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【 胡瓜と総理大臣 】 [新潟県]

【 胡瓜と総理大臣 】 

朝、工場の同僚が雑談をしています。畑のキュウリが美味しくできあがり、毎朝畑でもいでいるとの事。ちょっとしたキュウリ自慢です。

「自分ちの畑で穫れたキュウリを食べると、スーパーで売っているキュウリなんて、不味くてとても食べられないね」

「全くだ。うちなんて、孫が来ても家の中に入らず、まっすぐに畑に行って、キュウリをもいで来るのさ。 孫もうちのキュウリが大好きで店で売っているキュウリなんて食べないよ」

畑も家庭菜園もないオヒョウとしては、黙って聞くしかありません。

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一般にスーパーなどで売っている野菜と、畑でとれたばかりの野菜では、味も栄養も違い、当然ながら後者の方が良いとされます。では、それはなぜでしょうか?

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雁屋哲の漫画「美味しんぼ」では、畑で完熟させたトマトこそ美味なるもので、完熟前に収穫した店頭で売っているトマトなど、賞味に値しないと切り捨てています。 トマトの場合、畑から店頭までの物流に要する時間や、店頭での販売可能期間の確保を考えれば、どうしても完熟前の緑色の段階で収穫しなければならない訳で、しかたないのですが、完熟度の違いは味に影響するでしょう。お店で野菜を買うしかない一般消費者には、どうしようもない事なのですが・・・。

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同じような話は、バナナでもあります。まだ緑色のうちに収穫し、倉庫内で炭酸ガスによって黄色にして店頭に並べる訳ですが、バナナ園で完熟したバナナを食べれば、もっと美味しいのかも知れません。

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しかし、キュウリの場合は、事情が違うようです。同じ様に畑のキュウリとお店のキュウリの味が違うとしても、理由は正反対の様です。そこで昔、母に聞いた話を思い出しました。

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母が教えてくれたのは、昔、家政学の授業で、母が学んだ科学実験です。野菜や果物の栄養価を同定する実験だったのですが、キュウリを分析してもなぜかビタミンCが抽出されません。緑色野菜の典型の様なキュウリだから、当然ビタミンCが含まれているだろうと予想したのですが、結果はゼロです。何度実験を繰り返しても同じ事なので、途方に暮れたところで、先生が、「そうです。このキュウリにビタミンCは無いのです」と説明されたそうです。

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なぜキュウリにビタミンCが無いのか?・・・母の長年の疑問でしたが、その解答はやがてオヒョウが知る事になります。実は取り立てのキュウリにはふんだんにビタミンCがあるのですが、急速に劣化して失われるとの事。 従って新鮮でないキュウリからはビタミンCが検出されないのです。

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つまり女子大で実験用に準備したキュウリは、店頭で調達したもので、新鮮ではなかった・・という事になります。先生はキュウリのビタミンCが急速に劣化する事を考え、敢えて家庭の台所に合わせて古いキュウリを用意したのか、それとも古いキュウリしか入手できなくて仕方なくそうしたのか・・不明です。 それにしても、先生はその事を学生に教えるべきだったのですが、なぜ言わなかったのか?言っても仕方なかったからなのか?

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子供の鋭敏な味覚は、ビタミンCの喪失と同時進行するであろう、味の劣化も感知し、新鮮なキュウリにこだわるのかも知れません。

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知らぬが仏とは言いませんが、キュウリの鮮度の劣化が早く、現在の流通機構ではそれに対応できない事を、社会的に訴えても、現実問題として解決策が無ければどうしようもありません。生鮮食料品を扱うスーパーマーケットからは、営業妨害だとクレームされるかも知れません。

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しかし、キュウリについては、これまで流通システムについて、いろいろな議論がされています。 例えば、まっすぐなキュウリには商品価値があるが、湾曲したものは捨てられるが、それは怪しからん・・とか、いや箱詰めの際、まっすぐでないとパッキング出来ないので湾曲品は逆に高くつくので使えないのだ・・とか、それなら福神漬の材料にすべきだ・・とか、オヒョウから見れば、くだらない議論ばかりがマスコミに登場します。

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それなら野菜の鮮度を確保する方法について、もっと議論すべきではないか?流通システムを変革すれば、改善の余地はあるはずで、全ての消費者が、畑でもぎ取ったばかりの完熟でかつ新鮮な野菜を食べる事が可能になるはずです。 しかしその議論はないなぁ。 干渉されたくない小売業者や流通業者が検討を妨害しているのかな?

