【 20ミクロンが見えない 】 [雑学]
【 20ミクロンが見えない 】
花粉症の季節がなかなか終わりません。私のような鈍感でがさつな人間は花粉症になりませんが、周囲を見渡すと、マスク姿でグシュグシュやっている人ばかりです。そこで思うのですが、飛散する膨大な量の花粉が見えないのはなぜでしょうか?
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駐車場の車の窓ガラスにうっすらと花粉と思える粉が堆積しているのを見る事がありますが、それが花粉症の原因となる物体かは不明です。
以前、製鉄所の粉塵職場にいた頃、先輩の技師から教えて貰いました。
「 粉塵はどれも困った存在だが、目に見えるものは殆ど害がない。特に有害なのは目に見えない微粒子であり、防塵マスクは必ず着けるべきだ 」
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実は、空気中に漂う微粒子の内、ある大きさの物が人の目には見えません。
直径100ミクロン(つまり1/10ミリ)以上なら、普通に肉眼で見る事ができます。そしてそれらは沈降速度も速いので、そう長時間、空中に漂う事はありません。
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逆に、直径1ミクロンを下回る、ナノメートルの小型微粒子の場合、チンダル現象で見る事ができます。チンダル現象とはコロイド粒子に可視光線が散乱する現象です。簡単に言えば、お醤油や牛乳に光を当てると、その光路が筋になって見える現象です。大気中に微小な水滴が浮遊している場合も太陽光線が筋になって見える事があります。
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ちょっと脱線しますが、それを詳しく語ると、牧神の午後の風景にあるような、雲の隙間から太陽光が筋になって指している光景がまさにチンダル現象です。
この現象を、中島みゆきは「天国の階段」と呼びました。映画「トラ・トラ・トラ」の田村高廣は「軍艦旗」と呼びました。またある人は「ターナーの絵のようだ」と語ります。ちなみにロンドン事務所にいた秘書嬢は、その現象を”Jacob’s Ladder”と呼んでいました。もっとも、この言葉にはいろいろな意味がありますが・・・。
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これは空中に微細な粒子が存在する時に起こります。ミー散乱という現象で、微粒子に当たった光が一定の方角に反射するのですが、いろいろな特徴があります。粒子径がちょうど光の波長と一致する時に、最も散乱が強くなります。そしてその波長に応じて反射角が異なります。
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だから、1ミクロン以下のいろいろな直径の水滴が空中に浮遊している時、太陽光のような、波長に広がりを持つ光線が当たれば、分光されて、色の縞模様になった反射光が観察されます。
「なんだ、それはつまり虹の事ではないか・・。ミー散乱で虹の説明ができるのか・・」と気づいたのは、私が飛行機の窓からブロッケン現象を見ていた時です。
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さらにブロッケン現象について説明しますと、これは霧の中で丸い虹が観察され、その中央に自分の影が見える現象です。別にブロッケン山だけでなく、どこでも見られます。私は若い頃に、職場の連続鋳造機のチャンバーの中でよく見かけました。
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その昔、山林修行をしていた僧の行基が、白山の山頂で、ブロッケン現象に出会い、阿弥陀如来に会えた・・と歓喜したという伝説が北陸地方にあります。
その結果、白山は山岳宗教のメッカになった・・・と私は思ったのですが、専門家であるY博士によれば、信ぴょう性に難があるとの事。
どうも、学者とか専門家というのは・・証拠が無い俗説は相手にしないようです。ちょっと詰まりません。
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チンダル現象から、随分脱線しましたが、ともかく、100ミクロン以上の粒子と1ミクロン未満の粒子は見えるのに、その中間の大きさの粒子・・直径20ミクロンのスギ花粉などは見えません。
スギ花粉の直径に相当する波長の光は、ちょうど赤外線領域なので、仮にチンダル現象が起こっても見えないのです。
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これはちょっと困った事です。人にアレルギーをもたらす花粉が見えないのですから・・。もし、花粉が浮遊しているのを可視化できたら、必要に応じて、窓を閉めたり、洗濯物を取り込んだり、マスクを着けたりできるのです。
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でも考えてみたら、赤外線センサーは、身の回りにふんだんにあります。赤外線レーザーも多用されています。もし、窓のセキュリティシステムの赤外線センサーに、花粉のミー散乱の検出機能を付けたら、自動的に窓や換気扇を開閉する事も可能になります。これは・・特許か実用新案を提案しようかな?
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いや、まてよ、今の時代、花粉症よりもっと深刻な問題があります。
空中に浮遊する放射性物質を検知して、状況に応じて窓を開閉したり、ベンチレーターを開閉するシステムの方が重要かも知れません。これを福島県の浜通りの建物に取り付ければ、人々の安全な生活を確保する上で役に立つかも知れません。全く不幸な事ですが・・。
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破損した原子力発電所の高温のプールからは毎日膨大な量の水が蒸発しています。それらが上空で凝結して、”Jacob’s Ladder“が見えるかも知れません。冷却用の放水の先には虹がかかっているかも知れません。今、それらを本当の”天国の階段”にしない為の叡智が求められていますが、容易ではありません。
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残念ながら、花粉症の季節が終わるまでに、この問題が解決する見込みはないようです。
じつに不思議な現象なのですね…
「真ん中が見えない」って、まるで
「平凡な人間は見えない」みたいで、身につまされますなぁぁ。
花粉症は、一年で卒業♪かと思いますが、
黄砂が来てみないと分かりません…
私の予想では、黄砂のほうが(私個人に関して言えば!)
「花粉症」の原因…
花粉症改め、「黄砂症」…だと思います…。
化学物質まき散らさないでね〜
by おじゃまま (2011-04-25 02:07)
おじゃまま様 コメントありがとうございます。
たしかに黄砂もこまりものですね。
あれはかすかに黄土色をしているので大気の色を見れば
分かりますが・・・。
それにしても、少し前までは黄砂が一緒に運んで来る
化学物質やら有毒な物質を傍迷惑な事だと思っていたのですが、
日本からの放射性物質を迷惑がられる事態になろうとは・・。
少し情けない気持ちです。
またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2011-04-26 01:35)