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【 フランスと核兵器 その2 】 [中国]

【 フランスの核兵器 その2 】 

先日、マスコミに、日本の非核三原則の提案は欺瞞であるという趣旨の報道がありました。佐藤栄作が「核を作らず、持たず、持ち込まさず」と唱えたのは、実は反核の思想に基づくのではなく、持ちたかったのに持てなかったから、ああ言ったのだ・・という説明です。 
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第二次大戦の敗戦国で同じ西側に属する西ドイツに「核保有の可能性」について打診していた事を暴露し、佐藤栄作らの当時の政権は、本当は核を持ちたかったのだ・・と結論づけています。しかも、持とうとしても、米国は許してくれないだろうし、日本の科学技術にも限界があるので断念し、逆に米国の傘に入る事を前提に、非核三原則を提唱したのだ・・と、日経新聞やNHKの番組は報道します。 
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全共闘世代の人たちにとって、佐藤栄作は打倒すべき存在であり、何がなんでもケチをつけたい相手です。 権力批判はマスコミだけでなく当時の教養人のエトスとでも言うべき事ですが、その亡霊が生きていたのでしょうかね。 
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希望がかなわなかった時、負け惜しみで本心と違う事を言う行為を、オヒョウは「酸っぱいブドウ」的発言と呼びます。勿論原典はイソップの「狐とブドウ」の話です。では、佐藤栄作の非核三原則は、望みがかなわなかったための「酸っぱいブドウ」だったのでしょうか?どうも違うようです。ではアメリカの核の傘に入れてもらう為の、核戦力保持否定宣言でしょうか? どうもそれも違うようです。アメリカの核の傘に入れてもらうなら「持ち込まず」の部分は不要です。 
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技術的困難というのも理解できません。今、日本の原発はプルトニウムが抽出しにくい軽水炉が圧倒的ですが、それでも再処理すればプルトニウムは容易に精製され、現在保有するプルトニウムだけで、長崎型原爆数百発分はあるはずです(もっとも、その内の相当量は海外においてあり、日本にはありませんが)。 
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ウランの濃縮技術も現在の日本において、決して難しいものではありません。今は原発燃料用の低濃縮ウランだけをつくっていますが、高濃縮化も可能です。ですから世界中から総スカンをくらい、経済が破綻する事を考えなければ、確かに日本では決意すれば数カ月以内に核兵器を持てます。 
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オヒョウは佐藤内閣時代、あるいはそれ以前に核兵器の保有を研究した可能性は否定しませんが、本当に核兵器を持ちたいと考えたとは思えません。 それはフランスやイスラエルのように「核の恫喝」を受けていないからです。インドもパキスタンも、潜在的な「核の恫喝」によって、核保有国になっています。「核の恫喝」なしに核兵器を持とうとしたのは、核保有が国威発揚になると信じている中国と北朝鮮だけです。 
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日本も畢竟、中国や北朝鮮と同じだ・・と考えたい人々は、「核の恫喝」なしでも、日本は核兵器を欲しがったに違いない・・としますが、オヒョウはその考えに賛成しません。
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では中国人は、日本をどうみているか・・?オヒョウの友人だった中国人は、インテリで日本に来た事もあり、民主主義を是とする開明的な思想の持ち主です。それでも、彼は 
「いつか、きっと日本は核兵器を持とうとするだろう。今はアメリカが抑えているから持てないが、持ちたいに違いない。そして持とうとすれば数カ月で持つだろうし、その時は再び中国に侵略しようとするだろう」ととんでもない事をまじめに語ります。 
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中国の反日教育恐るべしと言うべきか、あるいは過去の日本の侵略の歴史が骨身に染みているのか・・。オヒョウが、「いや、日本は核兵器を持てるけれども、敢えて持たないのだよ。それが大人の国家だ」と説明しても、全く分かってもらえません。 持てるのなら持つに違いない・・というのが彼の主張です。 敢えて自ら、国際紛争の解決手段として戦力を持たない・・という憲法九条の理念など、絶対に理解して貰えません。 憲法九条を墨守すれば、外国から尊敬され、攻撃もされない・・という社民党の意見など、全くのお笑いぐさです。 
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話が脱線しましたが・・いつかアメリカの圧力がなくなれば、日本は核兵器を持ち、中国の脅威となる・・というのは、多くの中国人、及び中国政府の共通の認識であり、深刻に考えている事なのです。 日本は「核の恫喝」を受けないのに、彼等は見えざる未来の「核の恫喝」に怯えているのです。 
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ですから、尖閣諸島で彼等が日本の領土を掠め取ったとして、その結果日本の世論を刺激して、核武装論が台頭して、日本が核保有国になったら、彼等にとっては大問題です。だから、ギリギリのところで、中国は尖閣諸島奪取の為に武力を使いません。彼等の行動にブレーキがかかります。 
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これがフィリッピンの場合なら、核武装の可能性はありませんから、話が違います。ズービック、クラークの両米軍基地から米軍が撤退し、フィリッピン空軍に戦闘機が一機もいなくなった途端に、中国は南沙群島に軍艦を派遣し、フィリッピンの島を占領し、軍事基地を建設し、五星紅旗を立ててしまいました。 
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しかし、日本に対してはそれができません。日本は尖閣諸島が日米安保の保障範囲に入ると、クリントン国務長官に発言させ、中国を牽制しました。中国はその先を読み、もし米国が行動しなければ、かつてのフランスの様に、日本も核兵器を持つかも知れない・・と考えます。 
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核兵器を持つかも・・という素振りは、首相の靖国参拝と並んで、対中国の有力な外交カードなのです。
対中カードを無くし、日本を不利にしたい親中国派は非核三原則の法制化を叫びますが、皮肉にも、中国は日本の非核三原則を信用せず、疑心暗鬼となります。 
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信用されない非核三原則を作った佐藤栄作こそ、確かに親中国派にとっては憎き存在です。 ちなみにNHKの報道では、佐藤栄作のノーベル平和賞受賞は非核三原則を提唱したからで、反核の意思が欺瞞だった以上、ノーベル賞もまやかしだったと、暗に言っています。 
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しかし、当時を知るオヒョウはその見解を否定します。非核三原則がノーベル平和賞選考に与えた影響は小さく、彼の国際アムネスティを支援する活動が高く評価されたのが受賞理由だったからです。 国際アムネスティは、中国の人権弾圧や死刑執行を強く非難し、中国もこの団体を敵視しています。親中国派にとって説明に困る受賞理由です。
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今年のノーベル平和賞は、中国の人権活動家が受賞する可能性が高いとされています。もし、そうなったら日中記者協定を結ぶマスコミはどう報道するのでしょうか? 佐藤栄作の時と同じように、今年のノーベル平和賞はデタラメだ・・とでも言うのでしょうか?

