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【 Espejismo 】 [映画]

【 Espejismo 】

今年、修士課程の1年になる私の長男が、ペルーに行くそうです。観光旅行かな?と思うと、指導教授の先生のお伴としての研究旅行だそうで、しばらく共同研究先のリマの大学に滞在する予定だとの事。

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「やれやれ、お金がかかるな・・・」と思ったところで、それを見透かしたように、「文科省の科研費から旅費と滞在費は出るから大丈夫だって」と家内が言います。それはそれで、ちょっと複雑というか、不愉快になります。

(僕の頃は、そんなに簡単に研究で外国に行くことなんて無かったなぁ)

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長男が専攻するのは、ナス科の植物の植物病理だそうです。 そしてペルーは、ジャガイモ、トマト、ナスといったナス科の植物の原産地であり、そこで研究するのは大変意味があることだそうです。

ふむふむ・・と聞きながら、私は再び複雑な思いに捕らわれます。私には植物病理は分かりません。

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子供達が幼かった頃、全ての面で、私は息子達に教える立場にありました。全ての知識に於いて、私は優位にあり、子供達が知っている事で、私が知らない事は無く、そして博学の象徴である父親の私が知らない事は、この世界に無い・・と子供達に信じ込ませる事に成功していました。 息子達が小学生だった頃です。

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それがいつの間にか、そうでなくなりました。子供達はポケモンの名前を多く知り、ゲームの攻略法を知り、アイドルタレントをたくさん知っていましたが、私は何も知りません。子供達は、私より知識が多い分野がある事を知って得意になりました。

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しかし、所詮、それらは遊びの世界や娯楽に関する事であり、大人の私は「そんな事はくだらん」と軽蔑する事が許された世界でした。 人格の裏付けとなる、一般教養・専門知識の面では、父親たる私には全く敵わないのさ・・とタカをくくっていたのです。

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でもそんな時代はあっという間に終わってしまいました。彼らが大学に入り、まがりなりにも、自分自身の専門分野というものを持つと、もう、そこは父親といえども、立ち入れない専門家の世界です。 学校の専門だけではありません。コンピューターなどのITの知識も、何時の間にか、息子達に追い越されました。

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「お父さんは、お前たちが生まれる前からパソコンを組み立てていたのだ。プログラムだって、Windowsの前のMS-DOSいや、その前のBASICFORTRANの時代から馴染んでいるのだ。お前たちに負けるものか!」と威張ってみても、スマホの使い方や、最新のCPUの知識などでは、息子達に後れを取り、教えてもらう側です。 家内などはパソコンの調子が悪くなると、私などは相手にせず、息子に相談して修理してもらっています。

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その昔、高橋和巳の小説「我が心は石にあらず」に登場した一場面を思い出します。大学で専門知識を身に着けてインテリとして帰郷した息子を前に、無学な父親が部屋の隅で、寂しそうに遠慮がちにしている場面です。

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とにかく、子供達に自分の専門ができて、その世界では、もはや私は父親として先輩風を吹かせることはできなくなったのです。 喜ぶべきか悲しむべきか…複雑です。

ここはダジャレでごまかすか・・。

「そうか、ペルーはナス科の植物のルーツなのか。確かにナスカの地上絵というのもペルーにあったしな」

「おとうさん、お願いだから、そのあまりにくだらない駄洒落だけは、ブログに書かないでね。これ以上ブログの品位を落とすと、読者がますます減りますよ」

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そこで、私は重要な事を思い出しました。

「そうだ、ペルーに行くのなら・・・(頼みたいことがある)

私は、実はこれまでペルーの映画を観た事はありません。スペイン映画をはじめとしたスペイン文化圏の映画は大好きなのですが、ペルーの映画を観た事が無いのです。

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スペイン映画には、ある種の特徴があります。 回想の場面が多く折り込まれ、時間が前後して、混乱する場合があります。そして独白や心の中のセリフが多用されます。

最初は、「ミツバチのささやき」や「エル・スール」で有名なビクトル・エリセ監督固有の特徴かと思ったのですが、そうではなく、アルゼンチン映画でも同様です。「娼婦とクジラ」や「ブエノスアイレスの夜」などが該当します。 だからペルー映画もそうだろうと思いますが、これを見る機会がありません。

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1972年のペルー映画「砂のミラージュ」は、傑作の誉れ高い映画です。しかし、この映画が公開された時、私は田舎の中学生で見ることができませんでした。そしてそれから40年経ちますが、まだその機会を得ていません。

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原題(Espejismo=蜃気楼) 邦題:「砂のミラージュ」は、仄聞するところでは、非常に幻想的な映画で、夢に登場する砂漠を走る男、誰もいないサッカーグラウンドでの友達の別れ、等、不思議な場面が連続するそうです。その中に男女の悲恋、地主と使用人の葛藤、貧しさゆえの故郷からの旅立ち、少年達の友情など、盛りだくさんなテーマが語られる、ある種奇妙な作品なのだそうです。

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この映画には、スペイン文化圏の映画のお約束の回想シーンもふんだんにあるようです。 これもスペイン文化圏映画の特長かも知れませんが、子役の使い方が上手だそうです。 それも主役だったり象徴的な使い方で登場するそうです。

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それとは別に、その昔、恋を引き裂かれた人の亡霊が現れる場面などは、ブロンテの「嵐が丘」を彷彿とさせるかも・・・と期待するのですが、観てみないと分かりません。

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You Tubeでは、「砂のミラージュ」の予告編や断片的なシーンを見ることができますが、本来、映画を観るのにYou Tubeを使うのは邪道です。だから、どこかにDVDかビデオテープが無いかな?と・・思っていたのです。

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息子がペルーのリマに暫く滞在するのなら、その間にDVDやビデオを探す時間もあるかも知れない。 「砂のミラージュ」もあるかも知れない。

外国でDVDやビデオを買い求める時に困るのは、以下の点です。

DVDならリージョンコードの不一致、ビデオなら、映像方式の違い(NTSCPALSECAM方式)それに、ビデオテープのタイプ(VHSかβ-MAX)の違いなどです。

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しかし、パソコンで視聴する前提なら、そして海外共通仕様のビデオデッキがあれば再生できます。 DVDであれ、ビデオテープであれ、日本に持ってくれば、何とかできます。 「砂のミラージュ」を手に入れたい。 最大の問題は、私がスペイン語を理解できない点ですが・・・、これもまぁ何とかなるでしょう。

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では、長男にお土産を頼もうか・・と思ったところで、家内の声がします。

「ペルー滞在中は、訪問先の大学に缶詰になって、研究漬けになるそうだから、街に出てお土産を買う時間的余裕なんて無いみたいよ。 だから、くれぐれも、変なお土産なんて頼んだらダメよ!」

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私にとって、なかなか見られない、このペルー映画は、本当にミラージュでしかないようです。


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西班牙

自己出差西班牙ba。
by 西班牙 (2015-04-02 09:01) 

笑うオヒョウ

西班牙様 コメントありがとうございます。
スペイン出張ですか・・・素敵ですね。このブログにも昔のスペイン出張の話を書いたことがあります。でも今の私には、とにかく自分の出張以前に、満足な製品を出荷することが、最大の課題です。
あまり詳しくは書けませんが・・。

またのコメントをお待ちします。勿論中国語のコメントも歓迎です。

by 笑うオヒョウ (2015-04-03 02:05) 

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