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ところで、鮮度が肝心と言えば、日本の政治家もそうです。新政権が発足すれば、最初は高い支持率を示すのですが、急速に低下します。その下降曲線たるや指数関数的です。 その結果、どの政権も短命です。

サミットやG20に集まった各国の首脳から、「日本からの出席者は、毎回顔が違うね」と揶揄されたら、どう答えましょうか。オヒョウならこう言います。

「日本人は食べ物の鮮度に特にこだわる民族だ。同様に総理大臣も鮮度が劣化したら我々は支持しないのさ。 残念ながら昨今の政治家はまるで鯖かキュウリの様に急速に色褪せる。 だから交換するしかないのさ」 

「権力は必ず腐敗する・・と言ったのは、西欧の人だけど、我々は腐敗以前に、ビタミンCがなくなったら、人々は見向きもしないのさ」

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古いキュウリしか食べず、雑談の輪に入れないオヒョウですが、最後に一言、話しました。「博多の人々は、祇園山笠の期間はキュウリを食べないそうですね。旬の季節なのに勿体無いことです」

しかし、新潟人の同僚は、オヒョウの発言には無反応でした。


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おじゃまま

キュウリは「鮮度を食べるような果菜」と思っていましたが、
ホントにそうだったんですね…。
政治のハナシはおいといて(笑)キュウリのハナシは面白うございました。

by おじゃまま (2010-06-29 16:47) 

笑うオヒョウ

おじゃまま様 コメントありがとうございます。

自ら畑を耕さず、土にも触れない私には、新鮮な野菜を食べる資格がないのかも知れませんが、なかなか採れたての野菜を食べる機会がありません。 肉や魚、果物では必ずしも採れたてが美味しいとは限らず、食べごろがあると聞きますが、野菜はどうなのでしょうか? 今回とりあげたトマトとキュウリは間違いなく採れたてがよいようですが・・。
またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-06-29 17:33) 

夏炉冬扇

今晩は。
胡瓜の鮮度とビタミンの話参考になりました。

「朝取り」をお店にと言うのは産直でもムツカシイですよ。大方は前の日取り。選別、袋詰めす時間が入ります。

私の家の前の「無人売場」は朝取ってきて昼頃並べます。
by 夏炉冬扇 (2010-06-29 20:54) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

路傍の無人売場に置かれている野菜が一番新鮮で値段も安いという事がわかりましたが、
なかなか買う機会がありません。それにしても、無人売場が成り立つのは日本だけだろうな・・・と思います。 外国人に自慢できる日本のものに、畑の隣の無人売場・・というのをあげたいと思います。

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-06-30 12:20) 

上野まり子

こんにちは 上野まり子です。

きゅうりの話、興味深く拝見しました。
最近友人から趣味でなさっている畑で取れた野菜をいただきます。
その味は昔裏庭で祖父が家族のために育てていた野菜の味に
良く似ていました。
野菜にこんな深い味があったのかと再認識するとともに舌や記憶の劣化に深いため息が出ます。
総理の鮮度劣化には思わずうなずきます。
そのうち世界での政治の舞台に熟成が足りないからと
あげてもらえなくなるのではと心配になります。
by 上野まり子 (2010-07-01 02:42) 

笑うオヒョウ

上野様 コメントありがとうございます。

コメントを拝見して、アッと思ったのは、総理大臣の資質です。鮮度の劣化が早いと思ったのですが、熟成が足りない人物が、総理に就いているのが問題なのかも知れませんね。つまり、古くなったキュウリではなく、早く摘みすぎたトマト型の問題なのかも知れませんね。なるほど

またのコメントをお待ちします。

by 笑うオヒョウ (2010-07-01 08:23) 

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