一部に間違ったメッセージを発信する結果になりました。 「アメリカは大量破壊兵器が使用されても、自国が襲われない限り、何もしない・・」。

アジアにある米国の同盟国に対して大量破壊兵器を使用しても、最後のところで米国は報復攻撃に出ないかもしれない・・という期待を、特定の国に抱かせた可能性があります。

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日本のようにアメリカの核の傘の下にいる国に対して核兵器を使用しても、米国は反撃しないかも知れない・・。 最近の中国や北朝鮮の傍若無人の振る舞いの背後には、その手の発想が透けて見えます。 米国が韓国にTHAADミサイルとレーダーの配備を迫ったり、副大統領が中国に、日本は一晩で核兵器を開発保有できる能力がある・・などと語った背後にも、なめられ始めた米国の威信があるのかも知れません。

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実際のところ、原爆や毒ガスなどの大量破壊兵器は本当に非人道的で禁止すべきものなのか? これについて、被爆国の日本では、議論の余地がありませんが、外国では議論されることがあります。

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通常兵器も大量破壊兵器も、最終目標は殺人です。人を殺す事自体が絶対悪なのだから、殺す手段によって良し悪しを決める・・ことに違和感を持つ人々がいます。

彼らの主張とは「同じように人を殺すのだから、小銃で一人ずつ30万人殺すのも、原爆で一瞬に数十万人殺すのも、一緒ではないか?」という意見です。

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ちなみに中国では南京大虐殺は原爆投下以上の残虐行為とされています。(原爆は日本の非道な行いに対する懲罰だから可とするという意見もあります)。

南京大虐殺では、ほんの12日間の間に、ほぼ3箇所の処刑場で、日本刀や小銃で実に30万人(一説では、一晩で1億人)が殺されたそうです。

もっともそれについて、私が納得する証拠は皆無ですが・・・。

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今回、バングラディシュのテロでは、人質がコーランを暗唱できるかを試し、非イスラム者と分かると、銃で撃ち、更に絶命する前に、手足を切断して失血死に追い込む残虐な殺し方をしています。それに対して、例えば神経ガスのVXで一瞬に死亡させる方がまだ人道的ではないか?と言われたらどう答えるか? 確かに、この意見には、否定できない部分があります。

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毒ガスが最初に使用されたのは、第一次世界大戦で、最初は塩素ガスだったそうです。 被害者の苦しみ方、後遺症のひどさなどから非人道的な兵器として禁止された訳ですが、まるでゲームのように戦争にルールを設けるというのは、当時、かすかに残存したヨーロッパ的な騎士道精神に基づくものだと思います。しかし、気取ったところで所詮殺し合いです。人道的な殺し方が無い以上、非人道的な殺し方も無いのです。

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日本で戦後最悪のテロとされるのは、オウム真理教による地下鉄サリン事件ですが、イスラム過激派が日本に潜入した場合、それを上回るテロ事件の発生が予想されます。彼らが使用する武器・凶器がなんであるかは分かりませんが、通常の銃や爆発物の他に化学兵器(つまり毒ガス)が使用される可能性は否定できません。

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日本がすべきことは、20世紀の戦争で、大陸の人々に与えた災禍への反省や謝罪と同時に、今後の日本への理不尽な大量破壊兵器の使用に備えることです。その多くはテロの形で行われるでしょうし、それを完全に防ぐことは不可能です。

悲しいことですが、対策は、大都市では毒ガスへの解毒剤を常備するぐらいしかありません。

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それ以外の有効な対策・・とは、憂鬱なことですが、大量破壊兵器特有のモラトリアムを最大限活用することです。すなわち、もし日本や日本人を対象としてテロを行い、しかも大量破壊兵器を使用するなら、憲法を停止してでも、報復攻撃を行う・・と宣言することです。 相手がISだろうが、アルカイダであろうが、はたまた北朝鮮であろうが、犯行国が判明したなら、相手の政権や国体、あるいは民族が存続できないような報復攻撃を行うぞ・・と脅すことです。

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かなり非現実的ですし、平和国家日本の理念に反することは明らかですが、毒ガスなどの化学兵器あるいは炭疽菌などの生物兵器のテロを抑止するにはそれしかありません。 米国もフランスも、トルコも、バングラディシュも「報復を前提としたモラトリアム」に成功していません。テロリスト達をためらわせるには、文明国とは思えないほどのエゲツナイ脅かしが必要だからです。かろうじて成功しているのは、ロシアと中国です。 それはそれで問題ですが・・・・

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大久野島の毒ガス生産の記録を、20世紀の汚点として紹介する記念館は、それはそれで有意義です。しかし、毒ガスが21世紀も使用され続けている現状を考えると、どうしたら日本がその被害に遭わずに済むか・・ということを考えさせる展示でなければ不完全です。

そこまで踏み込まなければ、大久野島はただの「ウサギの島」になってしまいます。


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