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【 山本五十六記念館 その3 親ドイツ派との対立 】 [新潟県]

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【 山本五十六記念館 その3 親ドイツ派との対立 】 

誰もが口を揃えて言うのですが、山本や米内、井上らは、米国に負けた以前に、日本国内の親ドイツ派に負けた・・のだそうです。

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陸海軍に限った事ではなく、明治期~太平洋戦の間の知識階級の間では、親英米派と親ドイツ派が存在したように思います。今回は五十六を離れて、親ドイツ派について考察します。

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オヒョウが思い出すのは、中学校の時に聞いた、中川善之助先生の講演です。 ちなみに、ドイツ法学(民法)の泰斗であった中川先生は長く東北大学で教鞭を取られ、今でもキャンパス内に中善並木と言う名前の通りがあるそうです。 一教官の名前が、キャンパスの地名に採用された例は、これと東大本郷キャンパスの矢内原門の2つしかない・・・とオヒョウは思っています。(他にありましたら、ご教示を)。

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以前、東北大学の法学部を卒業した女性に中川善之助の話をしたところ、彼女はその存在を知りませんでした。 東北大学の金属工学科を卒業した人達にも尋ねましたが、ひとりを除いて彼らも知りませんでした。(まあ冶金屋は知らなくても仕方ありませんが)。

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その中川善之助先生が、オヒョウの中学校で昔話をされた事があります。「私が、大学でドイツ法学を学んでいた頃、第一次大戦があり、ドイツが敗北した。 私はドイツが滅んだのに、このままドイツ法学を学び続けるべきか悩んで教授に相談した。その時、先生は『国が滅んでも、ドイツ法学が滅ぶ訳ではない。研究を続けたまえ』と言われて、私は迷いが吹っ切れた」というエピソードです。

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国家が滅んでも、文化や学問、芸術が滅ぶ訳ではない・・というのはその通りです。 (一応)第一次大戦の戦勝国であった日本は、敗戦国のドイツを侮る事なく、自然科学の分野でも芸術でも社会科学でも、レスペクトする状態が続きました。

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そのドイツへの偏愛的な思い入れが、ワイマール共和国後に成立したチンピラ政権とも言うべきナチスドイツに日本が肩入れする事につながり、やがて国を破滅させた・・とオヒョウは考えます。

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しかし、このドイツへのレスペクトというのは、日本だけではないのです。中国に暮らして、彼らも似た思いを持つ事を知りました。第一次大戦前、山東半島(青島)の辺りは、ドイツの植民地でした。当然、中国人はそのドイツに対して反感を抱いてよいのですが、実態はそうではありません。 ドイツが持ち込んだワイン醸造技術は見事に開花し、ビールの醸造技術もドイツに学んだもの・・と中国人は理解します。山東省の長城ワインも青島ビールも、いまや生産量世界一です。

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かつてドイツ風の街並みだったという青島は、巨大な近代都市になってその面影をなくし、一部の人からは惜しまれています。黄海の対岸にある遼東半島の大連がロシア風の街並みを残すのとは対象的です。

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ワインやビールだけではありません。 つい10年前まで、中国を走る乗用車はほとんどドイツ車でした(中国との合弁メーカー製)。上海浦東空港と都心を結ぶリニアモーターカーはドイツのそれです。上海の地下鉄1号線はシーメンスです。

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本当は技術と品質に関しては、日本製もドイツ製と並んで素晴らしい事を彼らは知っていますが、日本をレスペクトする事には心理的に抵抗があるのかも知れません。

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そして、それをよく理解できるのは、トイレです。中国ではトイレの便器は、品質ではTOTOブランドを最上としますが、高級イメージではKohlerブランドも互角です。中国では、マイホームを購入した同僚にトイレの便器を自慢された事がありますが、それはKohlerブランドでした。便器はともかく、中国人はドイツの技術とドイツ製品が好きなのです。

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脱線が長くなりましたが、戦前の日本にもドイツファンがたくさんいた訳です。 そして親英米派と対立した訳でしょうが・・・、悲しいかな、両方について詳しく、中立的な立場から判断できる人がいなかったのでしょう。 アメリカ人にも、イギリス人にも、ドイツ人にも尊敬にあたいする友人を持ち、ドイツの実力もアメリカの実力も知っている人が、政府や軍部の指導者にいたなら、太平洋戦争は避けられたかも知れません。

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山本五十六の遺品には、オーストリアのウィーンからの葉書があります。しかし、彼はドイツについては、詳しくなかったのかも知れません。彼が海軍兵学校で選んだ第二外国語が、ドイツ語なのかフランス語なのか・・・、記念館にはそれを示す資料はありませんでした。


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