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【 中国の膨張主義 その2 】 [中国]

【 中国の膨張主義 その2 】

 

米国には「ナショナルジオグラフィック」誌という、世界の自然や地理を紹介する素晴らしい雑誌があります。最近では日本語版もありますし、ナショナルジオグラフィックTVとして、TV放映もされているので、おなじみの方も多いと思います。 この雑誌があまりに優れているので、これを模倣する雑誌も多くあります。かつて日本では東大教授を退官した竹内均教授が、「こんな雑誌を作りたいんだよ・・」といって、「ナショナルジオグラフィック」を出版社に持ち込み、一般向けの科学解説雑誌「Newton」の発行を実現させました。

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中国にも、ナショナルジオグラフィックとそっくりな雑誌があります。それが「中国国家地理」で、表紙の四角の枠が黄色でなく赤色である点が違うだけで、その構成や記事の内容は似ています。書店には「ナショナルジオグラフィック」の中国語版と、「中国国家地理」が並んで置かれており、私は、見かけた時は両方を買うことにしています。

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どちらも、内容に優れ、興味深い記事が書かれているのですが、決定的に違う点があります。 それは「ナショナルジオグラフィック」があくまで米国の雑誌を中国語に訳した中国語版なのに対して、「中国国家地理」は中国で編集された雑誌で、中国政府の意図が盛り込まれているということです。(ナショナルジオグラフィックも検閲は受けています)。

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当然、「中国国家地理」には、中国政府の主張やプロパガンダが盛り込まれており、自国の正当化の手段に使われています。 昨年、突如として外国と所有権を争う係争地の特集が登場するようになりました。 日本の尖閣諸島も表紙を飾りましたが、それだけではありません。

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ベトナムやフィリピンと問題を抱えていることは周知のとおりですが、ロシア、韓国、北朝鮮とも国境問題を抱えており、日本との問題はそれらの一つにすぎません。

中国が日本とだけ関係を悪化させ、責任の一端が日本側にもあるように思わせるのは、日本の譲歩を引き出すための作戦です。

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驚いたことに、「中国国家地理」では、本来あるべき国境線というものを地図上に示すようになりました。下図で図中にある黒い枠は本来かくあるべきと、中国が考える国境線です。現実の国境線と、黒い枠の間の白抜きの空間は、本来あるべき中国の領土で、今は外国に不当に占拠されている・・という訳です。

中国国家地理03s.jpg 

それを見ると、日本だけでなく、ロシア、カザフスタン、タジキスタン、キルギスと多くの国の領土を自分のものだと主張していることになります。私が見たのは「中国国家地理」だけですが、小中学校の教科書(もちろんかの国は国定教科書です)にも、この自分勝手な地図が掲載されているそうです。 教科書の趣旨は、本来中国の国土であるべき土地が、外国によって奪われている。何時かは取り返さなければならない・・というものだそうです。

中国国家地理02.jpg

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この事は、周辺諸国で大問題になりました。特にロシアは150万平方キロという日本の国土の4倍という広い面積を、中国から奪い、不当に占拠していると名指しにされ、大いに驚きました。

以下は、他のメディアからの伝聞です。私が自分で確認した訳ではありません。

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ロシアは早速外交ルートで抗議し、中国政府の責任者をモスクワに呼びつけました。その時の中国の係官の弁明は、以下の通りです。

「中国国内にいる国粋主義者達をなだめるために、本来の中国の国土をもっと広いと説明せざるを得なかった。今、特にロシアに領土返還を求めるものではない・・」という苦しいものだったそうです。でもそれでロシアが納得するとはとても思えませんが・・。

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実は、ロシア/旧ソ連と中国は長い間、国境問題を抱えていました。しかし、プーチン大統領の時代(1期目)に、両国は国境線の線引きで合意に達し、紛争は解決しました。 日本人の私からみると、その内容は、ロシア側が大きく譲歩したもので、中国が得したように思えます。 

おそらくプーチンの頭の中では、『中国には譲歩するという考えがないから、合意するためには、ロシア側が譲らねばならないが、それで和平が得られるなら、安いものだ。多少の譲歩は仕方ない・・』という計算が働いたものと思います。 これは多くの国が、領土問題を経済的な損得の枠の外に置き、国家主権に関わる譲れない問題としているのとは違う判断で、独裁的な権力を持っている指導者のみができる決断です。

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その時、「プーチンが領土と経済的損得を天秤にかけられる男なら、北方領土問題も解決の可能性があるな!」と私は思いました。 そして「中国は得をしたな・・・」と私は感じました。 ああ、それなのに中国はロシアとの合意を反故にし、極東シベリアの国土を自分達のものだと主張し始めました。 プーチンの心中やいかに?

