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【 新規住宅着工件数とは? 】 [雑学]

【 新規住宅着工件数とは? 】

 

英国でちょっとした住宅バブルが発生しています。低金利政策のおかげで、住宅の購買意欲をそそられた中間所得層が住宅を買いだしたのがきっかけで、住宅価格が上がっているそうですが、これまでも英国の住宅価格は上がったり下がったりしてきました。

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ある人は、住宅着工件数の増加が景気を刺激し、景気を回復させる材料になると言い、ある人は景気が良くなった結果、人々の所得が増大して住宅需要が増えるのだと言います。

住宅着工件数の増加は確かに景気が良くなることと関係があるのですが、原因と結果という観点から見ると逆の意見です。

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昔、物理学の授業でひとつの寓話を教わりました。

風に木々の葉が揺れているのを見た子供が、

「木の葉っぱが揺れて風を起こしているのだね?」と親に尋ねました。無論、事実は逆で風があるから木の葉がなびいているのですが、それをどう説明すればいいのか?

親は悩みました。樹木には筋肉が無いから葉を動かせない・・などというくだらない説明はできません。 それなら木々を動かす風は誰が起こすのか?という説明も必要になります。一つの現象について、どちらが原因でどちらが結果かを明確にすることはしばしば簡単ではありません。

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政府が景気刺激を意図して、住宅取得減税を行ったり、低金利政策や住宅取得促進政策を行ったのなら、住宅バブルは原因の方で結果ではないかも知れません。

英国の場合、人口は日本より少なく、新規着工件数も少ないのです。人々は父祖の代から暮らす家をリフォームしながら住み続けます。人々が必ず自分の代に一軒マイホームを建てるなんて発想はありません。それに例えばチェスターのような古い都市は中心街区が景観保存の対象であり、新しい家は建ちません。もともと英国は住宅市場が小さいので、少しの需給バランスの変化で価格が上下し、バブル・・となる訳です。それなら英国では、新規住宅着工件数は、経済指標としてあまり意味がないのかも知れません。

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一方、米国では違います。米国でも住宅の寿命は日本よりは長く、2世代、3世代に亘って住居として使う建物が普通です。でも米国の人口も増え続けており、新しい住宅の需要は常にあります。住宅が欲しいのに、国民の貯蓄水準は低く、しかも所得も伸びない中で、庶民は条件が不利なローンに頼ります。しかも米国では好景気の度に投機目的で住宅を買う人々がいます。本質的に米国はバブル大好きの国柄です。その結果、サブプライムローンという怪しげなローンがはびこり、バブルが弾けたとたんに世界経済を混乱させました。

だから、米国では景気の好況判断の材料として、そしてバブルの膨らみ状況を判断するうえで、新規住宅着工件数は非常に重要です。

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では中国ではどうか?この国は国そのものがバブルです。人々は投機を好み、労せずしてお金を儲けることを最上の行いとします。衣食住を含むすべての財産は投機の対象になりますが、不動産はその中で投機に最も適しています。それに加え、長らく計画経済だったこの国には、過剰在庫の概念とか需要に見合った供給を正確に予想するという考えがあまりありません。つまり、この国では住宅着工件数はバブルの指標としては最適ですが、本当の経済実態を表す指標と言えるかどうか分かりません。そしてもう一つ言えば、中国政府の発表する経済指標を本当に信用する人は誰もいません。

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それに比べれば、日本の場合、新規住宅着工件数は適切な経済指標と言えます。今年末から来年初頭にかけては、消費税増税前の駆け込み需要が予想されますが、それ以降は経済実態を表したものになるはずです。日本もかつて高度成長期やバブルの時代を経験し、住宅価格が高騰した時代がありました。しかし、今は比較的に安定し、経済実態に応じて、住宅需要も増減します。マイホームを購入する若い人々の人口は減少傾向ですが、各世代がそれぞれ新しい住宅を建てねばならない特殊な日本の事情により、潜在的な住宅需要は常に旺盛です。

日本の住宅着工件数は、英国よりも、米国よりも、中国よりも信用できる経済指標だと私は思います。

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そんな事を考えていたら、今年のノーベル経済学賞の受賞者が決まったとのニュースが入りました。 エール大学のロバート・シラー教授をはじめとした合計3人の米国人学者です。経済学では世界トップクラスと言われるシカゴ大学の研究者もいます。シラー教授は「S&Pケース・シラー住宅価格指数」を提案し、バブルと住宅価格の高騰の関係を研究した人です。アメリカならではの受賞だと思いますが、どうせならサブプライムローン問題が発生する前に予見し、予防対策を提案していたら、もっと、多くの人を幸せにできたのにな・・・と私は思います。

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本来、ノーベル賞は、人々を幸せにする発明や研究をする人が貰うべきです。

自然科学系の賞と平和賞、文学賞は確かに人々を幸せにする賞ですが、経済学賞はどうもそうではないように思えます。なんというか評論家が貰う賞です。

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日本人はなかなか経済学賞が貰えないけれど、賞の対象が人々を幸福にする研究でないのなら、貰えなくても不名誉ではないな・・と、考えます。

でも待てよ?そもそも、各世代が皆マイホームを建てなければならず、その為に生涯賃金の10%以上も費やさなくてはならない、日本の社会は本当に幸せなのだろうか?

先祖代々の家に暮らし、新しい家なぞ建てなくても、幸福に人々が暮らす英国の方が、ずっといいのではないか? 新規住宅着工件数は少なくて経済指標は劣るかも知れないけれど、幸福度は別物だ。

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そういえば、世界一の幸福度指数を誇る? ブータンの新規住宅着工件数はどれくらいなのだろうか? と私は思いました。


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夏炉冬扇

今晩は。
イベント終わってやっと始動です。
by 夏炉冬扇 (2013-10-15 18:53) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様

コメントありがとうございます。イベントお疲れ様です。
こちらは台風で電車が動かず、久しぶりに会社に遅刻してしまいました。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2013-10-17 06:01) 

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