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コメント 4

夏炉冬扇

お早うございます。
なるほど、核についてこういう考えがあるとは。外交は奧が深い。
朝晩微妙に冷えます。
by 夏炉冬扇 (2010-10-07 06:38) 

おじゃまま

じゃあ、持っていても持っていなくても、同じで、しかも、
「絶対持ちません」と言い続けるほうが、
「持つぞー」と脅すよりも効果的なんですね〜
理解できず、不気味でしょうから。
by おじゃまま (2010-10-07 11:34) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

外国の人には、日本人の核兵器に対する思いが絶対に理解できないのではないか・・と思う事があります。 実際に持つつもりがないのに「本当は持ちたいのだろう」と邪推されると、複雑な気持ちになりますが、それが外国の狼藉にブレーキをかけているのか・・と思うとさらに複雑な気持ちになります。

当地、愛知県も朝晩は少し冷えてきましたが、日中、工場の中はやはり汗ばみます。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-10-08 00:36) 

笑うオヒョウ

おじゃまま様 コメントありがとうございます。

ご承知の通り、反核を唱える人達は、「核のパラドックス」という言葉を使います。
核兵器を持っていても、どうせ使えないのだし、無駄だしかえって不自由だ・・。
だから核兵器を持つべきでない・・という意見ですが、確かにそうかも知れません。むしろ外交カードとしては、持ったあとより、持つ前の方が強いのかも知れませんね。 持たない!と宣言しても、周囲が信用しない・・だから外交カードとして有力・・というのは、なんだか不思議ですが、事実だと私は考えます。 その作戦で、周辺諸国を振り回してきたのは北朝鮮ですが、彼等はもうその作戦は使えませんね。 持ってしまいましたから

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-10-08 00:54) 

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