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【 義和団事件と日本軍 】 [中国]

【 義和団事件と日本軍 】

多国籍部隊の隊長に、初めて日本の自衛官が就くことになりました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150507/k10010071931000.html

これまでは、同盟国からの慫慂で、ある意味、しかたなく、しぶしぶPKF参加やPKO参加という形で、自衛隊を海外に派遣し、お付き合いのアリバイを作ってきた日本政府ですが、今度は自衛隊が、前面に出て積極的に旗を振ることになります。

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国内的には、集団的自衛権や憲法の問題が解決したとは言えないので、これはフライングと言えます。 「おい、ちょっと待ってくれ!」ということになりますが、これはあくまで国内の事情で、海外には通用しません。

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今回の多国籍部隊とは、ソマリアの海賊退治のための部隊で、国家間の戦争に与する訳ではありません。それに外国からみれば、貿易の恩恵を最も受けている国のひとつで、かつ世界有数の海軍力を持つ日本が、海賊退治に参加しないのはズルイと見られます。憲法を口実に自衛隊派遣をしぶれば、これまた逃げるための言い訳・・と解釈されます。日本国内では良心の象徴とされる日本国憲法が、サボるための口実と解釈され、日本の評価を下げる理由になるとすれば、皮肉なことです。 それはともかく、外国から見れば、日本は何をしているんだ? となってしまいます。

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そして私は、全く別の観点から、このことを考えます。これでいいのか?

実は多国籍部隊の指揮を日本の軍人が取る・・というのは、115年ぶりなのです。そして、前回、日本が陣頭指揮をとった多国籍部隊は獅子奮迅の活躍をして、その結果、20世紀の世界を大きく混乱させることになったのですが・・・(これは大げさではありません)。 一旦成功した軍事行動ですが禍根となったのです。

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前回とは、清国で勃発した義和団事件の時のことです。この事件について語るのはこのブログの趣旨から外れますし、丁寧に書けば、予定の枚数を大きく超えます。だから、一部だけを書きます。

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義和団の事件の中に、いわゆる北京篭城戦がありました。その戦いでは、義和団の攻撃によって、租界にいた外国人達が脅威にさらされ、全滅の危機に瀕したのです。

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欧米列強とロシアそして日本に国土を蚕食され、屈辱の中にいた清国人が、打倒外国人を叫び、外国人居留区(租界)を襲撃したのです。日本で言えば尊皇攘夷派の活動ですが、中国では半世紀遅れて勃発しました。 西欧各国は自国民保護のためにそれぞれ少数の守備隊を派遣していましたが、行動は鈍重、軍隊としての能力も低く、うまく機能しません。その中で、日本陸軍が派遣していた柴五郎中佐が率いる一隊は、行動は機敏、戦闘に強く、信頼に足る部隊でした。 

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柴隊は日本人を保護すると同時に、英仏等の諸外国人も保護し、ついには、柴中佐が各国の守備隊を統合した多国籍部隊を率いて、清国の暴徒・・というか軍隊というかテロリストというか・・不明・・・を蹴散らしました。

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この活躍を見て、「しめた!」と思った国があります。 当時、台頭するロシアを押さえ込むために、代理戦争を起こしてくれる国を探していた英国です。実際、義和団の事件の際、自国民と自国の権益保護のために、多くの軍隊を中国に送り込んだロシアは事件終結後も撤退せず、中国東北部のロシアによる支配を既成事実化しようとしていました。

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英雄柴五郎の活躍に惚れ込んだ英国は、「優秀な陸軍」を持つ日本と日英同盟を結び、日露戦争をそそのかしました。 ロシアは日本にとっても脅威だったので、やむなく戦争を始め、大変な犠牲を出しながら、辛くも勝ちました。しかし、このことが日本に災いします。勝ったことで、妙な自信をつけた軍隊にブレーキをかけることはできず、日本の軍隊の暴走が、20世紀の日本とアジアと・・世界全体に災いをもたらしました。

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日本だけではありません。西欧の列強も義和団事件の総括を怠りました。

アヘン戦争やアロー号事件の結果とはいえ、外国の都市や地域を占領して租借し、その国の国民を二級市民として差別し、その上に君臨することが、いかに危うく、反感を買うことであるかについて、西欧諸国はあまりに鈍感でした。 20世紀のアジアの戦争の多くはその鈍感さが背景にあります。そして沖縄、イラク、その他、多くの地域で、米国は21世紀の今も、その鈍感さを引きずっています。西欧諸国と微妙に立場が違う、ロシア/ソ連も同じことです。

