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【 segregationとdiscrimination 】 [アメリカ]

【 segregationdiscrimination 】

シカゴのオヘア空港から都心に向かって高速道路を走っていると、屋根に赤と白の2段の旗を描いた屋根が目に入ります。「あれは何か?」と尋ねれば、そのあたりはポーランドからの移民が集まって暮らす町だとのことです。

20世紀にあった2つの大戦とその前の混沌の時代に、多くのポーランド国民は迫害を受け、国を逃れ、遅れてきた移民として米国で暮らし始めました。ナチスドイツの侵略の際、米国へ逃れた一人の女性を描いた映画に「ソフィーの選択」があります。

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移民の国、米国でも、やってきた順番によって民族の地位や強さが違います。最強のWASPと呼ばれる、白人・アングロサクソン・プロテスタントが最上位に君臨し、白人といえども、遅れて来たポーランド人は弱者であり、肩寄せ合って生きることになったのです。

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インターステーツ90号線から見える屋根に描かれたポーランド国旗は、彼らなりの「祖国へのマズルカ」なのですとAさんは言いまず。シカゴに暫く暮らせば分かります。ポーランド人だけでなく、多くの民族が別れて暮らしています。ユダヤ人が集まる地域、アフリカ系の人が集まる地域、そして有名なチャイナタウンは目で見て分かります。

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「でも日系人は集落を作りませんね?」

その質問に答えたのは、シカゴ事務所の日系人秘書のキムさんです。

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「戦前はカルフォルニアには日系人が集まる街があったけれど、戦後に強制収容所を出た後はバラバラに分かれたのよ。リトルトーキョーにはもう日系人はいないの。それはね、日系人が強い民族だから。強い民族は群れたり、集まったりしないの」

世界中から多くの民族が集まる国ですが、人々が暮らし始めると、同じ民族、宗教、文化で、人々は集団を作るようになります。ニューヨーク、シカゴといった大都市では地域や街区で分かれることになります。

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これは、discrimination(人種差別)ではなく、segregation(偏析)です。人々は隔離される訳でも居住制限を強いられる訳でもありませんが集団を作ります。特に弱い人ほど集まります。しばしばその方が快適で安全で生活が楽だからです。

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実はこの傾向は、旧大陸の都市ではもっと顕著です。 中国の西部、例えばウルムチでは漢民族とウイグル族が住む街区が明確に分かれています。西安も同様です。

欧州はもっと強烈です。スペインの有名な観光地トレドでは、交差点に標識があり、ここから先はイスラム教徒の町、こちらはユダヤ教徒の町、こちらはカトリックの町という具合に明示されています。

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パリで地下鉄が不通だった日、試しに路線バスに乗ったら、不思議な街に連れていかれたことがあります。 窓の外は、アフリカ系移民の姿ばかりで、お店も北アフリカの町の店のようでした。 偶然、アフリカ系移民が暮らす街を通ったのです。

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ドイツの町でもトルコ人やセルビア人が暮らす地域は決まっています。 ロンドンもアフリカ系、中東系、ユダヤ系の人々が集まる街が分かれています。 それは差別ではなく、暮らしの知恵というべきものです。

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その事に我々が鈍感なのは、多民族国家とは言えない島国の日本に暮らし、かつ「強い民族」であり、排他的な宗教を信じる人が少ない、日本人だからかも知れません。でもその日本でも新大久保や鶴橋のコリアンタウンを見ていると、日本も同じだ・・と思います。在日コリアンはやはりマイノリティであり、弱い立場にあるのだ・・と理解できます。日本ではなかなか分かりませんが、外国に暮らせば自明のことです。

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日本人だって外国で暮らせば肩身の狭い思いをすることがあります。

秋刀魚を焼こうとすれば、煙と臭いが、ご近所迷惑だと言われたり、庭の芝生にタンポポが混じっていたら、だらしないと非難されたり・・、経験はありませんが、クジラの大和煮の缶詰なんか持っていたら大ヒンシュクでしょう。 でもこれは人種差別でも日本人蔑視でもありません。 しかしまあ、日本人同時がお隣さんで暮らしている方が気楽なのも事実です。

