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【 ソーラーインパルス 】 [航空]

【 ソーラーインパルス 】

 

あまり愉快ではない話です。世界一周を目指す、スイスの太陽電池飛行機ソーラーインパルスが、天候不順を理由に県営名古屋空港に予定外の緊急着陸をしました。パイロットは日本側の対応に感謝しつつも「やむを得ず、他に着陸地点が無かったので日本に着陸した」と言っています。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20150602-OYT1T50039.html

http://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=159535&comment_sub_id=0&category_id=256

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これは、助けてもらった人のせりふではありません。彼はよほど、日本に来たくなかったのでしょうか?

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無茶・・と言っては言いすぎですが、ひとつの冒険として世界一周をしている以上、予想外の事態はあるでしょうし、緊急着陸や不時着もあるはずです。しかし、その場合は、まず自分の不明を恥じてお詫びし、かつ感謝するのが順番です。彼は感謝の言葉を口にしましたが、日本への着陸が不本意であることも漏らしています。

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そもそも、スイス政府が後援したという今回の世界一周計画では腑に落ちない点があります。最初から日本は全く無視されています。

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北半球を回る世界一周なら、最も難しいのは西太平洋の横断であることは、子供でも分かります。それを避けるなら、北に迂回して、カムチャッカ半島、アリューシャン列島、アラスカと飛ぶコースがありますが、あまり高緯度に逃げると世界一周とは言えなくなります。

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逆に太平洋に点在する島々を飛び石伝いで飛行するなら、ウェーキ島やグアム島を経由してハワイに至る航空路が一般的ですが、どちらの場合も、太平洋横断の出発地は日本が最適です。

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それにしても理解できません。ソーラーインパルスは、中国に入ってから、重慶、南京と2回も着陸し、それぞれで長期間滞在しています。そしていきなり、南京からハワイのホノルルへ飛ぼうとしています。最大の難関である西太平洋横断を考えるなら、少しでも大陸の東端、例えば上海から離陸することを考えるべきですし、もっと言えば、前述の通り、日本に立ち寄って、日本から太平洋横断に挑戦すべきです。

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かつて空路での世界一周が大冒険だった頃、飛行家は皆さん、日本に立ち寄っていました。飛行船のツェッペリンもそうですし、女性飛行家のアメリア・イヤハートも日本領の島に立ち寄り、そして南太平洋で消息を絶っています。

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それなのに、なぜソーラーインパルスは、日本ではなく遥かに西の南京から出発したのか?南京と日本との距離は決して無視していい距離ではありません。実際、日中戦争、あるいは太平洋戦争の空軍戦略ではこの距離が重要な意味を持ちました。

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かつて、日華事変の頃、日本は南京や漢口、重慶を爆撃機で空襲しました。スペインのゲルニカ空襲と並んで、世界初の戦略爆撃とされ、日本の歴史の汚点とされるものです。これゆえに、その後の太平洋戦争での米軍による無差別爆撃や原爆投下を非難することも難しくなっています。

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日本軍の飛行機は南京や漢口爆撃の際は、日本国内または台湾の基地から飛び立ち、世界初の渡洋爆撃と言われました。しかし、重慶爆撃では中国大陸内の基地から飛び立ちました。当時、航続距離では定評のあった日本の飛行機でも航続距離が足りなかったからです。

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一方、米軍による日本空襲は、最初の頃(サイパンやテニヤンが陥落する前)は、中国の重慶より更に奥地の成都から飛び立っていました。これは超大型爆撃機のB29の航続距離が極めて長かったことと、成層圏の高度で強い偏西風に乗ることができたからです。排気タービンを持たず、機内の与圧も無かった日本の飛行機は空気抵抗の少ない高高度を利用することができませんでした。

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現在も、日本と中国をつなぐ定期航空路には内陸都市への直行便はありません。上海浦東空港で、日本からの飛行機がワンストップして成都へ向かって飛ぶのを、私は何度も見送りました。

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ソーラーインパルスの場合、高度8500mで、日本の中部地方上空を横断してハワイへ向かう予定でした。もし強力な偏西風であるジェット気流を利用するなら、高度1mくらいの方がいいですし、季節は冬の方が適しています。もっとも、冬は日照時間が短くなるので、太陽電池で飛ぶ飛行機には具合が悪いのですが・・・。

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今回、パイロットは太平洋上の前線の存在を気にしていたとのことですが、高度8500mではなく、1万mであれば、あまり前線を気にしなくてよかったはずです。

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高度は高い方が日照も強くなり、気温も下がりますから、太陽電池の発電量は大きくなりますし、電気モーターですから内燃機関と違い、薄い空気も問題になりません。プロペラの推進力は弱くなりますが、最高時速140Km程度の推進力なら、もともとあまり重要ではありません。ジェット気流の方が遥かに高速で、飛行機自体の速度はあまり意味を持たないのです。だから太陽電池飛行機はなるべく高高度を飛ぶ方が合理的なのです。

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だいたい、太陽電池飛行機で世界一周する意味が、どこまであるのか?微妙です。なぜなら、太陽電池のエネルギーで飛行機を飛ばす技術は既に確立しているからです。そして、今、世界的な太陽光発電ブームは終息しつつあり、日本でも再生可能エネルギーの太陽光発電偏重が見直されています。太陽電池にこだわるのは、安価な太陽電池を量産している中国企業ぐらいです。 ひょっとしたら、このプロジェクトの背後には中国企業の後押しがあり、だからなるべく日本を無視したかったのかも知れません。しかし一方で、日本に暮らした経験があるこのスイス人パイロットは、それに反発して、ハプニングを装って日本に降りたかったのではないか? そんなことを考えてしまいます。

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ところで、世界一周の途中で、日本に不時着した例といえば、2005年に金沢の建設中の道路に不時着した人騒がせな英国人のことを思い出します。

http://www.47news.jp/CN/200510/CN2005102101003184.html

この人物、Maurice John Kirk氏は獣医師ですが、第二次大戦時の捕虜虐待を理由にした過激な反日発言でも知られた人物でした。もっとも、日本だけでなく英国政府や自分の住むカーディフ市にも噛みついていて、全てに反発する、いわゆる反体制活動家でした。彼は新潟空港から広島空港へ向かう途中、エンジン不調で金沢に不時着したのですが、そのトラブルの原因は、オクタン価の高い航空ガソリンを給油すべきところを、お金を節約して安価な自動車用ガソリンを給油したから・・・という信じられない理由でした。

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彼は金沢市内の病院に搬送された後、「本当は日本になど、来たくはなかったのだが、世界一周の為に仕方なく寄らざるを得なかった。まして日本人の世話になるなどマッピラご免なのだが、無理やり運ばれた。余計なお世話だ」とあらん限りの悪態を、南ウェールズ(カーディフ)訛りの英語でまくしたてたとのことです。挙句、不時着した機体の処分費用や、自身の医療費を踏み倒して帰国したとのこと・・。

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ああ、日本に不時着する人は、皆日本嫌いなのか? まあ親日家なら最初から日本着陸を予定し、不時着などにはならないのですが・・。


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