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【 ホンダジェットについて思うこと その2 OTWEMについて 】 [航空]

【 ホンダジェットについて思うこと その2 OTWEMについて 】

 

ホンダジェットが試作機から事業に昇格する頃、藤野氏は何本かの論文を出しています。代表的なものでいえば、2003年にJournal of Aircraft誌に出した論文です。

Wave-Drag Characteristics of an Over-the-Wing Nacelle Business-Jet

Configuration”です。

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JOURNAL OF AIRCRAFT Vol. 40, No. 6, November–December 2003

http://www.hondajet.com/Content/pdf/tech_papers/Journal_of_Aircraft_Vol40_No6_P1177_P1184_Wave_Drag_OTWEM.pdf

また、同じ論文が別の雑誌にも投稿されています。

http://arc.aiaa.org/doi/abs/10.2514/6.2003-933

部下の森川氏も論文を書かれています。

http://media.proquest.com/media/pq/classic/doc/2171924291/fmt/ai/rep/SPDF?_s=AwvEqBRAOBzTPhjWGrSVBrBxh28%3D

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余談ですが、最近、「オヒョウ君のブログにはいろいろ書かれているけれど、その内容については、真偽のほどを確認しなければ・・」という悲しいコメントをいただきました。そこで可能な限り、出典を明らかにしようと思います。論文の引用についても、複数ある場合は査読付きの雑誌に掲載されたものを引用するようにします。・・なんだかブログじゃないみたいですね。

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脱線しましたが、藤野氏は論文の中で、最も空気抵抗が少なくなるエンジンの配置を数値解析による計算と、風洞実験の両方で求めています。その結果、主翼の上で、かなり後ろの位置が一番良い・・との結論に至り、ホンダジェットの設計に採用しています。 それがOTWEMです。

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しかし、それを読むと、研究の多くは亜音速領域(マッハ0.70~)の領域で行われています。そして藤野氏が提唱する、空気抵抗係数(Cd値)を下げるOTWEMの効果が見られるのは、マッハ0.78以上。 高速になるほど効果が顕著ですから、本当にOTWEMが価値を発揮するのは超音速 時速1200Km以上の領域でしょう。

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でもね、ホンダジェットが飛ぶのは時速600700Km台(日本経済新聞によれば、400ノット 時速741kmが巡航速度ですが、平均速度はそれよりかなり遅くなります)、マッハ数でいえば、巡航速度マッハ0.6です。つまり、OTWEMは効果がありません。

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再び脱線しますが、私はこの種のコケオドシを「ランエボのリアウィング」と呼びます。製造と販売を終了した三菱自動車の高性能自動車ランサーエボリューションには、後ろのトランクの上に翼が付いていました。このリアウィングは高速走行時にダウンフォースを生じさせ、走行を安定させるためのものですが、あるTV番組に出演した設計者によれば、時速100Km程度で効果が現れ始め、時速150Kmで最も有効に機能するそうです。それに対し自動車評論家の三本氏が「すると、日本の公道では全く意味を持たないギミックですね?」と皮肉を言うと、設計者は言葉に詰まり。「まあ、サーキットを走ることもありますし・・」と言葉を濁しました。

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「ホンダジェットのOTWEM(つまりエンジンを主翼の上に乗せる方式)は、空気抵抗を減らす効果は無いのではないか?」 論文を読んでそう思った私は「笑うオヒョウ」の前の時代のブログにその事を書きました。 ほぼ同じ頃にインターネット上でも、OTWEMの空気抵抗低減効果を疑問視する発言が登場しだしました。

すると、ホンダは突然、OTWEMの空気抵抗低減と燃費向上効果を言わなくなり、代わりに、客室を広くでき、かつ騒音振動を減らせる・・という別の効果を前面に打ち出しました。併せて、藤野氏は米国でOTWEMの特許を取得しました。 なるほど。

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オヒョウのように技術開発の周辺分野にいた人間にはわかります。査読付きで審査の厳しい学会発表や論文と違い、特許の方は、いくらか緩やかな審査で受け付けられます。そしていったん、特許が成立してしまえばこちらのものです。書かれていることの真偽はあまり重要ではなくなります。 そういうと、ホンダジェットをけなしているようですが、決してそうではありません。 OTWEMは、空気抵抗の減少と燃費向上という部分を除いても、傑出したアイデアであり、おおいに宣伝すべき技術です。

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私はホンダジェットをほとんど一人で開発した藤野氏を尊敬しますし、ユニークな設計のこの機体が大好きです。 ホンダジェットは米国の航空業界のグッドデザイン賞を受賞しました。型式証明未取得の時点でグッドデザイン賞受賞は大変なことです。

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ここで日経新聞の記事に戻ります。

工藤正晃と中西豊紀という2人の記者の署名記事では、ホンダジェットはVL(ベリーライト)というカテゴリーに入り、そのライバルはエンブラエルのフェノム100とセスナサイテーションであると紹介します。そこに誤りはありませんが、ライバルはもっとたくさんいます。エクリプス、アヴォセット、サファイヤ・・詳しくは西川氏のブログをご参照願います。

http://book.geocities.jp/bnwby020/business.html

ただ、注目すべきは、それらのライバルの中には、売れ行き不振や安売りのツケで倒産してしまった会社が多くあることです。

http://book.geocities.jp/bnwby020/hondaj.html

それほど、小型ジェット機の業界は厳しいということです。藤野氏の、VLのカテゴリーで市場の1/3を取りたい・・という目標はおおむね妥当だと思います。しかし、そのためにはマーケッティング・・日本語でいえば、客は何を望むか?について研究する必要がありそうです。

 

以下 次号


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