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【 南満州鉄道とコールダーホール炉 その1 】 [イギリス]

【 南満州鉄道とコールダーホール炉 その1 】

 

いささか旧聞ですが、中国の習近平国家主席が英国を訪問し、英国の多くのインフラ整備プロジェクトを受注すると同時に出資する契約を結びました。

新聞情報ではその中には複数の原子力発電所と高速鉄道が含まれます。

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原子力発電所については、対象となる発電所も中国の出資比率も明らかにされていますが、高速鉄道の方はまだ具体的な内容が開示されていません。想像ですが、インドネシアの高速鉄道と同じように、資金も中国と民間企業が負担し、英国政府には金銭的保証を求めない・・という方法かも知れません。実は英国の鉄道は日本と同じように国鉄の民営化を進めましたが、上下分離方式(線路の所有者と、列車を運行する事業者が異なる方式)を採用しており、しかもこれからどの様に改革していくか、まだ見えていません。

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中国が高速鉄道を英国に輸出するなら、線路や車輌も列車の運行も全部中国企業にまかせろ・・ということになるかも知れません。今の時代ですから鉄道だけでなく、ホテルや観光事業も含めて中国資本になるかも知れません。でもこれは大問題です。

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国家にとって非常に重要な基幹インフラを外国資本に委ねることの恐ろしさを、おそらくは、中国は知り、そしてインドネシアと英国は知りません。

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中国東北部には、かつて南満州鉄道があり、その経営権は日本が握っていました。そして満州の開拓は、その南満州鉄道を軸にして進められたのです。満州を認めなかった中華民国ですが、手も足も出ませんでした。中心となる鉄道事業とその周辺の産業は全て日本が押さえていたからです。 政治と経済は別さ・・・と言っても、満州国の経営は南満州鉄道の経営と結びついていたのです。

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20世紀だけではありません。現代も軍事力以外にもその地域を支配する方法はあります。交通インフラや水利・水源を押えることは、その有力な手段です。

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旧満州でそれを知った中国人は、外国(特にアジアの中進国や途上国)で交通インフラを支配することを夢見ているのかも知れません。 だからインドネシア政府には資金負担させないから(代わりに経営権を中国によこせ)という条件で高速鉄道を受注したのだと思います。 気がつけば、インドネシアは中国の属国になっているかも・・。 中国の赤い舌と呼ばれる南シナ海の支配は、やがてジャワ島へも及ぶかも知れません。

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何人かの中国人は、やがて中国の国土が赤道をまたぎ南半球に及ぶ時代を待っています。 まるで20世紀前半の日本のような膨張主義です。ジョコ大統領率いるインドネシア政府がそれを知っているかは不明ですが。

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しかし東南アジアやアフリカならともかく、英国の鉄道に投資する・・というのは不可解です。中国は何を考えているのでしょうか? いやそれ以上に英国は何を考えているのでしょうか?

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ご承知の通り、英国は鉄道発祥の地であり、多くの鉄道ファンがいて、国民は高いプライドを持っています。しかし、実態は老朽化した設備、モラールダウンした鉄道員、衰えた技術開発力等・・憂慮すべき点が満載で、国民もそのことを知っています。

事故もしばしば起きますし、列車はなかなか時刻表どおりには運行されません。

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もう随分昔ですが、ドーバー海峡にユーロトンネルができ、パリとロンドンを結ぶ国際特急ユーロスターが登場した時、当時の英国側のターミナル駅での記念式典にエリザベス女王が出席しました。しかし、笑顔は無かったそうです。 なぜならこの高速特急は、全てフランス側の高速特急TGVを元に作られており、ある意味英国側には屈辱的だったからです。 英国側の意趣返しは、ロンドンのターミナル駅をフランス人が最も嫌うウォータールー駅(ベルギーの発音ではワーテルロー)としたことぐらいです。(昔の話です)。

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そして今、英国の都市間高速特急(インターシティ)も老朽化したディーゼルカーの後には日本の日立の車輌とシステムが入ります。 チューブと呼ばれるロンドンの地下鉄車輌も、フランスのアルストーム製がほとんどです。 すでに英国は鉄道をあきらめたのか? そして自国の鉄道網を中国に売り渡すのか? そして中国はグレートブリテン島に21世紀の南満州鉄道を建設するのか?

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151030-00046108-gendaibiz-int&p=1

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この問題を矮小化して考えることも可能です。 中国にはこれまで南車と北車という2つの鉄道車両メーカーがありましたが、合併して世界最大の鉄道車両メーカーができました。 それらの工場はもっぱら、中国国内で使用される高速鉄道車両や更新される一般鉄道用の車輌を作ってきたのですが、そろそろ高速鉄道の建設も終了時期に入ってきました。

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これから激減するであろう、車輌の注文に対して工場を維持して、雇用を守るためには、何が何でも輸出せねばなりません。 だから、中国は法外な安値でインドネシアや英国に鉄道を輸出しようとし、中国政府も資金面で後押しするのだ・・と勘ぐることもできます。

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実際、中国の景気が減速するなか、設備過剰、生産能力過剰に陥り、捨て値で輸出し、世界の市場価格を混乱させているのは、鉄道だけではありません。鉄鋼がそうです。そして多分、自動車もこれからそうなるでしょう。

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鉄道車両については、中国には独自技術が殆どありません。 350km/hrを出せる・・と得意になっていますが、直線の線路なら日本の新幹線も普通に出せます。むしろ大出力のモーターや高性能のインバーター制御技術が中国にあるのかな?と首を傾げたくなります。中国の技術に独自の売り物が無い以上、中国の商売は勢い価格競争と短納期競争になります。

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でも、中国の鉄道車両工場には卓越した生産技術があり、これについては日本の工場の上を行きます。 新しい工場では、高速鉄道の車輌を量産できるシステムがあり、高い生産性を誇ります。 いまだ手作りの感じがある、日本の工場とは違います。

つまり、中国が安価と短納期をうたい文句にするのにはそれなりに理由があるのですが・・・中国の工場のメリットが発揮されるのは、大量生産時のみです。日本のように、少ない新幹線車輌の注文を何社かで分け合うような場合には意味を持ちません。

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数をさばくために、外国にも中国製車輌を売り込まねば・・という必死さは、日本国内で新幹線車輌を細々と作ってきた日本の車輌メーカーには理解できないことかも知れません。でも希望通りにうまくいくか?

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日立は、英国のインターシティの車輌納入のために、英国内に工場を建設し新たな雇用を生み出しました。日本車輌は米国内で近郊型電車を売るために、米国に工場を持っています。いずれも、完成車輌の輸出のわずらわしさを除くためと、現地での雇用を確保するためです。

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しかし、中国の場合、国内の工場の稼働率確保に目的があるなら、現地に工場を建てても意味がありません。あくまで完成車の輸出にこだわるかも知れませんが、それでは英国がノーと云うでしょう。 あるいは中国が設計して英国の会社がライセンス生産するのか? でも中国の高速鉄道はほとんど日本とドイツの技術の模倣でできています。 知的財産権の問題が予想されます。

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多分、メイドインチャイナの高速鉄道の建設は、インドネシアはともかく、英国ではうまくいかないでしょう。 しかし、問題は高速鉄道ではなく、原子力発電所の方です。

果たして大丈夫か? それについては次号で


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