SSブログ

【 日本最後の戦死者とは 】 [政治]

【 日本最後の戦死者とは 】

 

今年も815日が近づきましたが、戦争の体験が風化し、記憶が薄れていくことを多くの人が心配しています。戦争と平和の両方を知る人は、その比較で、現在の平和のありがたさを訴える訳ですが、平和な時代に生まれた「戦争を知らない子供たち」には、今の平和のありがたみがピンときません。おそらくは、生まれた時から水の中で暮らしている魚に水を知覚せよ・・というのに似たことであり、鋭い感性がなければ平和の尊さは分かりません。

・・・・・・

それに苛立つのか、戦争を知る先輩諸氏の世代は、戦後70年間、一人の戦死者も出していない事こそ素晴らしい事であり、今後も引き継いでいかなければならないことだ・・・と強調されます。 もう戦死者は出さない・・という決意でしょう。 さらにその後に「これは平和憲法のお陰だから、今後も憲法を維持しなくては」とか「日米安保条約と自衛隊があったからこそ平和だったのだ」という文言が続く訳ですが、このとおり、日本が平和だった理由の解釈は人それぞれです。

・・・・・・

今議論されている安保法制の問題も、戦死者のいない平和な日本を維持するために資するという考え方と、逆に戦争の可能性が増して危険だという考え方の2通りがあります。 それはともかく、この70年間日本に戦死者がいない・・というのは全くの嘘です。では実際に誰が亡くなっているか・・といえば、大勢の人が亡くなっています。

日本がポツダム宣言受諾を伝えた後も、北方では戦闘が継続しました。ソ連軍は815日以降に千島列島の占守島に攻め込み、千島列島、樺太の南半分、満州、北朝鮮に攻め込みました。否応なく、応戦した日本軍側に多くの戦死者、そして民間人に多くの犠牲がでています。 第二次大戦(または太平洋戦争)後も、戦死者はでています。

・・・・・・

厳密には戦争の犠牲者とは言えませんが、1952年に韓国の李承晩が一方的に李承晩ラインを設定して、竹島を占拠した際、周辺で漁を行っていた多くの日本漁船が銃撃・拿捕され、日本側の死者は44人に及んでいます。 その前には日本の海上保安庁の巡視船も銃撃を受けています。当時、日本に平和憲法はありましたが、自衛隊はありませんでした。韓国による侵略に対し、抵抗することはできず、日本国民の生命を守る事もできませんでした。 憲法9条さえあれば、外国は日本を尊敬して攻撃してこない・・という説に対する、明瞭な反証です。

・・・・・・

その後はどうか・・といえば、朝鮮戦争でも日本の戦死者はでています。日本は米軍(国連軍)からの要請を受けて、海上保安庁が機雷除去作業を行いましたが、機雷の爆発事故により、中谷坂太郎氏が殉職・・というより戦死しています。 下記のサイトでは中谷氏を日本最後の戦死者としています。

http://matome.naver.jp/odai/2140415132731852901

・・・・・・

アニメ映画「コクリコ坂から」では、主人公の父親が朝鮮戦争でLSTの船長をしていて、触雷して亡くなったという設定ですが、輸送船とはいえ、米軍の艦船の艦長を日本人がつとめて、戦場で戦死するというのは、現実離れしています。 細部にこだわり真実らしさを醸し出すのに長けたジブリ映画ですが、これは無茶苦茶です。でも朝鮮戦争の機雷で日本人が戦死したのは事実です。

・・・・・・

今、初めて集団的自衛権の問題が議論されていますが、実際に隣国で戦争となれば、そんな議論は吹き飛び、日本も巻き込まれ、そして日本人に死者がでるのは必定です。 60年以上前に我々は実際に経験しているのです。

・・・・・・

では、中谷氏が日本人の最後の戦死者か?といえば、それも全く違います。日本人、そして日本軍人最後の戦死者は、昭和47年 フィリピンのルバング島で戦死した小塚金七上等兵です。 昭和の方はご存知ですが、太平洋戦争中、ルバング島を日本軍が撤退する際、小野田少尉を残置諜者として残しました。 小野田少尉とその部下の小塚金七上等兵は、戦後もルバング島に残り、作戦を継続しましたが、1972年、小塚金七上等兵は銃撃戦で戦死します。 このことは最後の日本軍人である小野田少尉に帰国を決意させます。

・・・・・・

戦争はとっくに終わっていましたが、小野田・小塚の戦闘行動は、旧日本軍の軍命に従ったものであり、小塚上等兵の死亡は戦死です。日本と日本人は、正しい歴史に向き合って、将来の事を考えるべきですが、それなら、非武装・平和憲法のもとで日本が侵略され、多くの犠牲者が出たことも想起せねばなりません。 否応なく集団的自衛権を実行した結果、日本に戦死者が出たことも想起せねばなりません。戦後30年近くたってフィリピンでまだ戦闘が継続していたことも想起せねばなりません。

・・・・・・

戦後70年間戦死者がでていない・・などいう誤謬を口にする人は、多分、真摯に歴史に向き合っていません。 

・・・・・・

では最後の戦死者は小塚金七上等兵か?と考えた時、やっぱり気になる事があります。

「最後の戦死者」という表現は、必ずしも・・・もう戦死者はでない・・と言う意味ではありません。

特に英語で、Last という場合は「最後」と言う意味と、「最も直近の」という意味があります。映画の「ラストサムライ」や「モヒカン族の最後」は、絶滅する種族を意味しますが、一般に「Last」は「直近の」の意味でも使うのです。

・・・・・・

原爆犠牲者にしても、戦死者にしても、これを最後にしたい・・というのが日本人の思いですが、冷静に考えると、外国の人々は、これからもありうる・・と解釈しています。

・・・・・・

もう戦死者を出さないために、机上の空論や理想論でなく、かつ徒に危険で野蛮でない方法はないものか・・と思います。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。