【 沈みっぱなしの太陽 その1 】 [航空]
【 沈みっぱなしの太陽 その1 】
JALの経営再建が、うまく行っているように見えません。 希望退職と路線縮小・撤退はそれぞれ、内容が明確になりましたが、それだけで業績がV字回復とはならないでしょう。 希望退職者が具体的に何時会社を離籍し、何時から経理上の改善効果が現れるのかが流動的ですし、地方路線の撤退についても、自治体や行政の猛反発が予想されますから、簡単にはいかないでしょう。
・・・・・・
稲盛氏というカリスマ経営者をトップに据えたのは、商売人の感覚が希薄な社員の意識改革をするためでしょうが、稲盛氏の発言を聞くと、いまだ評論家的な感覚で、日本航空の責任者という自覚がないみたいです。
・・・・・・
そもそも、稲盛氏は事業の縮小撤退に手腕を発揮する”殿軍の将軍”には向いていません。どちらかと言えば、”進軍の先頭に立つ将軍”です。
・・・・・・
そしてなにより日本航空の再建は、不採算路線や不採算事業から撤退・縮小すれば、採算が改善して均衡するという単純なものではありません。輸送事業には、基本的にスケールメリットがあり、事業規模が大きい方が採算がよくなります。事業規模が大きく、カバーする地域が広ければ、お客の利便性はよくなりますし、本社費用などの負荷が小さくなるからです。
・・・・・・
事業規模を縮小する事は、現時点でやむをえない事ですが、それだけやれば事足りるという話ではありません。
・・・・・・
ではどうするか?例によってオヒョウの無責任な提案ですが、対策はあります。同社の改革では、昔の国鉄分割民営化の手法が参考になります。
1. キメの細かい経営を実現するために企業を分割する。
2. ありとあらゆる手段を用いて有利子負債を圧縮する。
3. ドル箱路線を確保する。
4. 希望退職募集ではなく、社員を一旦解雇して再雇用する形にする。
5. 複雑な割引や安売り、無料チケットの配布は最小限にする。
・・・・・・
1.の事業分割については、別稿に譲るとして、2.3.4.5.の理由について、少し触れます。
・・・・・・
2. 有利子負債の圧縮
企業経営が左前になると、どんどん借金が増え、稼いでもお金が利払いに廻って、財務体質強化が実現できなくなります。 ここは日本航空が持つ航空機や不動産を国が買い上げ、リースの形で日本航空に貸し出すのが適当かも知れません。 一種の税金投入ですが、同社のキャッシュフローを改善できます。 そして機材のリース化は、旧式のジャンボを新型機に更新するためには適切な手段です。 燃費が悪く、シートマイルコストの高い機材を使用していては、会社の再建はできません。JRの民営化でも、長期負債を清算事業団が引受け、分割された各社には、多くの新しい車両が与えられました。
・・・・・・
3.ドル箱路線の確立
欧米のエアラインから見れば、日本航空の経営不振は不思議かも知れません。だって、札幌=東京線は、世界的にみてもっとも利用客の多いドル箱路線ですし、東京=大阪線や、東京=福岡線も非常に利用客が多い路線です。 しかも、エアラインは数社しかなく競争は米国ほど激しくありません。 それなのに、なぜ日本航空は赤字なのか?
