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【 フランスと核兵器  その1 】

【 フランスと核兵器  その1 】 
かなり昔ですが、東京の地下鉄の駅員の帽子が筒型になった時、それをドゴール帽子と呼ぶ事を知りました。 そういえば確かにドゴール大統領というか、ドゴール将軍はあんな形の帽子をかぶっていました。その少しあとにパリのKさんと話す機会がありました。「よりによって、「出ると負け」みたいな情けない将軍にあやかって帽子を真似るなんて、どういう事ですかね?」とオヒョウ。
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実際、ドゴールの戦歴は負け続けです。第二次大戦ではフランスがドイツに攻め込まれると、国民を置いて、ダンケルクから英国に脱出しました。第二次大戦後は、植民地だったアルジェリアの独立戦争で敗北し、ベトナムではディエンビエンフーの戦いでコテンパンに負けた結果、アメリカにバトンタッチしてインドシナを逃げ出し、そしてスエズ動乱ではソ連のバックアップを受けたエジプトに負けて、スエズ運河の利権を手放しました。 
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オヒョウの知る限りでは、格好イイところの全くない軍人です。しかし、Kさんは違う意見です。 
「ドゴールはフランス国民には、非常に人気がありますよ。彼の前のポンピドーと並ぶ人気です。だから空港の名前にもなっています。彼のあとのジスカールデスタンなどは、オヒョウさんは評価しますが、一般のフランス国民の間では評判が悪いのです。 ドゴールが参加した戦争は確かに負けていますが、彼一人の力ではどうにもならない戦争ばかりです」 
Kさんは続けます。 
「一方、彼の功績は大きいです。戦後の米ソ対立の時代も、フランスのアイデンティティを確立し、米ソに巻き込まれず、独自の発言権を確保する事に成功しています。 そのためには核兵器の保有をせざるをえませんでしたが・・・」 
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その時オヒョウは、なぜフランスは核兵器を保有せざるを得なかったのか、理解できませんでした。 そしてその経緯を彼に教えてもらいました。 
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第二次大戦後、日本のマスコミはあまり報道しませんが、世界では「核の恫喝」が何度か行われています。 恫喝した国は、ソ連/ロシアです。恫喝された国はイスラエルとフランスです。 どちらも、その後核保有国になっています。(イスラエルの場合、公表されていませんが、彼らが核兵器を持つ事は、死海の水が塩辛いのと同じくらい周知の事実です) 
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フランスと英国はスエズ動乱(第二次中東戦争)でスエズ運河の権益を失いました。そもそも、スエズ運河はフランス人のレセップスが建設しました。膨大な資金が必要な事業であり、レセップスはスエズ運河株式会社の株式を販売すると同時に、宝くじの発行の許可を得て、フランスで資金を集めました。そして、当時エジプトは英国の属国でした。したがって、第二次大戦後も、フランスと英国はこの運河の利権を保持しました。 
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しかし、エジプトのナセル大統領(当時)が運河の国有化を宣言し、権益を失う事になると、英国とフランスは焦りました。 そこで軍事紛争となったのですが、稀代の策士であったナセル大統領はソ連を味方につけて、フランスに圧力をかけました。「手を引かなければ、核兵器を使うぞ」という核の恫喝です。 フランスは同盟国であるアメリカの応援を求めましたが、ついにアメリカは動きませんでした。英国はともかく、フランスのスエズ運河権益の為に、ソ連と核戦争をする訳にはいかなかったからです。  
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結局、フランスはスエズ運河を手放しましたが、その時、いざという時にアメリカが頼りにならないことを知ったフランスは、自力で核兵器を開発しました(米国から情報を盗んだとの説もありますが・・)。 
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純粋に核兵器の廃絶を願う日本人の立場からは、納得できませんが、フランスにとっては「核の恫喝」を受けた後、必要に迫られて核兵器を開発・配備した訳で、これは多くの国民が支持しました。 実際、フランスが核実験をした後、ソ連からの恫喝はピタリとなくなりました。スエズ運河は帰ってきませんでしたが、以後、フランスはアメリカに対しても、ソ連に対しても、独自の立場で交渉できるようになりました。 
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イスラエルも、パレスチナを支援するアラブ諸国との軋轢の中、ソ連からの「核の恫喝」を受けた事がありますが、イスラエルが核保有国と推定された後、ピタリと恫喝は止みました。もっとも、ソ連の方が、その後崩壊してしまいましたが・・・。 
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実際には使えない核兵器など無用の凶器であり、全く無駄な存在であると、多くの人が語りますが、外交交渉において、核兵器の有無は、すくなくとも1950年代までは影響力を持ったのです。 
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では翻って、日本の場合はどうか?といえば、日本も「核の恫喝」に近い事を言われた事があります。 
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ソ連崩壊後、経済的に疲弊していたロシアに対して、日本国内では北方領土変換要求が強まりました。首脳会談の度に、北方領土問題が提示される事に業を煮やした、当時の大統領エリツィンは日本国民に対して「我々が核兵器保有国である事を忘れてもらっては困る」とコメントしています。日本ではあまり報道されませんでしたが・・・。 
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しかし「核の恫喝」は両刃の剣です。 脅しで相手がおとなしくなる場合もありますが、逆に反発した相手が核保有国になってしまっては逆効果です。 ロシアは、日本が核兵器を持てない国であると見ぬいて恫喝したのでしょう。では中国は日本をどう見ているのか?

石原慎太郎が言うように、仮に日本が核保有国であったら尖閣列島での狼藉はなかったのか?そのあたりを、次号で検討します。

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夏炉冬扇

お早うございます。
ドゴール、懐かしいです。
「ジャッカルの日」だったか、読みました。
by 夏炉冬扇 (2010-10-06 07:12) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

私は「ジャッカルの日」は、TVで放映した映画で見ました。
たしかにドゴールのそっくりさんが登場していました。


またのコメントをお願いします。
by 笑うオヒョウ (2010-10-06 23:43) 

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