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【 乱流の時代 その1 】 [鉄鋼]

【 乱流の時代 その1 】

 

通勤のラッシュアワーに駅のコンコースやホームの階段を歩きながら考えます。

「最近、人々の歩く速度が揃わなくなったな・・・」

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駅や人通りの多い道では、通勤の混雑時に、何となく人の流れができ、歩く速度も何となく揃い、その流れに沿って歩けば、他人ともぶつからず、やがて決められた時間で目的地に着くという段取りです。歩く速度はその場の雰囲気で何となく決まります。

関東と関西で、人の歩く速度が異なるという話もありますが、東京では歩く速度は概ね一定です。

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それが最近揃わなくなってきたのです。通勤通学者はまちまちの速度で歩き、しかも突然変化したりします。人とぶつかりそうになる事もあります。 先日も電車から降りたその瞬間に、前を歩く人が速度を落とし、危うく背中に追突しそうになりました。どういうことか?とその人の様子を見ると、彼女はスマホの画面を見つめています。なるほど、だから急に歩速を下げたのか・・。

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なるほど、歩きながらスマホを見ようとすれば必然的に速度を落とすか立ち止る必要がありそうです。どうやら、流れの速度と違う速度で歩く人は、ゲームをしている人かスマホを扱っている人に多いようです。

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人々の歩く速度が揃わなくなり、人の流れが乱れるようになった理由は、私の観察する限り、以下の3つの理由です。

1.     スマホや携帯電話、ゲーム機などを操作あるいは見ながら歩く人が増えたこと。

2.     キャスター付きのキャリーバッグを引っ張る人が増えたこと。

3.     外国人の増加。

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1については、単に遅くなるというより、周囲に気を配らなくなったため、周りの‘場の速度’が読めなくなったことが原因かも知れません。そしてこの問題は単に歩く速度の問題だけではありません。

2の、キャスター付きのキャリーバッグも、明らかに人々の流れを乱す要因です。これが空港のロビーのように、キャリーバッグを引っ張っているのが当然・・という環境であれば、理解を得られるのですが、ラッシュアワーの駅ではまだ市民権は得られず、邪魔者になっています。

3の外国人については、表現が難しいのですが、まだ日本の(首都圏)のラッシュアワーのスタイルに慣れていない人が周囲の人と違う速度で歩いてしまうというのはある意味で当然です。 ちょっと人の流れと違う動きをしている人を見ると、日本語ではない言葉で話していたりします。

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実は流れが乱れているのは、駅を歩く人々だけではありません。高速道路の車の流れも、数年前から、様子が変わってきました。 一つの理由は大型車の速度が遅くなってきたことです。 この理由の一つは、多くのトラックやバスがタコグラフを装着し制限速度を厳密に順守するようになったことです。大型車と乗用車の走行速度に差ができ、両者が同じ走行車線を走るために、乱れが生じています。

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本来、安全速度または運転者が余裕を持って運転できる限界速度とは、

1.     道路状況 (気象条件、時間帯等も含む)

2.     車両性能 (タイヤの空気圧や、摩耗状況、車両整備状況も含む)

3.     運転者の技能 (健康状態なども含む) 

で決まります。

そして、一般的には、道交法での制限速度は、安全速度の最大公約数を少し下回る値を設定します。

この発想は国によって違い、中国は安全速度の上限に制限速度を定め、日本はかなり低めに設定し、米国はその中間です。 ご承知の通りドイツでは制限速度は一部の区間にしか設定しません。

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制限速度は道交法で決められますが、安全限界速度はドライバーの感覚で決まり、その結果、流れの速度は道交法の制限速度より少し速くなります。意図してスピード違反をしようという訳ではないのですが・・・。高速道路には制限速度を少し上回る速度で安定した流れができ、その速度で走る限り、安定した運転が可能でした。

しかし、最近のタコグラフを装着した大型車は、制限速度を厳格に守って走ります。これは大型車の運転手が順法精神に目覚めたからではなく、速度記録が残るため、速度超過をすると、会社で罰せられるためです。 

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その結果、乗用車と大型車で速度の差が生じ、高速道路の流れには乱れができます。

タコグラフの装着によって、むしろ、昔より危険になったのではないか?そして全体としての流れは遅くなり、高速道路の輸送効率は低下したのではないか?

私はそう思います。

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流れの中に速度の違いができるのは困ったことです。流れの直角方向に速度差がある場合、その速度差の極限値を求めた値をrot(ローテーション)またはcurl(カール)として、渦度を示します。 その渦度が大きくなれば、流れは層流から乱流になります。

つまり隣接した流れとの速度勾配が大きければ渦が生じ、全体の流れは乱流になります。流れを研究してきた人にとって、これまでずっと、乱流とは厄介な存在でした。

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なるべく、多くの流れは層流であれかし・・と人々は祈ってきたのです。でもこれからはそうはいきません。 世の中は乱流に溢れ、そして乱流は認知されつつあるからです。

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慶応大学の機械工学科の下郷太郎教授は、いろいろな実験や計測をする度に、「すべての現象が線形でありますように」と祈ったそうです。それは当然ながら、線形であるほうが、解析的に研究しやすいからです。非線形の微分方程式となると、一部の特殊な例を除いて、解析的に解くことはできません。

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一方、流れを研究する人は、「すべての流れは層流であって欲しい」と祈ったはずです。下郷教授の場合と同じく、乱流は複雑で解析解が求められないからです。

飛行機の研究をする人は、翼の周囲の流れが層流であることを前提とします。層流の元で、揚力や抵抗値を計算します。 もし翼端で乱流が生じたり、翼の上面で流れが剥離すると、揚力を失い、制御できなくなります。これが、飛行機の失速です。

航空機の研究者は乱流を忌避しました。

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それが・・・・何時の頃からか、乱流を歓迎するようになりました。むしろ高い運動性を求められる戦闘機などでは、意図的に気流を乱して機敏な動きを可能にしたりします。

これはどういうことか?と考えると、スーパーコンピューターが登場し、数値解析技術が進歩したからです。

 

以下 次号


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