・・・・・・
国鉄の分割民営化が成功だったかは、軽々に言えませんが、人々が鉄道事業に悲観的にならなくて済んだのは、JR東海が引き受けた東海道新幹線がドル箱だったからです。日本航空も同じビジネスを持つべきです。
・・・・・・
具体的には・・・、エアバスA380のSRタイプを注文し、全席エコノミーで1000人乗れる飛行機を、シャトル便にして飛ばします。ちなみに、SRとは(Short Range)の略で、ジャンボ機ボーイング747の日本の国内線仕様の名前です。 多くのお客を乗せて、短距離を飛び、高頻度で離着陸する様に特化しています。A380でも同様のものを作り、東京=大阪間を飛ばせば、ビジネスとして成立します。 ライバルとなる新幹線のぞみの乗客定員を約1500人とすると、その2/3の乗客を、1機に搭乗させるのです。それなら30分間隔で離陸しても満席にできます。
・・・・・・
シャトル便として羽田と伊丹を往復し、搭乗手続きは極力簡素化し、サウスウエスト航空の様に、座席予約システムは無くします。手荷物検査や金属探知検査を含めても、カウンター到着から10分以内に機内に座り、20分以内に、ボーディングブリッジが外れて離陸できる様にします。 そして片道の運賃をディスカウントなしで、一律15000円にすれば、必ず儲かります。 いや多分儲かります。・・・いえ、ひょっとしたら儲かるかも知れません。 あまり、自信はありませんが・・・。
・・・・・・
ドル箱路線を持ち、事業の将来に希望を見いだせなければ、会社の再建は失敗します。
・・・・・・
4.解雇と再雇用の形で労務問題を解決する。
どの会社でもそうですが、希望退職を募れば、優秀な人から辞めていきます。転職先も多く、条件もいいからです。希望退職で頭数の調整はできますが、残った人の平均レベルは低くなり戦力ダウンは免れません。そして、会社再建の阻害要因となる先鋭な組合活動家を排除する事はできません。 とるべき方法は荒療治ですが国鉄清算事業団方式です。日本航空の再建に役立つ人だけを再雇用するのです。
・・・・・・
5.割引切符やマイレージの無料切符の発行を最小限にする。
マイレージサービスは経営者にとって麻薬です。当座のキャッシュアウトなしに、お客に強烈なインセンティブを与える事ができます。マイレージサービスは、とりも直さず、将来のタダ券発行なのですから明確なコストであり、ツケを将来に回す事になりますが、それがあまり表に出ません。マイレージサービスを利用して、無料航空券で乗る客がいても、空席で空気を運ぶ代わりに人が乗るだけ・・・と考えて、コストを不当に軽視すべきではありません。
・・・・・・
パンナムが潰れた際、最後の頃は、乗客の1/3がタダ券の利用者だったと言われています。 そう言えばパンナムも日本航空と同様、ジャンボを多く飛ばしていました。
・・・・・・
稲盛氏がCEOに就任した際、経営再建の為に、相当の荒療治をすると予想していたのですが、今のところ、通り一遍の、人減らしと路線の縮小撤退しかしていません。きくならく、稲盛氏が主宰する団体に日本航空の割引優待券が配られていた・・・という事ですが、それではだめでしょう。
以下 次号
お早うございます。
飛行機はいつ予約しても「安価」にしてもらいたいものです。
シャトル便いいですね。
by 夏炉冬扇 (2010-06-20 06:21)
夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。
私が講釈するのも、おこがましいのですが、利用者側からみると一物一価の原則が、安心できてありがたいと思います。 高価な航空運賃を払って乗りながら、隣の席の乗客が、法外に安い料金で搭乗していたりすると、やはり不愉快であり、航空会社や代理店に対して不信感を持ってしまいます。
航空会社から見たら、安くても空席を埋めてくれれば、空気を運ぶよりはましと思うでしょうし、 もともとの正規運賃は高いのであり、そこから値引きする分には、エアラインが損して、乗客は得をするのだから文句はないだろうという発想でしょうが、果たしてそうでしょうか?
一時期、米国ではMBAあたりが知恵を駆使して、価格を変動化させて利益をあげる方法を編み出しましたが、一物一価の原則を忘れた結果、いつかしっぺ返しを食らうぞ・・・と飛行機に乗る度に、オヒョウは考えます。
またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-06-21 15:17)
失礼しました。補足しますが、伊丹空港には現在4発のジェット機は運行出来ません。
お詫びして訂正します。
だからA380を飛ばすには、特例措置が必要ですが、それ以前に伊丹空港が無くなるかもしれませんね。
by 笑うオヒョウ (2010-06-21 17:22)
再び失礼しました。JALは 会社更生法の適用を受けて、借金は一応チャラになっていますが、資金繰りは相変わらず厳しいはずです。
有利子負債の圧縮という表現は、不正確ですが、所有する機材や不動産を処分して資金繰りを改善する必要は依然としてあるはずです。
私が言いたかったのはその点です。 表現についてはお詫びして訂正します。
by 笑うオヒョウ (2010-06-21 17:39)