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【 カリフォルニア高速鉄道 その2 】 [鉄道]

【 カリフォルニア高速鉄道 その2 】

 

時速200Km以上で走行する高速鉄道で、一番の老舗といえば、日本の新幹線ですが、開業から50年経った今、世界には高速鉄道が乱立しています。そして、それらはそれぞれに特長を持っています。

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日本の新幹線といえば、超過密ダイヤの中で驚異的な定時運行性を誇り、かつ乗客死亡事故ゼロの金字塔を打ち立てたシステムですが、これがカリフォルニア州の求めるシステムかといえば、そうでもありません。

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カリフォルニアには、サンディエゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコといった大都市が並びますが、一つ一つの都市の人口は、東京、横浜、名古屋、京都、大阪にはとても及びません。当然、その間を移動する人の数も東海道新幹線の乗客より少なくなります。過密ダイヤと大量輸送を特長とする日本の新幹線方式は当地では必ずしも必要でないのです。

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余談ですが、大都市が接近して並び、新幹線型のシステムがふさわしいのは、中国なら、上海=蘇州=無錫=南京、或いは北京=唐山=天津、北米で言えば、東海岸のボストン=ニューヨーク=フィラデルフィア=ボルチモア=ワシントンから滝線都市へと連なる都市群ぐらいです。 ご承知の通り、上海=南京間、北京=天津間は中国版新幹線が走り、米国東海岸の路線にはフランスのTGVが採用されました。

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一方 フランスのTGVが売り物とするのは、大量輸送能力ではありません。飛行機に優る快適な乗り心地と時速300kmに及ぶ高速走行です。ライバルは飛行機です。

スェーデンのSJ2000/(X2000)、スペインのAVE、ユーロスターやタリスも同じコンセプトです。 ただ、SJ2000は独自の振り子電車にしていることや、スペインのAVETGVに似ているけれど、独自のタルガ式台車を使用している点など、国によって微妙に違います。

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それらとは違う、イタリアのペンドリーノは曲率の大きい山岳地帯のカーブを高速で走りぬけるのが特長ですが、カリフォルニアにはこの特長は必ずしも必要ありません。

そうなると、カリフォルニアの高速鉄道は、TGV方式がいい・・ということになってしまいます。 東海岸と同じように西海岸もフランスに取られる・・・事になるかもしれません。

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しかし、そこで考えるべきは中国の存在です。 中国には独自の車輌設計技術などはほとんどありませんが、安価に製造する技術や、驚異的な短納期で土木工事を仕上げる技術はあります。

実は新幹線のプロジェクトというのはハイテク技術の結集であると同時に、ローテクである土木建設工事の塊でもあります。 費用面でも、車輌やシステムの費用と同様に土木工事の費用が馬鹿にならないのです。

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広くて長いカリフォルニアで、全線を高架化したり、全てを立体交差にして、踏み切りをなくすには莫大な費用がかかります。しかし踏み切りを残したままでは高速鉄道になりえません。 そうすると、中国の鉄建公団のような組織の出番になります。無論、おから工事にならないように監督する必要はありますが、中国が持つ、青海=西蔵鉄道工事で発揮したような高度の土木技術を活用することには意味があります。

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中国のゼネコン(厳密には中国にはゼネコンと呼ぶべき会社はありませんが類似した業態はあります)を土木工事に活用し、レールの上の設備はフランスが請け負うというのが、もっとも良い選択でしょう。 それなら中国の鉄道が持つ知的財産面での懸念もありません。

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しかし、それだけで良いのか?

実はそう簡単ではありません。カリフォルニアは、日本同様、あるいは日本以上に地震の多い地域です。過去に何度も大地震で大きな被害を出しています。

そして、TGVICEも中国版新幹線も地震に対する備えは全くありません。世界で唯一、大地震でも怪我人を出さなかったという実績があるのは日本の新幹線だけです。

阪神淡路の大震災では、始発電車の発車前だったので参考になりませんが、新潟の中越地震でも怪我人を出さず、東日本大震災でも犠牲者を出していません。

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特に東日本大震災では、沖合いの地震計から緊急地震速報を感知して自動で急ブレーキをかけ、東北新幹線は急停止したのです。 

あの大震災では、甚大な被害を出し、あまつさえ原発の爆発までが発生し、日本の科学技術が全て敗北したかのようなみじめさを味わいましたが、東北新幹線の急停車は、隠れた快挙であり、地震対策の勝利でした。ほとんど報道されませんでしたが。

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カリフォルニアの場合、相当数の地震は、世界最大級の活断層であるサンアンドレアス断層付近で発生します。 したがってその周辺に地震計を置いて、緊急速報を出すシステムは、極めて有効です。 (サンフランシスコ大地震のようにそうでない場合もありますが・・)

このシステムは、カリフォルニア高速鉄道には不可欠であると同時に、日本だけが実績を持つものです。

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これを売り物にしたら、日本の新幹線が受注する確度は非常に高くなるのですが、なぜかその話を聞きません。 これは、日立や川重、日本車輌という車輌メーカーではなく、鉄道総研やJR各社が持つノウハウであり、日本政府やJRが売り込みを図るべきものなのですが、その動きが見えません。

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このままではフランスのTGVと中国の土建屋に、カリフォルニアの高速鉄道が取られてしまい、その挙句、地震が発生したら極めて危険な電車に人々は乗らなければならないことになります。 だから何とか日本の新幹線の地震対策技術を売り込みたい。

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でもね、多分日本人のメンタリティとして、国家の悲劇であった、東日本大震災を商売の売り込みの道具には使いたくないな・・という気持ちがあるのでしょう。

おそらくアメリカ人にもフランス人にも中国人にも分からないでしょうが・・・。

また、311日がやってきます。


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