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【 ルビーロマン批判 】 [金沢]

【 ルビーロマン批判 】

石川県産の超高級ブドウ ルビーロマンがいろいろなところで話題になっているようです。私の知己のブログにもお祝いにいただいたルビーロマンを食べた・・という話が登場しますし、NHKの情報番組でも、ルビーロマンを紹介しています。農家が手間暇をかけて慈しんで育て、しかも摘果を繰り返して選び抜いたエリートの作物である事を強調し、さらに、収穫後にノーキョーの厳密な審査をパスしたほんの少量の房だけがルビーロマンのラベルを貼れることなどを説明します。

それに続いて、ルビーロマンのプロジェクトに関わった人が、苦節20年の開発秘話(・・というほどではないただの雑談)を語り、そして最後に、ルビーロマンの粒を出演者が頬張り、そのおいしさに大袈裟に驚く・・という番組構成です。

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食べ物を口にして、そのおいしさに大袈裟に驚いてみせる・・というのは昨今のTV番組のお約束ですから、視聴者の方は驚きませんが、全編を通じて感じるのは、この高級品種の価格が妥当であり、それなりに根拠があることを強調しているかのような番組の筋立てです。

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単なるおいしい食べ物の紹介にとどまらず、商品が高価であることの弁解にNHKの番組が利用されているのです。

ちなみに、ルビーロマンの価格は、JAの通販価格で、一房12,310円だそうです。

子供の頃に読んで感動した名作童話「一房の葡萄」を書いた、有島武郎も驚く価格です。

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オヒョウ自身は、このルビーロマンについて、10年くらい前に畏友T君から聞いたことがあります。なかなか元気の出ない能登の農業を活性化させるための起爆剤として超高級品種のブドウを開発している・・と言う情報でした。

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しかし、この高価格の果物の話を聞いて、私はなんとなく不愉快になり、昔の記憶が蘇りました。金沢の小学校に通った頃、同級生の病院長の息子がお正月にスイカを食べたことを自慢していました。

「お正月にスイカとは珍しい・・」と答えると、「夏にスイカを食べても当たり前さ。雪の降る季節に食べるから面白いのさ。オヒョウは食べた事ないのかい?」との返事です。

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「スイカなんざ、暑い季節にセミの声を聞きながら食べてこそ風情があるのに、冬に食べておいしいものかい・・」と反発したくなるのを我慢しました。高価で珍しい食べ物を食べられない負け惜しみと思われるからです。

その後、米国や中国に暮らし、普通に冬でもスイカを食べました。大陸にある両国は、冬でも、南方で収穫されるスイカを北に運べるから、いつでも食べられるのです。シカゴで食べたスイカは、メキシコやアリゾナ産で、昆山で食べたスイカは広西省や海南島産でした。結論から言えば、冬に食べてもスイカはスイカで、何の違いもありませんでした。

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高価で珍しい果物が登場すれば、また子供達の間で、食べたことを自慢する子や、引け目を感じる子ができるとすれば、罪な話だ・・・。値段の高い果物ほど、罪な存在はないのではないか?

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東南アジアの男性は果物の王様ドリアンを買うために、女房を質に入れるそうですし、映画「男はつらいよ」では、マスクメロンの一切れを争って、家族中が大喧嘩になります。

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だいたい、一房(それも10粒くらいしか付いていない)が12,310円とは・・・一体誰がその価格を決めるのか?

生鮮食料品の場合、生産にかかったコストの積み上げで、価格が決まる訳ではありません。 市場が価格をおのずと妥当な価格に導きます。法外に高い値段を付けても、売れなければ鮮度が落ちて価値は急速に下がり、売れ残ればゴミになります。損をするのは強気な価格を付けた生産者です。だから、自然に妥当な価格に収斂していきます。 

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どんなに高価でも、刹那に鮮度が下がり、傷んでしまえば価値が消滅するものに高い値段を付けることを、経済社会はどうして許すのか?

今回、このような価格設定をしたということは、それでも買うお客がいると見込んでの事でしょうが、いったいどのような客を想定しているのでしょうか? アベノミクスでにわか成金になった人が家族と一緒に食べるためか? 病院経営者が息子に学校で自慢させるために買うのか? いやそうではないでしょう。多くは贈答用、もしくは東京の高級料亭用でしょう。 贈答用・・といえば聞こえはいいですが、つまり一種の賄賂です。 越後屋が悪徳代官に渡す箱の中身です。

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ご承知の通り、高額商品・・というか高級贈答品が飛ぶように売れているのは、日本より中国です。 ローレックスのような高級時計、110万円以上もする高級な白酒(日本の白酒ではありません。バイチュウです)やフランスワインが飛ぶように売れていたそうですが、これは中国の人々が軒並みお金持ちになったからではありません。

全て賄賂用です。 事実、習近平国家主席が腐敗撲滅の号令をかけたとたん、それらはピタリと売れなくなりました。 ルビーロマンも似たようなものでしょう。

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中国に持って行って贈答品にするには、鮮度の問題もあって、難しいのですが、日本国内でももっぱら贈答用でしょう。そして、そのブドウは本当にブドウの味を愛する人の口に入るとは限らないのです。生産者は果たしてそれをよしとするのか?

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そもそも、生産者は、1万円以上するブドウの出荷を誇らしげに語りますが、高コスト・高価格であることは自慢することなのか? オヒョウが従事する鉄鋼の世界では、いかに生産コストを下げるかに心血を注ぎます。 安く製造して自社にとっても顧客にとっても利益となる商品を開発すれば・・・ひいては社会が豊かになるという自負があります。

一方、本来、全ての人に食べてもらい、万民の飢えを癒すのが農作物なのに、いたずらに高級品志向に走る農家の姿勢はそれとは正反対のようです。

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一部のお金持ちか、賄賂を貰う人の口にしか入らない果物を生産することが、能登の果樹園農家の誇りなのか? と、問いただしたくなりますが、そのあたりで止めます。

くどくなると、オヒョウのひがみや負け惜しみと理解されるからです。ご承知の通り、負け惜しみの事を、英語では「酸っぱいブドウ」と言います。無論、イソップ物語の寓話に由来します。

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それはともかく、アベノミクスでも一向に豊かにならない庶民の口には、ルビーロマンなど入らないでしょうし、賄賂を潔しとしない日本で、もしこのブドウが全く売れなかったら、どうしましょう? 強い意気込みをもって、このブドウに賭ける能登の農家は困ってしまいます。さらにもう一段の宣伝をNHKにお願いするしかありません。

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いっそ、能登の食材をPRしようとして、かえって能登のイメージを損ねている、あの連続TV小説「まれ」にルビーロマンを登場させてはどうでしょうか?

貧乏人のためのケーキ作りという主人公のスローガンを放棄して、今度は一部の特権階級のためのフランス菓子作りに挑戦するのです。ルビーロマンを一粒ケーキの上に載せて、15000円でお金持ちのためのケーキとして売り出すのです。

ケーキの名前はもちろん「怒りのブドウ」です。


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