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【 AIS情報を開示せよ 】 [広島]

【 AIS情報を開示せよ 】

 

マスコミがセンセーショナルに取り上げてきた話題や事件の追究記事が、ある日突然ピタリと止むことがあります。その理由は伏せられますが、概ね2種類の理由があると考えられます。

 

1.マスコミが無視できない、権力を持つ団体または個人から圧力があった。

2.マスコミが誘導しようと思った方向と違う結論が予想され、都合が悪くなった。

 

ひとつひとつの事例を挙げるときりがないのですが、最近では海上自衛隊の護衛艦と釣り船が衝突した事件が該当します。

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具体的には、昨年(私が広島に来る少し前ですが)、海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」と遊漁船(釣り船・・と言いますが、本当はプレジャーボートでした)の「とびうお」が衝突し、とびうおが沈没し、2名が亡くなられた事件です。

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海上自衛隊の護衛艦または潜水艦が民間の船舶と接触・衝突する事故は時々あります。その中で、死者が発生したものを列挙しますと、

 

1963年(昭和38年) 

護衛艦「てるづき」と貨物船「賀茂春丸」が衝突

少年自衛官など自衛隊側に5人死者がでています。

 

1988(昭和63)  

潜水艦「なだしお」と釣り船「第一富士丸」が衝突

釣り船が沈没して釣り客約30人が犠牲になりました。

この事故の責任は双方にあり、特に回避義務は釣り船側に多くありましたが、マスコミは、潜水艦側の責任だけを追及しました。

 

2008(平成20)  

イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が衝突し、清徳丸が沈没し、乗組員2名が亡くなりました。この時も双方に見張り義務と衝突回避義務があったのですが、マスコミは自衛隊の責任のみを追及し亡くなった若い漁船員は英雄になりました。

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そして、2014年の輸送艦「おおすみ」と遊漁船「とびうお」の事故です。この事故でも非難の対象になったのは自衛隊の艦船です。

事故の原因究明がなされていない段階では、どちらに責任があるかは判断できない訳ですが、NHKの大越キャスターは「衝突の直接の原因とは別に、自衛隊側が本来的に持つ責任がある」という奇妙な理屈を展開しました。彼の説明は明確ではなく、彼の主張が、軍用艦船は本来民間の船に進路を譲りその安全確保と保護に努めなければいけない・・という理屈なのか、大型の艦船は小型の舟艇に注意して配慮する義務がある・・という考えなのかは不明です。

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しかし、民放各社の報道は後者でした(表向きは)。 空母と間違えるような大型艦である「おおすみ」を「こーんなに大きいんですよ。小さい釣り船なんて当たれば木っ端微塵ですよね。 当然、見張り義務と衝突回避義務は『おおすみ』側にあった訳で、悪いのは自衛隊ですよ」という主張です。

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これに類した意見は、「あたご」の衝突事故でも「なだしお」の衝突事故でも聞かれました。 ちょうど道路交通法において、自動車は交通弱者である歩行者や自転車の安全に配慮し保護する義務があるという発想に似ています。 ひたすら艦の大きさを強調して、非難されるべきは大型艦の方だというのですが・・・

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実は全くそれと逆の主張をマスコミがしたことがあります。それは1971年に岩手県雫石の上空で発生した全日空機と自衛隊機の衝突事故です。 航空自衛隊の飛行訓練生であった市川二曹が操縦する、朝鮮戦争時代の骨董品というべきF86戦闘機に、優速であった全日空のB-727旅客機が追突する形で発生した空中衝突です。この事故では、自衛隊側は脱出し、全日空側は墜落して全員が死亡しました。

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多くのマスコミは航空路を飛ぶ大型(というほどではない)旅客機に、機敏に障害を回避する機動性は無く、当然自由に動き回れる小型戦闘機の方に見張り義務と回避義務があったと主張し、悪いのは自衛隊側だ・・と断定的に報道しました。

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最終的に、裁判では双方に見張り義務があったが、より多くの責任は自衛隊側にあったとして、指導教官の隈一尉は有罪となりました。衝突防止警報装置が無かった時代、旅客機側が衝突回避を行うのは難しかった訳で、個人的には概ね妥当な判決だと思います。 