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だから、人種または「生活習慣の違う人間が一緒に住むことは難しい」と作家曽野綾子は産経新聞に書きました。

http://blogos.com/article/105733/

このコラムに対して、すぐに反対意見が登場し、ネット上では「炎上」が起きました。

アパルトヘイトを容認するものだ・・ということで怪しからん・・というものです。

朝日新聞も検証する形で反論を載せています。

http://www.asahi.com/articles/ASH2J5SYDH2JUTIL04H.html?iref=com_rnavi_arank_nr05

NPO法人 アフリカ日本協議会なんていう怪しげな組織からも抗議が届き、ついには駐日南ア大使からも抗議文が届いたそうです。

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違う人種は分かれて暮らす方がよい=人種隔離政策

人種隔離政策=アパルトヘイト

アパルトヘイト=怪しからん糾弾すべきもの

→ 曽野綾子は怪しからん

という3段論法のようですが、「分かれて暮らす方がよい、移住だけは考えるべき」という表現が、人種隔離政策容認という内容に飛躍したのですから、3段跳び論法と言うべきです。

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アパルトヘイト容認と、生活習慣の違う人は分かれて暮らす方がいいというのでは天と地ほど、意味が違います。 はたして駐日南ア大使は日本語で曽野綾子のコラムを読んだのか?といぶかしく思いましたが、ああ、なるほど、ニューヨークタイムズが英訳して全世界に発信していました。 

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ひょっとしてまた大西記者かな?あのエボラ出血熱と間違われた・・・。 ニューヨークタイムズの日本支社は、築地の朝日新聞社に居候して、反日キャンペーンに使えそうな記事や日本の保守派を糾弾する記事を集めて英訳して世界に発信するのが仕事です。彼らの英訳なら相当誇張した表現になっているかも知れない・・。私も原文が見たい・・。

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悲しいことですが、外国の新聞が日本に関する記事を書く場合、何時も正確とは限りません。 また日本語の記事を翻訳する際も、実にいい加減です。政治的な意図が反映される新聞ならそれも仕方ありませんが、報道の自由を標榜するくせに、わざと偏ったり間違った記事を書く新聞社があります。ニューヨークタイムズはその一つです。

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曽野綾子氏は、チャイナタウンを例に出して、人種差別とは無関係な場合もあるではないか・・と言いますが、これも少し説得力に欠けます。

世界中にチャイナタウンがありますが・・(正確には中国と台湾にはチャイナタウンはありません)、その多くは商業上の利便性から、ショッピング街として存在するものです。つまり秋葉原に電器屋が集まったようなものです。

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居住地域としてのチャイナタウンも勿論ありますが、米国の西海岸の場合、それらは以前は、幾らか差別的な目で見られていました。映画「チャイナタウン」では、白人が入り込めない混沌の世界として描かれています。だからチャイナタウンは人種差別とは無縁とも言えないのです。

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むしろ、反論するのなら、ニューヨークタイムズの母国アメリカには、民族ごとの居住地域の偏析(segregation)は無いのか?と質すべきです。そしてそれがあるなら、それを認めているのか非としているのかを明らかにしてから反論せよ・・と言うべきです。

南アに対して反論するなら、今のヨハネスブルグで白人居住区と黒人居住区が依然として分かれているが、それを認めるのか?それはアパルトヘイトの残滓ではないのか?と尋ねるべきです。 それを便宜的な存在として認めるのなら、曽野綾子氏の主張に反論する資格はありません。

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偏析(segregation)とは本来エネルギーとエントロピーで説明できる現象です。分かりやすく言えば、あるがままに放っておけば、時間の経過とともに自然に進行する現象です。人間社会では、人々が普通に暮らしやすくなる方向に事態は変化します。それがエントロピーの増大であり、偏析の進行です。 それは、憎しみや敵意が原動力となる人種差別(discrimination)そしてアパルトヘイトとは、別の現象です。

私は曽野綾子氏が言いたかったのは、単にそれだけのことだと思います。

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それをアパルトヘイト容認と曲解し、保守派論客の攻撃のきっかけにしようというのは、ちょっと短絡的です。 うーむ・・何がいけないのか? やはり新聞記者やツイッター、フォロワーの人達が、エネルギーとエントロピー、そして偏析現象について無知だからなのかな? 私も実は詳しくないけれど・・・。


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