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【 田辺誠とミネルバのフクロウ 】 [政治]

【 田辺誠とミネルバのフクロウ 】

 

いささか旧聞ですが、社会党の委員長だった田辺誠氏が死去しました。昭和の政治家がまた一人いなくなった訳ですが、今更ながら、彼が委員長だった頃の社会党とは何だったのだろうか?と思います。

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当時、55年体制と言われる自由民主党がずっと政権を担当する時代が続いていました。野党には政権を担うチャンスはなく、必然的に抵抗政党の性格を帯びざるをえませんでした。そして野党だからある程度無責任な事を言っても許される・・という雰囲気もありました。 しかし政権が担当できない中でも、政党として何がしかのことはやってみようという意思は彼らにもあったと思われます。

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しかし、野党第一党の社会党は、所帯は大きいものの、かなり右の人から極左というべき人までいて、まとまりがつきませんでした。歴代の委員長は、そのバラバラの所帯をひとつにまとめようと腐心し、そして挫折していたのです。

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そのバラバラな政党をひとつに束ねるなら、どうしても温厚篤実な人物ということになりやや右派の人が適任となりますが、田辺氏はその一人でした。 社会党右派として、自民党の金丸信氏などともパイプを持ち、一方で北朝鮮ともパイプを持つという人物でした。 その人脈を活かして、彼は日本のために活躍した政治家だったと・・・思いたいのですが、実はそうでもありません。 今思うと「残念」の言葉が浮かびます。

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当時、凍り付いていた北朝鮮との関係を改善させるべく、金丸氏と組んで、ピョンヤンに出かけ、金日成と会い、長く抑留されていた第十八富士山丸の紅粉船長と機関長の解放に漕ぎ着けました。これは一大成果として喧伝されたのですが・・・、実はピョンヤンでのお祭り騒ぎの背後に、膨大な数の拉致被害者が隠されていたのです。拉致被害者達は、田辺、金丸の訪朝団や、小沢、土井の訪朝団が、金日成とにこやかに握手して帰るのを、ピョンヤンの一角で息をひそめて見つめていたのです。

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既に北朝鮮による拉致疑惑については、噂の段階ながら、日本でも囁かれていたのです。しかし、田辺氏もその後任となる土井たか子氏も、完全に黙殺しました。

第十八富士山丸事件についても、釈放した北朝鮮の寛大さを褒める報道が続いていたのですが・・・、やがて金丸氏が失脚、死去すると、実はこれは北朝鮮による完全な拉致人質事件であり、人権蹂躙であり、日本からの譲歩を引き出すための交渉の道具だったと判明しました。(これ自体は田辺氏とは無関係ですが)。

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いずれにしても、その時点で問題として取り上げ、解決に向けて動くべきだった北朝鮮による拉致事件に対して、何の行動も取らなかった時点で、田辺・金丸の両氏は万死に値する罪を犯したのです。

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さらに田辺氏の名前を有名にしたのは宮沢内閣時代のPKO法案への反対です。歴史は繰り返す・・と言いますが、今議論されている集団的自衛権の問題も、PKO法案と共通したところがあります。 

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この時、日本からはるか離れた土地に、日本とは無関係の係争のために、国家として人を送ることの是非が議論されたのですが、PKO反対派は、PKO参加を「蟻の一穴」と称し、「軍靴の足音が聞こえる」とか「戦争をする国になる」とか「軍国主義が復活し、世界侵略をまた始める」という短絡的表現で非難しました。

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私などは、PKOやPKFに既に参加している国で、軍国主義になったり、他国を侵略している国があるか?とPKO反対派の友人に尋ねましたが、即答できません。

反対していたその友人は、実はPKOの実態を全く知らなかったのです。 

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当時、ボスニアとヘルツェゴビナの停戦監視団として活躍したPKO(PKF)には、ノルウェーやデンマークの兵士が派遣されました。特に、ノルウェー陸軍からは女性の陸軍少将が派遣されて、PKF部隊の司令官になったのですが、果たして、ノルウェーやデンマークは、その後、軍国主義で他国を侵略する国になったか? と尋ねても、回答はなく、無茶苦茶な理屈を言い出しました。

挙句には、「ノルウェーやデンマークは信頼できるけれども、日本は信用できない」と意味不明の回答をしました。 実はその回答は、当時の社会党の意見そのものでした。

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現在、アンゴラの停戦監視団などの形で多くの兵士を派遣しているのは、インド、パキスタン、バングラデシュが御三家です。 これらの国々が他国を侵略しているか、軍国主義化しているか・・・PKO反対派の意見を聴きたいものです。

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日本社会党にとって、当時、信用できる国家とは中華人民共和国、北朝鮮、ソ連だったのです。 今思うと、見事に信用できない国家が整列しています。

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ちなみに、その後、それらの国のボロというか問題がいろいろ明らかになると、土井たか子氏の時代に、社会党はソ連のような社会主義ではなく、西欧的な社会民主主義を志向すると言い出し、最後には社民党に名前を変更しました。 でも彼らが、西欧的な社会民主主義の政策や方針をよく理解していたとはとても思えません。

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当時の社会党が標榜した社会民主主義の総本山であるフランス社会党は、原子力発電を発電手段の中心に据え、外国に軍隊を派遣して戦争し、核実験を南太平洋で行っていました。考え方としては、日本の自民党以上に右寄りの思想です。日本社会党とその後の社民党は、欧州の社会民主主義を本当に理解していたのか?

