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【 DVD三昧 】 [映画]

【 DVD三昧 】

以前、私が中国にいた頃、奇妙な癖がありました。外で酔っ払って、アパートへ帰る時、途中で必ずCD/DVDショップに寄って1DVDを買い求め、そして台湾人の経営するパン屋でアイスクリームを買って、帰宅したのです。

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そのため、帰国する頃には私の体重が数キログラム増え、そして200枚程度のDVDが溜りました。

溜まったDVDには中国映画は少なく、チャン・イーモウ監督の作品が少しあるぐらいです。残りの殆どが日本や欧米の映画です。その中に中国語の吹き替えや字幕スーパーがあるものは稀で、吹き替え無しで、英語か日本語の字幕スーパー付きがほとんどです。

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ですから、それらを普通の中国人市民が買い求める事はあまりなく、私のような外国人が買う事になりますが、いつも客はまばらです。でも、その店の商品の中には、意外に名作、傑作が混じっています。

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例えば、黒澤明のシリーズや、ギリシャのテオ・アンゲロブロス監督の「霧の中の風景」、スペインのビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」や「エル・スール」、スェーデンのイングマール・ベルイマン監督の「ある結婚の風景」、ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の作品群、ロシアのセルゲイ・エイゼンシュタインの「戦艦ポチョムキン」、アメリカのピーター・ボグダノビッチ監督の「ラストショー」、スタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情」、イタリアのフェデリコ・フェリーニ監督の「道」、日本映画でも溝口健二監督の「雨月物語」、今井正監督の「にごりえ」、伊藤大輔監督の「下郎の首(リメイク版)」といった名作が、店頭にさりげなく置いてあります。

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映画ファンには垂涎の作品ばかりです。不思議なことに、それらは多くの駄作とポルノ映画のDVDに混じっていて、見つけるのに苦労する訳ですが、それらを発掘する時間が、オヒョウにはある意味で至福の時間でした。

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問題はそのDVDの素性です。勿論、中国ですから違法コピー版です。1枚7元(約100円)という値段ですから、正規品である筈もなく、勿論日本に持ち帰る事はできません。今も昔も、中国では海賊版が完全に市民権を得ています。

中国の首脳が、外国に対して「中国政府は海賊版の駆逐に努力している」と表明した事がありますが、これは完全な嘘です。

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それらのDVDは、海賊版や違法コピーである事以外にも問題があります。

中国のDVDは、リージョンコードフリーでどの地域でも見られるようになっていますが、殆どがPAL方式のTVに対応しています。一部SECAM方式もありますが、日本で用いられるNTSC方式やハイビジョン方式のテレビでは見られません。

日本でそれを見ようとすれば、パソコンで見るしかありません。

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そういう訳で、私が日本に帰国する際、全てのDVDを処分しました。

当地の日本人の知り合いに渡した訳ですが、文学作品は誰それに・・、ちょっとエッチな映画は彼の趣味だから彼に・・という具合に振り分けて、さらにDVDデッキも譲り渡して、手ぶらで帰国したのです。

集めたDVDを譲り渡す時は、日本ではもう見られないな・・という、ちょっと寂しい気持ちになりました。

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しかし日本に帰国して分かったのですが、実はレンタルビデオ店に行けば、私の知っているようなDVDは、どこでも貸し出していたのです。

なあんだ・・と思う反面、ありがたい事だ・・と感謝したのですが、最近事情が変わってきました。

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最近、大手のレンタルDVDのチェーン店に行くと、私が見たい名作や旧作が姿を消しているのです。あまりに有名になった名作(シェーンだとかカサブランカとか、サウンドオブミュージック等・・・)や「男はつらいよ」シリーズなどは古くなっても置いてありますが、そこまで有名でない作品は、どんどんなくなっていきます。

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その代わりに、棚の大半を占めるのは、韓流作品や、TVドラマをDVD化したものです。韓流作品を並べる事に異論はありませんが、TVドラマには違和感があります。TV番組は基本的に映画とは違います。本来、TV番組は放送時に録画すればいいのですし、オンラインのデマンドで見る事もできます。

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もちろんDVDを借りるのはお客の自由ですが、TVドラマのシリーズ物は枚数が多く、それだけで広い棚を占領します。その結果、珍しい旧作が締め出され、客が借りる事ができなくなるとしたら、旧作名画をひたすら愛する私などはとんだトバッチリです。

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しかも、この傾向はどの店でも同じで、その結果、どの店に行っても置いてあるビデオは同じ作品ばかり・・・・という事になります。

「これはレンタルビデオ店のコンビニ化だ・・・」

ご承知のとおり、コンビニエンスストアは、POS管理を行い、売れ筋の商品しか置きません。その結果どの店も同じような商品が置いてあります。コンビニの雑誌コーナーも金太郎飴のように、同じ商品が申し合わせたように並んでいます。

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少しでも他人様と異なる商品を買い求める人にはインコンビニエンスストアとなる訳ですが、同じ現象がレンタルDVD店でも起こりつつあります。

