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【 真のAIPを目指して その3 】 [雑学]

【 真のAIPを目指して その3 】

スターリングエンジンがあろうとなかろうと、通常動力型潜水艦の性能は蓄電池(二次電池)の容量で決まります。 そして潜水艦用の電池については性能改善の余地が多くあります。 そうりゅう型潜水艦の5番艦からは、リチウムイオン電池が搭載されていますが、今はそのリチウムイオン電池の能力向上が日進月歩で進んでいます。

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でもそれだけではありません。 大電力量保存用としては、NAS(ナトリウム硫黄)電池やレドックスフロー電池が開発され、実用化しています。ノートパソコンや携帯機器のバッテリーとしては使えませんが、潜水艦用なら使用可能です。 充放電を繰り返しても劣化が少ないし、大容量向けです。

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単位体積当たり、あるいは単位重量当たりの蓄電量を競うなら、空気金属電池の出番です。亜鉛空気電池、アルミ空気電池、マグネシウム空気電池、どれもリチウムイオン電池よりはるかに高性能です。どれも空気中の酸素を用いますが、液体酸素で十分です。 最も実用化に近いマグネシウム空気電池の場合、流れる海水を使いますが、潜水艦なら何ら問題ありません。

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電池だけではありません。 瞬発力が必要な時、大電流を取り出す必要がありますが、その場合は電池よりキャパシターが適しています。開発が進むリチウムイオンキャパシターを採用すれば、潜水艦の瞬発能力は向上します。

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そして、電池の最終形はSMESです。これは超電導状態のコイルの中に、電気エネルギーを直接蓄えるもので、究極の充電装置と言えます。 主に瞬間停電防止用や揚水発電の代替用に日本の電力会社が開発していますが、大容量のSMESが完成して、潜水艦に搭載可能になれば、理屈の上では原子力潜水艦以上の能力を発揮します。 

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いまのところ、大電流を蓄えると、磁場によるピンチ効果でコイルが内側に潰れる問題があり、コイル支持装置の強度アップが課題ですし、クエンチングと呼ばれる超電導状態の破壊現象を防止する技術も必要です。液体窒素温度で超電導が維持される高温超電導物質でコイルを作成する必要もあります。

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どうせなら、スターリングエンジンを用いた冷凍機で、液体窒素を製造し、SMESを冷却すると同時に、モーターを超電導モーターにして能力を向上させるのもいいでしょう。

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電池の技術改良の方は、最終形のSMESを含め、ほぼ実用化の域に達しています。潜水艦への応用を考える時期です。 では発電手段はどうか?原子力がダメで、酸素も燃やせないとなると、発熱と発電の手段は一つです。 つまり核種変換(核変換)です。 残念ながら、こちらは、まだSFの世界に近いレベルです。

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核種変換という名前はあまり知られていませんが、核反応によって違う元素に切り替わる現象です。古くから知られていますが、これが発熱反応としてクローズアップされたのは、常温核融合騒動です。

高名な物理学者である、フライシュマン博士とポンズ博士が、常温で核融合に成功したと発表した時、世界中が大騒動になり、多くの追実験がなされ、最終的には、常温核融合は間違いだという結論になりました。

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しかし、現在は、現象自体を否定するのではなく、それを一般的な水爆のような核融合ではなく、核種変換(核変換)として理解する考えが支持されています。重要な事は、その現象が常温の簡単な装置で起こる事と、発熱現象であることです。

濃縮ウランも不要ですし、核融合のローソン条件を満たすための、巨大がトカマク装置も不要です。 (多少は中性子も発生しますから遮蔽壁は必要です)。

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発生する熱量は微々たるもので、発電所の蒸気タービンを駆動させるには非力ですが、スターリングエンジンで小規模の発電を行うことは可能です。

これを次世代AIP潜水艦に用いれば、現在の原子力潜水艦と同じように、永遠に潜航を続けられます。重水などの燃料は海水から得ればよいのです。高速・高出力が求められる時は、予めAIPで発電・充電しておいたSMESから供給すれば、高速が出せます。 浮上すればレールガンや、レーザー砲の電源としても使えます。

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かつて、漫画には原子力潜水艦を超えた兵器として水素力潜水艦なるものが登場しました。 いやもっと以前に、ジュール・ベルヌの小説「海底2万マイル」では、潜水艦ノーチラス号の動力を訊かれたネモ艦長が、「海水から発電した電力で駆動している」と答えています。 それから100年以上経った現代、核種変換を利用したAIP潜水艦でその夢が実現されます。

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常温核融合または核種変換技術は、三菱重工が研究しています。部外者にはどの程度進展しているか分かりませんが、同社は潜水艦建造技術でも最先端を行きます。核種変換の潜水艦への応用は意外に早いかも知れません。

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昔から日本では大型潜水艦の建造が得意です。 そうりゅう型の排水量は浮上時で2900t、潜航時は4000tを超えます。 これは外国では原子力潜水艦の排水量です。

通常動力型でこれだけ大きな潜水艦が適切なのか? 私は、大型潜水艦にはそれに適した新しいエンジンが必要だと思います。 原子力だけれど、ウランを燃料としない、核種変換型原子炉を持つ、真のAIP潜水艦を建造する時期に来ていると、私は思います。


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