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そして、義和団事件から最も多くを学ぶべきだったのに、それを怠ったのは中国です。

外国に国土を占拠され、国権を侵された時、どう対応すべきか・・。市民による反乱や暴動の形ではなく、国際法に則った、正々堂々とした対応をすべきなのに、それを清国はしませんでした。 

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義和団事件は、清国政府に対する反乱の形をとっていますが、実は西太后は義和団の思想を理解し、密かに彼らの行動を支持していました。つまり政府がしたいことを市民運動の形で行っていた訳で、義和団のテロは一種の白色テロです。 外国に対する排外活動という点では、中華民国になった後の、通州事件や済南事件につながり、今の中華人民共和国の反日デモにつながっています。しかし、このやり方は、外国の理解や賛同を得られず、事態をエスカレートさせるだけです。

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そして、本来政府が行うべき軍事行動を民間人にやらせる行動は、いたずらに民間人の被害を大きくします。軍人と民間人の区別をわざと曖昧にし、便衣兵を多用する戦法は、日中戦争や八路軍と国民党の内戦に登場し、被害を大きくしています。敵となる側は、やむを得ず民間人も攻撃対象とせねばなりません。いわゆる南京大虐殺の真偽は不明ですが、背景に便衣兵の存在を挙げる人もいます。

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そして、義和団事件の経緯を、自国民に適切に説明しないことは禍根となります。

私が中国にいた頃、森羅万象に詳しい中国語の家庭教師に義和団事件の話をした時です。彼女は「義和団事件・・ああ、あの農民一揆のことですね?あれは単なる農民一揆ですよ」と答えて、話は途切れました。

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しかし、義和団事件は単なる農民一揆ではありません。背景には、当時清国で布教が進んだキリスト教の存在があります。そして西欧列強に対する反抗の意味があります。それに何より、義和団事件を理解しなければ、その後に起こった日露戦争の原因が理解できません。 敢えて今の中国はそこをごまかして隠そうとしているのか?

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中国では、日露戦争は単なる日本の中国大陸への侵略戦争と教えているようです。ロシアは、白馬の騎士として清国を助けに来たけれど、日本に負けてしまった・・というとんでもない解釈です。

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現在、中国のキリスト教はその存在を認められていますが、共産党(つまり唯物論者)の指揮下での宗教活動・・という矛盾した存在です。ローマ教皇は中国のカソリックを正統と認めていません。 そして、中国政府は、共産党を超える規模の結社を決して許しません。法輪功に対する弾圧は、その構成員の数が共産党を上回る事への恐れがあります。 中国は義和団事件の背後にキリスト教が存在することを隠したいのでしょうか?

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そして、義和団事件の背後にある屈折した西欧諸国への感情が最大の問題です。そのコンプレックスは今の中国にも残ります。 中国は、日本をはじめ、アジア諸国には自国の国名に中華を使って呼ぶ事を強要します。 一方、欧米諸国に対してはこれを要求せず、シナ(あるいは同じ意味の別の発音)で呼ぶことを認めます。

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中国の政府および国民に抜きがたく残る西欧へのコンプレックス・・これを克服しなければ、本当の近代化はできないのですが、義和団事件の真相を隠す中国はその事に消極的です。

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租界に暮らす英国人、フランス人、米国人は、中国人を軽蔑し、侮辱していた訳ですが、今の中国政府にとって、彼らは友好国で、ともに日本軍国主義と戦った仲間です。どうにも義和団事件は具合が悪いのです・・。

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海賊掃討におもむく多国籍部隊を率いる日本の海上自衛隊の司令官は、おそらく適切に行動し、作戦は大成功をおさめるでしょう。日本の海自は非常に練度が高く、特に将官クラスは、外国の将官クラスより優秀だ・・という評価もあります。

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しかし、自衛隊が活躍しすぎても困るのです。そして日本人司令官の評価が高くなりすぎても困るのです。 旧日本陸軍の軍人として西欧で最も高く評価された柴五郎中佐はその後、大将まで昇進しますが、終戦の年、自決を試み、その後亡くなっています。


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