【 上海復旦大学 その1 】 [中国]
【 上海復旦大学 その1 】
「夕方の飛行機でしたら、まだ少し時間がありますね」と商社マンのTさんが語ります。久しぶりに上海に来た私は、帰国日になる土曜日の昼をどうするか考えていなかったのです。
「せっかくだから、ひとつ魯迅公園から復旦大学あたりへ行きませんか?」
これはありがたい提案です。
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かつて、私の上司であったO社長は「上海の魯迅公園に一度は行ってみるべきだ」と語ります。
「反日の象徴である南京の大虐殺の跡と、日中友好史で重要な意味を持つ魯迅の記念公園の両方を訪ねるべきだ。 それぞれを訪れる中国人を眺め、彼らを理解しなければ、普通の中国人が日本人をどう見るかを判断できない・・」ということなのですが、私は上海の魯迅公園に行った事がなかったのです。
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そして、私は日本語版ながら(竹内好訳と高橋和巳訳)魯迅の小説を愛読した時期があります。 中国に赴任した時も、現代の中国にも阿Qはいるか?という興味を持って来ました。だから魯迅公園と魯迅記念館には興味があります。
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二つ返事で「行きましょう」と答えた私ですが、”はて、もうひとつの復旦大学へ行く理由は何か?“と考えます。 復旦大学とは・・・?
そこで今回は魯迅の話は置いておき、大学の話をしたいと思います。
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大都市上海には多くの大学がありますが、四天王の様に君臨する4つの大学があります。筆頭は復旦大学で、マスコミ関係の学部と医学部が有名です。
もう一つは上海交通大学でこちらは理工系の雄です。私は中国にいた頃、徐家匯のパソコン商店街(太平洋数嗎市場)によく出かけましたが、その商店街は上海交通大学のお膝元なので、IT関係のお店が集中して発展したものだそうです(T氏情報)。
あとは同済大学、上海外国語大学などが、有名大学です。
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上海交通大学は、単に理系の名門というだけでなく、江沢民他、上海グループと呼ばれる、政界の一大派閥を生み出しています。江沢民の後の胡錦濤は、北京の名門の理工系大学である清華大学卒業ですから、まさに南北のライバル校同士ということになります。
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しかし、復旦大学のOBには、現時点で政界の有力者がほとんどいないみたいです。
「 胡錦濤の時代になって、上海グループが排除されたからですかね?」
私は、「マスコミは本来、在野の立場であり、権力批判する側だから、政権の中枢には馴染まないのか・・」とぼんやり考えていましたが、それは多分違うでしょう。
ここは中国です。 マスコミは政権のスポークスマンであり権力批判はありえません。
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それに考えてみれば、昔の日本でも、マスコミ出身で閣僚になった人がいます。
石橋湛山は東洋経済の記者でしたし、文部大臣の永井道雄は朝日新聞の論説委員でした。 はるか昔、昭和の時代ですが・・。
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Tさんは「実は僕は復旦大学に留学していたのですよ」と語ります。
私は、「へぇー、それは羨ましい。私は留学経験がありません。若い頃に留学できていれば、もっと視野を広げて、違った人生を送れたかも知れない・・とよく思うのですよ」と答えます。
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そして私は、中国ではまだ大学を訪ねた事がない事を思い出しました。
中国には科挙の歴史があり、大昔から学歴社会です。しかし、そこで議論されるのは、いかに難しい選抜試験をパスしたか・・という点です。 大学で、あるいは卒業後にどれだけ創造的な仕事をしたか・・はあまり議論されません。
北京大学も清華大学も、復旦大学も上海交通大学も、入学試験の難しさは知れ渡っていますが、そこでどんな研究がされ、どんな論文がだされているかを知る人は多くないようです。実はこれは中国だけではありません。入試の難しさと卒業生がいかにエリートかが強調され、研究内容が知られていないという点では、日本や韓国の名門大学(つまり東大やソウル大学)も同じです。
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「実際、復旦大学には、いろいろな学生がいて、勉学に没頭する秀才もいるし、遊んでいる人もいました。世界中の多くの人とつきあうのは、実に刺激になりました。楽しい思い出です」とTさんは語ります。
「難しいと言われる入学試験ですが、受験生の置かれた立場によって、入り易さが違うのですよ。 地元の上海市民は入学枠が広く入り易いのです。 一方、地方からの受験生は狭き門ですね。 それから少数民族には優遇枠があるので漢民族よりも入り易い訳で、一種のAffirmative Actionになっています。 でもね、一番入学しやすいのは、実は僕みたいな外国からの留学生ですよ」と、彼は話にオチを付けます。
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そういえば、上海に隣接した江蘇省の人が憤慨してましたっけ。
上海近郊の蘇州や無錫の受験生は、上海や北京の大学を受験する時に損をする・・と。 少数民族の人たちも、漢民族に比べて優遇されているのに、政府に不満があるなんてどういうことなんだろう?と言っていました。
確かに大学受験生の目から見ればそうかも知れません。
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車の中でそんな会話をしている内に、我々は復旦大学の正門に着きました。
あれ? 本来、復旦大学の復の字に行人偏は付かないのですが、正門の文字には行人偏があります。 偏の無い復は、日本語の漢字には無いので、日本語表記できるように変えたのかな? でも、そんな具合に外国に迎合することがあるのでしょうか?
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「外国からの留学生は高い学費を納めますから、大学は大歓迎のはずです。あの中央の巨大な校舎は、留学生から巻き上げた莫大なお金でできているという話ですよ」
そういえば、広いキャンパスの中央に巨大で近代的なビルが建っています。
東大の安田講堂など、足元にも及ばない、立派な建物です。これに匹敵するのは、モスクワ大学の校舎ぐらいでしょうか。
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土曜日ですから、キャンパスの中に人は少なく、構内の道路を歩く人もまばらです。フランス語を話す背の高い西洋人のカップルに追い越されて、歩いて行くと、前方にひとだかりがあります。
「あの人たちは何でしょうか?」
以下次号
おととい創価の池田大作が魯迅記念館の名誉顧問になったよ
by あに (2012-04-13 11:26)
あに様 コメントありがとうございます。
それにしても、池田大作氏と魯迅にどんな関係があるのでしょうかね?
彼は魯迅の小説のファンなのでしょうか?
別に創価学会がどういう活動をしようと構わないのですが、泉下の魯迅氏は
目を白黒させているのでは?と 思ってしまいます。
次のコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2012-04-15 16:30)