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【 洪水はわが魂に及び 】

【 洪水はわが魂に及び 】

 

地震・津波の災害復興にあたって、浸水、冠水した地域をどうするか?が課題になっています。今回の震災で、海岸沿いの被災地は、単に津波に洗われただけでなく、広範囲に亘って地盤沈下が発生していますから、将来の小規模な津波や台風などの高波にも弱くなっています。安全を考えれば、行政が強権発動して、新たな住宅の建設を許可しない方針で臨むしかありません。

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唯一の妥協策は、フラッド・プレーンです。元の綴りは”Flood Plane”で、オーストラリアなどで、採用されているシステムです。洪水発生時に水没する事を承知の上で、土地を利用したいという人に、安価に土地を提供するシステムです。利用者は覚悟の上でその土地を購入して利用するのですから、自己責任とも言えます。 日本でその様な例があるか否か、詳しくは知りませんが、大きな川の河川敷などは、増水時に冠水することを前提にした土地利用になっています。 例えば、野球のグラウンドやミニゴルフ場、グライダーの滑空場になっていたりします。 河川の氾濫時には格納してあるグライダーを救出するのが大変だと思いますが・・・。

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国家として土地を確保し、無用途の遊水池にしたのは、渡良瀬遊水地が最初だと思います。正確には無用途ではなく、足尾鉱山の鉱毒の沈殿用池だったのですが、悲惨な公害問題の解決手段として、国家の意思が働いたものです。

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今回の津波の被害地も、地盤が低下し、ゼロメートル地帯となった区域は、国家が買いあげて”Flood Plane“ならぬ、”Tsunami Plane”にするしかありません。しかしリアス式海岸の入江にはただでさえ、平坦な土地が少なく、その貴重な土地を取り上げられるとなると、猛烈な抵抗が予想されます。

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国家による土地の大規模な買取りの例で思い出すのは、成田空港用地の強制収容です。機動隊を動員した強制代執行では多くの犠牲者が発生し、いまだに第二期工事の用地で未収容の区域が残るありさまです。反対の理由は様々ですが、成田空港が軍事利用されるだろうから・・なんていう、訳の分からない理由もありました。不思議なのは、あの時成田空港建設に反対し、反対派を応援した人々が涼しい顔をして成田空港を利用している事です。確か菅直人も成田闘争に参加したはずだけれど・・・。

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成田闘争以来、事実上、国家による大規模な土地収用は不可能になりました。

高速道路の建設など、公共インフラの建設も土地収用がネックになって、他の国では考えられないほど、長期間を要します。

そして、それがこの国の経済成長にブレーキを掛け、GNPの増加を阻んでいることもまた事実です。

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正確な根拠はありませんが、もし日本の土地収用が中国の場合ほど容易であるなら、公共事業による経済成長率の押し上げ効果は、2.03.0倍になるのではないか?と思います。

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日本で土地収用を困難にしているのは、成田闘争の亡霊だけではありません。

明治初期の地租改正の際、高い税金の代わりに、土地についての私権を大幅に認めたことが発端だそうです。しかし、民主主義が根付く前の明治時代、あるいは軍国主義国家の時代は、国家が強権を発動して土地収用する事が可能でした。

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しかし、民主主義の時代になって、私権はさらに強化され、さらにバブル期に土地がひたすら高価なものになってしまったため、国家が土地を確保する事がほとんど不可能になったのです。

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今回の震災の跡地で危険な場所を買いあげて非居住地化することは、国家が私権を制限するひとつの試金石です。よほど指導力のある政権でなければできません。残念ながらリーダーシップを欠き、ポピュリズムに流される、今の政権には無理でしょう。

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しかし、将来、安全で快適な国家をつくり、安定的な経済成長を持続するためには、土地の私権の制限はどこかで取り組まなければならない問題です。

えっ?三陸海岸の土地を買い上げる前に、福島の原発の周辺半径30Kmの土地を買い取るべきですか? しかも、坪単価は銀座鳩居堂前と同じ価格で・・ですか? うーむ、これは難しいですね。その場合、多分国家財政は破綻するでしょう。

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えっ? もう破綻しているですって?

確かに財政も、エネルギー政策も、年金も福祉も、すでに破綻しています。

でもね、日本は66年前にも、一度すべてが破綻する経験をしています。そして見事に復興しています。だから元気をだして頑張るしかありません。

広島だって、原爆直後は、100年間は草木も生えない・・と言われましたが、短い年月の間に復活しました。

100年間は草木も生えない・・と言ったのが、(自称)原子力に詳しい人だったかどうかは定かではありませんが。

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ちなみに、今回のタイトルは大江健三郎とは全く無関係です。


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