【 道頓堀川浄化運動 】 [雑学]
【 道頓堀川浄化運動 】
以前、筒井康隆の「狂気の沙汰も金次第」という文庫本を店頭で見かけた事があります。カバーの絵は、トイレの便器の中に浸かり、顔を洗っている男の漫画です。
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トイレの水で顔を洗うという、はなはだ汚い冗談的発想は、それまでも下品なギャグで見かけていたので、目新しさは全く無かったのですが、この場合は、文庫本のタイトルとぴったりマッチしていたので記憶しています。確かに便器の水で顔を洗うというのは狂気の沙汰に近い・・・。
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しかし冗談ではなく、本当にそれを行う手合いがいるのです。大阪では、何かおめでたい事があると、道頓堀川に飛び込む輩がいるそうです。 おめでたいこと・・・というのは、主に応援するスポーツチームが優勝する事で、具体的には阪神タイガースがリーグ優勝した場合の事です。
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余談ですが、かつての南海ホークス、近鉄バッファローズ、阪急ブレーブスが優勝した時に、道頓堀川に人が飛び込んだという話を聞きません。ファナチックな阪神ファンに固有の行動か?と思っていましたが、そうではないことがわかりました。サッカーのワールドカップ南アフリカ大会で、日本が予選通過した際、川に飛び込む人が登場したそうです。うーむ、阪神ファンとサッカーファンは、同じ人々なのか?それとも、違うけれど、共通した行動パターンを有する人なのか?今度はカーネルサンダース人形の代わりに岡ちゃん人形を、放りこむのか・・・、岡ちゃん人形がなければ、代わりにオリックスの岡田監督の人形を放りこむのか、それも無ければ藤山寛美人形を放りこむのか・・などとくだらない事を寝不足の頭で考えます。
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ところで、大阪市当局は安全上の理由で、道頓堀川へのダイブを禁止しているそうですが、その規制は群集心理の前には無力です。
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そこでオヒョウは考えます。当局が規制しているのは、安全上の理由なのか、それとも衛生上の理由なのか? 実は道頓堀川の水質は極めて悪く、トイレの便器の中の水と同等・・・というか、排泄物を水で薄めた状態なのだそうです。
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水質が良いか悪いか・・は、主にCOD(化学的酸素要求量)、BOD(生物学的酸素要求量)で決まりますが、その他に大腸菌の数や水銀の有無も重要なポイントになります。
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道頓堀川の場合、COD,BODに加えて、大腸菌の数が問題なのでしょう。加えて、アンモニア臭と硫化水素臭となると、排泄物を水で希釈した状態・・・と言えるかもしれません。さらにインドールやスカトール、メタンチオール(メルカプタン)という化学物質があれば、トイレそのものです。
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その中に飛び込んだとして、その水が口に入れば、お腹をこわすかもしれませんし、目に入れば結膜炎になるかも知れません。まさに行政当局が、飛び込み防止を訴えるのは、衛生上当然です。
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それに・・・飛び込んだ後、全身ずぶ濡れ、かつ臭気を放つ状態で上陸しても、はた迷惑この上ない訳です。着替えたとしても、臭いは残りますし、電車に乗っても隣に立たれたくない存在です。
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阪神が優勝した時は、下着姿になって道頓堀川に飛び込んだ女性がいたそうですが、二重三重の意味で恥ずかしい行為の極致です。まさに「狂気のさた」ですが・・・、しかし、解決すべき問題は彼らの行動ではありません。 汚れた川を放置している行政当局の対応、川を汚して恥じない大阪市民の民度こそが問題であり、改善すべきはそこです。
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逆説的な言い方ですが、飛び込んでも衛生上全く問題ない状態の川にすることこそ、行政当局がなすべき課題です。 溺れる可能性という別の問題は残りますが・・・。
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大阪市民は、かつて東京に対してライバル意識を持っていました。東京都民(埼玉県民や神奈川県民も協力)が隅田川を浄化し、多摩川をきれいにして鮎の泳ぐ川にしたのに対して、淀川や、木津川、大和川の浄化は遅れています。
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一方、大阪府の失業率は全国最悪で、生活保護受給世帯数比率も全国最悪です。仕事を求めている人がたくさんいるなら、人手不足で川の浄化ができない・・という理屈は通りません。
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河川の浄化技術は、近年急速に進歩しました。 それでも最初に行うべきは、川底に堆積した不法投棄のゴミの回収など人手を要する作業です。 次に、水中に酸素やオゾンを吹きこんでBODやCODを下げ、更には納豆菌などのEM菌や化学薬品で水を浄化する事が可能です。最終段階として、琵琶湖水系などの家庭排水の水質規制を行えばいいのです。 工業排水の規制強化は言うまでもありません。
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今、大阪にはそれを実行するマンパワーは十分にあります。失業対策事業として環境改善に取り組むべきなのは勿論ですが、ボランティアも募るべきです。若い市民に橋から水に飛び込む元気があるなら、その元気を河川浄化のボランティア活動に回すべきです。
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今年、中国の上海は万博に浮かれていますが、会場の横を流れる黄浦江の水を写すTV報道はありません。ワイタンと呼ばれる旧市街と東方明珠塔や摩天楼が並ぶ浦東地区の間を流れるこの川は水質が悪く、とても泳げません。 長江下流もひどく汚染されています。
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地上には、見上げるばかりのきらびやかな建築が並び、繁栄を謳歌する中国の近代都市の足元は、実はひどく汚染されたままです。いかに経済成長がめざましくても、西側先進国の人々が危うさを感じる理由は、その点に象徴されます。
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今や大阪のライバルは、東京ではなく上海かも知れません。水の町、大阪の水質浄化は急務です。 次の阪神優勝までに・・なんて悠長な事は言えませんから、次のサッカーワールドカップ大会までに水質を改善する計画を立てるべきでしょう。
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もっとも、四万十川の清流のように綺麗になった道頓堀川に飛び込んでもつまらない・・という若者もいるかも知れません。 オヒョウにはその気持がちょっとわかります。ちょっとだけですが。
一度川ざらえをして水質はマシになったということですが、
それでもやはり…。下痢するそうですよ…。
いちどやればもうやらないそうです。
でも、死者もでていますから、飛び込んでもいい川になったとしても
やはり飛び込んではいけないと言い続けねば…。
by おじゃまま (2010-06-28 14:51)
おじゃまま様 コメントありがとうございます。
確かに、一度底ざらえしたとの話は、私も聞きました。確かその時にケンタッキーの人形が回収されたのですよね・・・。しかし、河川の浄化は、1回の底ざらえで済む話ではないと思います。執念深くやらないとだめではないか?・・と。私がイメージするのは、アニメ「千と千尋」で、ヘドロの神様が、最後に翁の面になって天に昇る場面です。道頓堀川の場合は、グリコのマークになって天に登っていくのでしょうか?
またのコメントをお願いします。
by 笑うオヒョウ (2010-06-28 15:05)
こんばんは。
北九州の紫川、きれいになっています。
by 夏炉冬扇 (2010-06-28 18:56)
夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。
そうですか・・・。紫川もきれいになりましたか。私の知る紫川は今ひとつきれいとは言えない状況でした・・・。紫川は、私には懐かしい名前です。家内やその両親は小倉の出身です。
私自身も紫川の河口の製鉄所に行った事が何度もあります。冬の間、製鉄所からの温排水が流れる流路に沿って、カモメがおりているのを見て、カモメも暖をとりたいのか?それとも温排水の流路に沿って餌の魚が泳いでいるのか?と考えた事があります。
またのコメントをお願いします。
by 笑うオヒョウ (2010-06-29 08:13)