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さらに、PKOの後に、実際に武力部隊への参加を明確にうたう、PKF法案が出されると、社会党が最も嫌う自衛隊というか武力の派遣を認めることになります。社会党などの反対派は、「徴兵制度が始まり、自分達の子供たちが戦場に送られる」と叫びました。

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政府が軍事活動の制約を少しでも緩めたり、国際協力の姿勢を打ち出すと、条件反射のように「徴兵制の復活」という飛躍した意見が登場する・・・のは、この時以来の伝統です。

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確かに、当時、社会党が大好きな北朝鮮、旧ソ連、西ドイツなどは徴兵制をとっていました。しかし、軍事技術面から冷静に考えて、今の時代、徴兵制が有効でしょうか? 日本の軍事力を強化しようと考えた場合、徴兵制はむしろマイナスです。

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近代戦は、20世紀の戦争と違い、歩兵が小銃を持って歩いて進軍し、個別に敵を射撃するスタイルではありません。 最新の兵器はハイテクの塊であり、徴兵で集められた素人に扱えるものではありません。少数の専門知識を持った職業軍人が作戦を実行した方が遥かに効率的です。人数の多寡はあまり大きな意味を持ちません。素人はむしろ足手まといです。素人はむしろ文民として銃後の活躍というか、国家の経済を支えた方が、全体として効果があがります。

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これは私の意見でもありますが、ヒゲの隊長こと、佐藤参議院議員も同じことを言っています。彼は職業自衛官という専門家の立場から、そう説明する訳ですが、現在、集団的自衛権の問題も含めた、安全保障関連法案に反対する人々は、それには一切耳を貸さず、「徴兵制が復活する」と滑稽な主張をするばかりです。

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取りあえず、目の前にある方案や政策に反対するためなら、数カ月後にはすぐばれる嘘をついてでも、とにかく反対する・・というのが反対派なのでしょうか?社会党が成田空港に反対した時には、「この空港は必ず軍事利用される。成田空港からB52爆撃機がベトナム空襲に行く」と、奇妙な理屈を唱えていました(既に横田基地があるのに何で?) 今、その事を思い出す人はいません。

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垂直離着陸機オスプレイが沖縄に配備される時は、「あんな危険な飛行機が配備されれば、必ず墜落事故が起こる。もし配備されれば、我々は、沖縄でもう暮らしていけなくなる」と訴えました。 今後、オスプレイが墜落するかどうかは分かりませんが、その可能性は確かにあります。 しかし、一旦配備されると、反対派はもうオスプレイのことはコロリと忘れて、普天間基地の問題だけを訴えています。もう暮らしていけなくなる・・と訴えていましたが、彼らは引き続き沖縄で暮らしています。

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衆議院で可決された安全保障関連法案は、おそらく参議院でも可決されるでしょう(ひょっとしたら、衆議院に戻されて再可決となる可能性もありますが)。 そうなると、反対派はコロリとその事を忘れ、次の反対の対象を探すでしょう(おそらく原発の再稼働反対でしょうが)。

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集団的自衛権が認められれば、必ず徴兵制が導入される・・・と反対派は訴えていましたが、実際には徴兵制は導入されないでしょう。 おそらく1年後には、彼らはその事を忘れているはずです。 PKF方案の時と同じように。

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米国が始める戦争に巻き込まれる可能性は、厳然としてありますが、実はその可能性は法案成立前からあるのです。

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少し、時間が経てば、嘘がばれ、少し時間が経てば、その愚かさが分かる、そんな行動を続けた社会党と社民党の活動パターンは、実は穏健派で良識派だった田辺誠氏の時代に確立されました(成田知や飛鳥田一雄の時代にその兆しはありましたが)。

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時間が経ってから真実が分かる・・という事を「ミネルバのフクロウは夕暮れに飛び立つ」と表現します。 土井たか子氏は、自分が必死に擁護した北朝鮮の犯罪が明白になり、自分もそれに関与していたことが暴露されるのとほぼ同時期に痴呆症になり、糾弾を免れました。金丸信はもっと前に他界しています。 しかし、田辺誠氏は長生きしすぎ、ミネルバのフクロウは飛び立ってしまいました。対北朝鮮政策での失態は明らかになりました。長生きすれば、恥多し・・かも知れません。 でも私は、彼にもっと長生きして貰い、安保関連法案が成立し、集団的自衛権が認められた後に、本当に徴兵制が導入されるかを、見届けて貰いたかったのです。


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