「これは困ったことだ。なんとかしなくては・・・」

私にできる事は、レンタルを諦めて、インターネットで売りに出ている作品を購入する事だけです。

しかし、私が名作・佳作と思う作品は、インターネットオークションでも姿を消しつつあります。「うーむ困った」

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それでも、少しずつ購入しています。これまでに入手した作品の内、珍しいものをあげれば、ビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」と「エル・スール」、DHローレンス原作のマーク・ライデル監督の「女狐」、エイゼンシュタイン監督の「メキシコ万歳」、ロバート・ワイズ監督の「砲艦サンパブロ」などです。

「ミツバチのささやき」は英国で製造したDVDで、PAL方式用なので、パソコンでは見られますが、テレビでは見られません。日本語の字幕もありませんが、仕方ありません。大好きな作品なのでよしとします。

私の部屋を訪れる友人に、「へえー、見慣れないタイトルのDVDが並んでいますね」と言われると、ちょっと得意になります。

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問題は、中国で買っていた海賊版と違って、お金がかかる事です。

名作であっても、レンタル店から姿を消し、販売も終了したものになると、オークションでも値がはります。

今、悩んでいるのは、台湾映画の「悲情城市」を買うべきか否かです。

台湾版で、中文の字幕スーパーのものは安価ですが、日本語の字幕スーパーが入ると、なかなか出品されないうえに、かなり高価になります。

もちろん日本語吹き替え版はありません。

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さてどうしようか・・・。中国で暮らしていた私としては、日本語の字幕スーパーがないと、理解出来ないというのは、かなりしゃくです。ちょっとプライドも傷つきます。

でも実際には、日本語がないと、私にはこの映画を理解できないでしょう。

「ああ、こんな事なら、もっと中国語をまじめに勉強しておくべきだった」。

でもそれを言い出すときりがありません。

学ばなければならない外国語ばかりになってしまいます。

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趣味の品というものは集めれば集めるほどさらに欲しくなり、棚の前に立って、ため息が出るものだ・・・と聞いた事があります。

私の場合は、過去の不勉強を悔いるため息が出るばかりです。


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おじゃまま

最近見た映画といえば、「ドラえもん」の私としては、コメントは控えるべきか…(笑)
もうちょっとしたら、「どどーっ」と出てきそうな気もしますが…
私はスカーッとする映画(ダイハードみたいな…)か
かわいい映画(「ともだちのうちはどこ」みたいな)が好きです〜
by おじゃまま (2011-04-30 23:47) 

wolfy

オヒョウ様へ
私も、ビデオ屋やレンタル屋の心ない営業には失望しております。
そこで、非常手段として、若い時に集めたお気に入りの映画の録画ビデオテープを、少しずつDVDに焼き直しております。そしてビデオテープが一段落したら、レーザーディスクのダビングに着手しようかと思っております。
by wolfy (2011-05-01 19:26) 

笑うオヒョウ

おじゃまま様 コメントありがとうございます。

私もダイハードは好きですが、シリーズ化するとだんだん劣化していくみたいで、ちょっと詰まりません。 それと・・吹き替え版でブルースウィルスの声に野沢那智を起用していたのが不満です。野沢那智ももう亡くなりましたが・・。

かわいい映画も、私は大好きですので、いずれブログに書こうかと思っております。 またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2011-05-05 01:50) 

笑うオヒョウ

Wolfy様 コメントありがとうございます。

実は、VHSテープをDVDに変換して記録する・・という作業を、かなり前から、私の趣味にしております。 ただし、自分で撮影したものと、TV放送を録画したものが対象です。コピーガードのかかった購入品をDVD化する事は、技術的には面白いのでやってみたいのですが、著作権上の問題が気になります。それとアナログ放送時代に録画したものは画質がいまひとつ良くないので、時間をかけてデジタル化しても、その画質にがっかりすることもあります。
レーザーディスクは、私は持っておりませんが、友人(川崎のご隠居)がコレクションを持っております。 いずれDVD化またはブルーレイ化を提案しようかと思いますが、やはり著作権が気になります。 またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2011-05-05 02:01) 

wolfy

オヒョウ様へ
中国のアマゾンをよく見ていますが、ほしい映画のDVDや音楽CDが、たくさん出品されています。これら、ははたして日本まで無事届けられるものでしょうか?教えてください。よろしくお願い申しあげます。
by wolfy (2011-05-05 20:27) 

笑うオヒョウ

Wolfy様 コメントありがとうございます。
難しい質問なので、答えに迷いますが、以下の通りかと思います。
CDはさておき、DVDがについて考えました。

1.百度(バイドゥ)や阿里巴巴(アリババ)のように信用できるサイトで、
海外配達可となっている商品は、購入可能と思います。アマゾンについては、よくわかりません。

2.ただし、「鬼が来た」のように、中国国内で禁止されている作品は中国の当局が不可とするかも知れません。未確認ですが、ソ連で禁止されていた「ドクトルジバゴ」などもだめかも知れません。

3.問題は日本の税関です。中国国内では正規のライセンスを受けていると思っていても、実は海賊版だったという事があります。税関での開封チェックがあるかも知れません。
特にリージョンコードフリーの作品は怪しまれます。

もともと中国国内での鑑賞を前提としたものなら、中国のリージョンコードが規定され、PAL方式である方が信用されます。その場合、パソコンで見るか、PAL→NTSC変換をして、テレビで見る事になりますが、変換した新しいDVDディスクを作成した時点で著作権の問題が発生するかも知れません。
そのあたりは機会があれば、ブログに書こうかと思います。またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2011-05-06 12:31) 

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