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それはともかく、結局、マスコミは、艦船や航空機が大きかろうが、小さかろうが、悪いのは自衛隊側だ・・という結論にしたい訳で、それは技術論ではなく反自衛隊のイデオロギーから来るものなのです。とにかくマスコミは技術論で自衛隊を悪者にしようとします。

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広島県の海で発生した「おおすみ」と「とびうお」の衝突事故でも、多くのマスコミは自衛隊側の非をならしました。救助された釣り船の乗客の、自衛艦側が違法な操舵を行って釣り船に衝突したという証言や、第3の大型船舶が近くを航行して、釣り船の自衛艦への接近はやむをえなかったという主張を全面的に採用しました。 しかし、操船していた訳でもない、ただの乗客の老人の証言には限界があり、その内容も矛盾が多かったため、説得力に欠けていました。

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自衛艦やその他のレーダー記録を調べると、第3の大型船など存在せず、虚偽の証言であることがすぐに判明しました。

すると今度は朝日新聞が、GPSの記録を調べよ!と主張しました。

http://www.asahi.com/articles/DA3S10937854.html

飛行機のブラックボックスと同じように、沈没船からGPS装置を回収して、航跡を解析せよというものです。 レーダーの記録もGPSの記録も自衛艦側のデータはありますが、それは信用できないということでしょうか?

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しかし、その後、ピタリと各マスコミはこの衝突事故の報道を止めました。 それはAIS情報が開示されたからです。

http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_jiko-ship-oosumi20140118j-02-w310

http://ameblo.jp/bangkokoyaji/entry-11754140948.html

これは第三者機関が、レーダーで得られる海上の船舶の識別や位置、進路などを記録し、図示できるシステムで、船舶衝突などの海難事故の原因と責任の調査では抜群の威力を発揮するものです。

多くのマスコミは、当初AISの存在を知らず、生存者の証言やGPS情報で自衛艦の責任を追及できると思っていたのですが、AISによって釣り船側の主張が全て覆される事が分かったのです。

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その日からNHKをはじめ、全てのマスコミはこの衝突事故の報道を止めました。それから約1年、海難審判の結果が出ました。

主たる原因は、左側にあった釣り船側の操船ミスと判断された訳です。

これは、相手を右側に見る船(つまり左側の船)に衝突防止または回避義務があるという規則に基づくもので、この事故では、釣り船側にその義務がありますが、それに反して釣り船が右旋回したことが、直接の原因と判断されたのです。

ずっと沈黙していたマスコミも海難審判の結果は報道せざるをえませんでした。

そして、朝日新聞は、「右転はありえない・・」という釣り船側の証人の意見を見出しに掲げました。

http://www.asahi.com/articles/ASH293J2RH29UTIL00B.html?iref=com_alist_6_01

関係者の証言ではなく、客観的なGPSデータを使えと言っていた朝日新聞は、逆にAIS情報を信用せず、釣り船側の証人の意見を全面的に支持するというのです。

でも、この証人は、ありもしない第三の大型船の存在を主張し、信ぴょう性に疑問を持たれた人物です。はっきり言って無茶苦茶です。

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今、海難事故では、AIS情報とレーダー画像の記録、そしてGPSの航跡情報の3つの証拠が強力な証拠能力を持つ時代になっています。利害関係がある証人の水掛け論の時代ではなくなったのです。

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事故があれば、何としても、自衛隊を悪者にしたいというのが、いわば左派系マスコミのエトスですが、悲しいかな理論武装が足りません。AIS情報を知らないまま、自衛隊に責任があるというキャンペーンを展開しましたが、覆されました。 そして報道自体をストップしました。 その中で理屈も客観証拠も無視して、無理筋をおす朝日新聞はある意味見事ですが、もう賢明な読者には通じません。特に自衛隊や瀬戸内海に詳しい呉市民からは嗤われるだけです。 そして、次にマスコミが何らかのキャンペーンをして、それが突然パタリと止まった時、多くの読者はその背後に何があるのかを探ることになります。 新聞の新しい読み方の始まりです。 


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