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この問題を理解するのに必要な、中国人の2つのポイントがあります。

 

1.約束や契約は未来永劫のものではない。

 中国人は契約に於いて効力が未来永劫続くという感覚を持ちません。

 その時、その場で両方にとって都合がよければ契約を結ぶし、片方の都合が悪くなったら破棄します。契約に縛られて不自由や不都合を蒙るのは御免という訳です。

2.国境線に歴史的な根拠は不要で、その時その時の地政学的なバランスで決まるもの。 その国の経済力と軍事力が大きければ国境線も移動して国土は拡大し、逆に弱くなれば、押し込まれて小さくなるもの・・・という認識です。

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実際、昔から中国は外国に攻め込まれたり、攻め込んだりして、国土は小さくなったり大きくなったりを繰り返しています。 歴史的な根拠を持ち出して自国の領地であると主張したり、非合法に侵略された土地だから返せという要求は彼らにはナンセンスです。 かつてネルチンスク条約や北京条約で、中国とロシアの国境線を確定した中国ですが、その後、経済力と軍事力が増大したので、昔の条約を反故にして見直そうと彼らは考えています。

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しかし、中国国内の理屈はそうでも、対外的には通用しません。

でっちあげでも、隣国の領土が自国のものであるという正当な証拠を出さなければなりません。中国の場合、さまざまな理由を示します。

1.かつて冊封体制に組み込まれていて、中国の属国であった。

  あるいは朝貢をした歴史があり、中国に恭順の姿勢を示していた。

2.漢字文化を含め、中国の文明を受け入れていた。

3.島国の場合、中国大陸から続く大陸棚の延長上にあり、中国の延長上と

考えるのが合理的。

4.かつて多くの中華民族が暮らしていたが、正当でない理由で追い出された。

 

1.と2.は伝統的な東アジアの中華思想によるものです。

 

ロシアとの国境については4.を主張し、尖閣諸島については、3.沖縄本島については1.を示すはずです。 もし、2.を主張し、漢字文化圏は全て中国である・・などと言い始めたら、大変です。日本もその対象となります。しかし、笑いごとではありません。

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漢字文化圏ではなかったチベットやウィグルをも、自国の領土に組み込んだ国ですから、いわんや漢字を使う日本においておや・・という訳です。

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繰り返しになりますが、尖閣諸島の問題が顕在化し、紛争になったのは、日本政府が国有化したからではありません。 その前から漁船の体当たりや香港の活動家の上陸デモンストレーションがありました。 そして中国政府はじっと時が来るのを待っていました。 それはGDPが日本のそれを上回り、世界第二位の経済大国になるタイミングです。 中国が日本より大国になれば、日本は中国の要求を受け入れざるをえず、尖閣を奪うことができるという、幼児的な発想です。しかし、実際に、これまで中国はフィリピンやベトナム、チベットを相手に、そのやり方で一定の成功を収めてきたのです。

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では将来、中国が、「実は日本も本来中国の一部である。独立は認めない。中国と一緒になれ・・」と言ってきたらどうしましょう?あり得ない話ではありません。

中国国内の報道をみると、彼らは国連の旧敵国条項を適用すれば、中国は国連の安全保障理事会に諮らずに日本を攻撃できると分析しています。

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さて困ったな・・。私ならこう言います。

「いいとも、では一緒の国になろう。でも、その場合、統一した新しい国の、首都は東京とし、国家元首は天皇、憲法には一党独裁を排し、民主主義を国是とし、国語は日本語を標準語とする・・という条件を呑まなければ同意しないよ」と答えます。

かつての大東亜共栄圏の再現です。

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日本が唱えた大東亜共栄圏は、日本帝国主義を象徴する存在として、戦後徹底的に否定されました。 しかし、今中華人民共和国が目指すものも、本質的に大東亜共栄圏と同じです。 私は、その矛盾を訴え、中国の一般の人々に理解してもらいたいのですが、あいにく「中国国家地理」は読者の寄稿を受け付けません。 そのあたりが、西側社会で編集される「ナショナル・ジオグラフィック」誌と異なるところです。

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もっとも、「中国国家地理」が投稿を受け付けたとしても、私の中国語の力ではどうしようも無いのですが・・・・。


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