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【 広島空港 RW10とRW28 】 [航空]

【 広島空港 RW10RW28

今日も広島は雨が降っています。そして雨が降ると、なぜか広島空港は全便欠航になります。今週末、LCCの春秋航空で上京(というより帰省)する予定の私としては気が気ではありません。すでに航空券は購入しているのですが、飛ばなければ新幹線に切り替えることになります。しかし、それだと東京着が遅くなってしまう・・・。

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今回のアシアナ航空のハードランディングの影響がこんなところに来ているとは・・。

事故の原因については、事故調査委員会の報告を待つべきであり、情報が足りないなか、無責任にコメントすることはできません。マスコミの中にはパイロットの操縦ミス説を唱える人もいますし、インターネット上にはアシアナ航空が危険だとか、韓国の飛行機は心配だ・・とか、無責任な憶測が溢れています。

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国土交通省の事故調査委員は、TVのインタビューで、慎重に言葉を選びながらも「ダウンバーストの可能性もある」と言っています。この現象については、ご承知の方も多いでしょうが、地表付近に局所的に現れる猛烈な下降気流のことで、小型で風速の強いものは、マイクロバーストやウィンドシアとも呼ばれます。着陸直前の飛行機がこの気流に突っ込むと想定以上に高度が下がり、墜落することもあるのです。日本の空港ではまれにしか観測されませんが、山の中の広島空港は天候がよく変化しますし、事故当日も天候がめまぐるしく変化し、気流が不安定だったとのことです。

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乗客の証言に、「着陸前に大きく機体が揺れた」というものもありますし、結果的に高度を失って滑走路の手前でILSのアンテナにぶつかったのですから、ダウンバースト説はその可能性を否定できません。

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もうひとつ、マスコミ報道で気になるのは、事故機があえてILS(計器着陸装置)が完備したRW10(西側)からの進入を選ばず、計器着陸のできないRW28(東側)からの進入を選択したのはなぜか? ということでパイロットの判断ミスを指摘する意見です。

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以前のブログでは説明が不十分でしたが、新しい広島空港には、日本では最新鋭のILSであるCATⅢ(カテゴリー3)が備えられていました。しかし、滑走路の片側にしかありません。R/W10(西側)からの進入にしか使えません。もっとも、滑走路の両側にこのILSが設置してあるのは、羽田空港の一部の滑走路や下地島空港など極少数の空港であり、広島の場合は、片側だけでもCATⅢがあるなら御の字だ・・という訳なのですが、そのILSが壊れてしまいました。

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その為に、雨が降ると飛行機が飛べない・・というまるで大正時代の飛行機みたいな状況になってしまったのです。でも日本にはCATⅢのILSが設置されていない空港は山ほどありますが、それらは雨の日も普通に運用されています。 どうして広島空港はダメなのか? これは標高が高く、霧が出やすいこの空港ならではの事情と言うべきです。そして、今回の事故をきっかけに、視界不良が多く発生する広島空港の問題点をアピールしようというエアライン側の思惑もあるかも知れません。

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いずれにしても、マスコミやインターネットは、ILSが使えるR/W10を使用しなかった事を問題視し、パイロットの判断ミスと判断したがっていましたが、果たしてこれはパイロットミスでしょうか? 

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実は、着陸の際、R/W28(東側)を選んで着陸することは普通にあります。私の経験では半分以上がILSの無いR/W28でした。視界が広く、有視界飛行で問題ない場合、必ずしもILSは必要ありません。その場合、どちらを使うかは、横風の強さが問題となります。滑走路の両端で横風の強さが異なる場合、横風の弱い方をパイロットは選びます。横風が無い場合、追い風か向かい風かが問題となります。パイロットは当然、向かい風となる方角を選びます。 だから、視界さえ確保されているならR/W28を選んだことは非難される事ではありません。

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その昔、JAS(今はありません)のMD-80が花巻空港でハードランディングした時は、パイロットが敢えて横風の強い方から進入したことが問題視されました。

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そして、広島空港の場合、東京からの到着便では、東側から入る方が距離も短く、時間も節約できます。勿論、燃料も節約できます。まあ、韓国の仁川からの便ではそうはなりませんが・・。いずれにしても、R/W28を選んだことでパイロットが責められるのは、お門違いというものです。 しかし、そちら側を選んだために、虎の子のILSが壊れてしまったのですが・・・。

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ハードランディングの原因はいずれ明らかになり、責任の所在も明らかになるでしょう。その話は置いておくとして、問題は再発防止の為に何をすべきか?ということです。

すぐに思い当るのは、ILSを滑走路の片側だけでなく、両側で使えるようにすることです。沖縄の下地島空港ですら両側にあるのに・・と思うのですが、簡単ではないかも知れません。ILSはローカライザーとグライドパスという2種類の信号を出しますが、どちらも直進性の高い電波です。そして滑走路の先20Km程度まで電波を遮る障害物が無い事が必要条件になります。 海岸の滑走路では問題ありませんが、山間部の空港では障害となる山があり、ILSを設置できない場合もあります。

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そうなると、以前と同じように、R/W10(西側)しか、ILSは使えないかも知れないのです。しばしば視界不良が発生し、かつ気流は乱れ、ILSは片側しか使えない・・となると、なぜこんなところに空港を建設したのだ? と毒づいてみたくなりますが仕方ありません。

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では、私ならどうするか? まず私ならドップラーレーダーを設置します。これは竜巻やダウンバーストの発見に非常に有効です。 特に目に見えないダウンバーストを発見して警報を出すので、ある意味、空港の必需品だと思います。 既に世界中の多くの空港にドップラーレーダーが設置され、それによって多くの航空事故が防がれ、おそらくは相当数の人命が救われました。 ドップラーレーダーを開発し、警報システムを完成させたのは、シカゴ大学の教授だった日本人の藤田博士です。

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これが、日本の空港に普及していないのは、理解に苦しみます。日本の空港ではダウンバーストが原因の大事故は、まだ発生していませんが、発生してからでは遅いのです。もし、今回の事故について国土交通省の調査委員会の報告が、ダウンバースト原因説を取るなら、あるいは無関係の別の原因だったとしても、結論の中に、ドップラーレーダー設置の提言を入れて欲しい。 勿論、滑走路の東側も西側も監視する装置としてです。

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でも、広島空港の場合、ドップラーレーダーに警報が出まくって、連日全便欠航なんてことになったら困ります。その時は、広島空港は閉鎖でしょうね。 そうなったら私も、いさぎよく新幹線の人になる予定です。


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