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【 ビデオ三昧の日々 その1 】 [映画]

【 ビデオ三昧の日々 その1 】

私が学校にいた頃、コンピューターには、デジタルコンピューターの他にアナログコンピューターなるものがありました。これは一言で言えば、LCR回路を組み合わせて微分積分を専門に行う計算機ですが、とにかくプログラミングが大変です。ボード上に配線して行うのですが複雑怪奇でした。しかし有効桁数がそれほど必要でない場合、そして微積分を高速で行いたい場合には有用でした。デジタルコンピューターでの微積分とは所詮数値解析であり、近似値を追うものだったのに対して、アナログコンピューターでは実際に回路上で微積分を行うのですから当然です。

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一説にはデジタルコンピューターとアナログコンピューターは共に発展し、あるいは融合してハイブリッドコンピューターなるものが登場すると言われましたが、そうはなりませんでした。集積回路の発展に伴い、世の中はすべてデジタルコンピューターの世界になりました。

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その後の30年間とは、すなわち情報通信の世界でデジタルがアナログを駆逐する30年でした。そしてその最後を締めくくるのが、地上波TVのデジタル化でした。(正確には、まだラジオはアナログのままですが・・)。

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そして、世の中のデジタル化の完成・・はちょっとオヒョウの暮らしにも影響を与えました。そのために、急に忙しくなり、このブログも長期間にわたって更新されない状態が続きました。読者の皆様にはお詫びいたします。

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実は先日、金沢に暮らす妹から、大量のビデオテープのDVD化を依頼されました。以前に妹の勤務先の学校の遠足の際のホームビデオをDVD化してあげた事があったのですが、それを記憶していて、VHSのビデオテープのデジタル化を私に依頼してきたのです。

妹が言うには、「ビデオデッキは時代遅れになり、やがて故障しても修理できなくなるかも知れない。そうなると今ビデオテープに録画してある膨大な映像が見られなくなってしまう。だからその前に、DVDに変換して欲しい」との事です。

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勿論、その背景に、テレビのデジタル化というタイミングがあったのも事実でしょう。それになんといっても、ビデオテープは嵩張ります。

妹の家から持ち帰ったビデオテープはダンボール箱4箱分もありました。

私は黙々とビデオテープのDVD化を始めました。実は家庭で焼いたDVDの寿命はそう長くないそうです。VHSのビデオテープとDVDのどちらが長期間の保存に耐えるかは、私には分かりません。 そして、ビデオテープのDVD化を進めながら多くの事を考えました。

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デジタル化されたデータのコピーに慣れ親しんでいる私には、アナログのテープのデータ抽出はとてもまどろっこしいものです。

テープの再生は通常の再生速度で行わなければなりません。倍速再生では画質、音質が劣化します。実に時間のかかる煩わしいものです。

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私がパソコンで使っているOSWindows VISTAで、当然マルチタスクができます。テープのDVD化をしながら、パソコンでブログ作成などの他の作業が可能なのですが、そう簡単ではありません。ビデオを再生しながらでは、なんとなく気が散って他の仕事ができないのです。

思わず、そのビデオの画面に見入ってしまい、そしてまた別の事を考えます。

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「現代社会でデジタル化が持つ意味とはなんだろうか?」

最近、知的財産権をめぐる話題が世の中に多くあります。

私の知り合いにも、いつの間にか弁理士の資格を持った人が増えました。

いたるところで特許の話をしています。

一般に世間が知的財産権にうるさくなったのは、アメリカのレーガン大統領の時代にかの国がプロパテント政策を打ち出し、知的財産について厳しい対応をするようになったからだ・・・と言われています。

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しかし、実は他のきっかけもあります。

たしかに、ディスカバリーやインキャメラというアグレッシブな手続きや、サブマリン特許といった戦略的な知財作戦が登場したのは、プロパテント政策の結果ですが、問題は特許権だけではありません。著作権も大きな問題です。

そして著作権の問題がクローズアップしたのは、情報のデジタル化のせいです。

画質音質の劣化なく、完全なコピーをごく短時間で製造できる技術の登場は著作権に対する挑戦とも言えます。アナログからデジタルへの切り替えは、知的財産権についての考えを根本から揺るがすものです。

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情報のデジタル化でおおいにメリットを得たのは、著作権に対する認識が甘い国・・つまり中国です。かの国ではデジタル化は数碼化と呼ばれますが、海賊版のCDDVDが跋扈しているのもこの国です。

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そして今、ビデオテープを再生しながら、その画質の悪さにため息をつきます。DVDとブルーレイの画質に慣れている私は・・「昔はこんな画質でも満足していたのだ・・」とさえ思ってしまいます。

「こんな画質なら著作権保護の対象コンテンツをダビングしても、罪に問う事は難しいかも知れない・・・」。

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ところで、この私の作業はその後、新しい展開を見せます。

会社でその話を他人にしたら、Kさんがすぐに興味を示してきました。

「オヒョウさんは、ビデオテープのDVD化ができるんですって?それなら私の撮りためたビデオテープのDVD化もお願いできませんでしょうかね?」

一瞬、著作権の問題が頭をよぎりましたが、深く考えずに「いいですよ。今度持ってきてください」と答えてしまいました。

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翌日、Kさんが持ってきたのは、ショッピングバッグいっぱいのビデオテープです。一瞬絶句しましたが、すぐに中身をみます。

「全部、黒澤明の映画ですね。彼の作品がお好きなのですか? ちょっとみると、私の好きな『天国と地獄』や『酔いどれ天使』がありませんね」

「黒澤明が好きなんですよ。NHKBSWOWOWで放映したものをためているのですが、全部揃っている訳ではありません。しかし何時かビデオデッキも使えなくなるでしょうし、今のうちにDVD化したかったのです」

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さて、どうしたものか・・。実は私の勤務先では、新日鐵から新しい副社長が着任し、私は膨大な量の宿題を課され、時間が無かったのです。「これではますますブログを書く時間がなくなる・・・」。それはともかく私は引き受けました。

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その後、彼のビデオテープを再生しながら、確かにWOWOWNHKのクレジットが付いているのを確認しました。ビデオテープですからコピーワンスやダビングテンとかCPRMといったややこしい問題はありません。その代わり画質は劣ります。

「黒澤作品なら、レンタルDVDショップで簡単に借りられるのに、画質の悪いビデオテープに拘るのはなぜなのかな?」

はっと気づきます。

「彼の思い入れは、画質云々ではないのだ。 大好きな映画がTV放映される機会を待ち、そのわくわくした興奮を記録したいからビデオテープにしたのだ」

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カーペンターズの「イエスタディワンスモア」の中に、「子供の頃、ラジオに大好きな曲が流れるのを待っていた」という歌詞がありますが、ネットで音楽が配信され、CDを借りられる時代には理解できない気持ちです。

「それと同じ気持ちをKさんは持っていたのだ・・」。

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私は、彼のビデオテープの再生とDVD化を始めました。

そして、そこには大きな落とし穴がありました。

それについては次号で申し上げます。 (多分明日)。




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