SSブログ

【 IRSID型を目指すか? 】 [鉄鋼]

【 IRSID型を目指すか? 】 

先日の新聞記事に、神戸製鋼が中期計画で売上高と経常利益を大幅に増やす計画を立てました。 グループ売上高は数年以内に年間3兆円を目指すとの事ですから、現在の1.5倍程度です。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100414/biz1004141707022-n1.htm

もっとも、この目標達成期限は、明示されていませんから、どの程度野心的な計画かは何とも言えませんが・・・。

・・・・・・

しかし、売上高の目標達成は意外に簡単かも知れません。なぜなら、鉄鉱石も石炭も、今後大幅に値上がりする気配だからです。既に鉄鉱石は90%も上がっています。原材料費の上昇分をそのまま製品価格に反映させれば、売上高40%アップなど簡単です。

・・・・・・

問題は、原材料のコストアップ分をそのまま製品価格に転嫁できるかですが、それはともかく、そのような形で、売上高が水ぶくれしても、真の意味で経営規模が拡大する事にはなりません。原材料費や売上高が上昇しても、それに比例して間接費を上げる事はできないでしょう。 人件費や研究開発費を、原料費や売上高に比例させれば、労働コストの安い中進国の製鉄会社にたちまち負けてしまいます。

・・・・・・

おそらくは、原材料の値上がり分を圧縮して製品価格に転嫁し、その差は、自社の経営努力・・つまり合理化でかぶる形になります。ちなみにJFEグループは、普通鋼でも、販売価格を原料市況連動型にするそうです。

・・・・・・

そうなると高炉メーカーの、売上高に対する研究開発費の比率はどんどん低下していきます。オヒョウは、研究開発費を減らした素材メーカーの末路を知っています。 かつて米国にも大手鉄鋼メーカー5社がありましたが、自社の研究開発を止めて、日本からの技術導入などに頼り、没落していきました。 米国の需要家もそれなりに厳しく、自社技術を持たない素材メーカーは淘汰されていったのです。

・・・・・・

日本も、研究開発を怠り、これ以上経営環境が厳しくなると同じ運命です。そして日本の鉄鋼も、研究開発を行う基礎体力が低下しています。工学部の冶金工学科や金属工学科は、学生が集まらなくなり、学科名を変えて、希望者を募っていますが、それでも将来研究者として育つ人材は不足しています。 旧帝国大学の立派な伝統がある学科でも、今大学院生は、アジアからの留学生が多くを占めているのです。学会で発表される論文の著者名にも日本人でない人の名前が多くあります。 

・・・・・・

ああ、これはどこかで見た光景だ!今から20年前、カナダの大学がそうでした。一流大学の一流の研究室でも、研究の中心となる大学院生は、アジアからの留学生が主体でした。「彼らは学位をとったら、故国へ帰るのか、あるいは大学に残るのか・・、人様々だけど、多分、地元の製鉄会社には入らないだろうな・・」と思い、近い将来、北米の鉄鋼業は衰退するだろうとオヒョウは考えました。

・・・・・・

予想はあたりました。 そして、同じ様な現象が、日本でも起こっているのです。 今、製鉄業界で元気がいいのは中国人とインド人です。(製鉄業に限らず、製造業全般で言える事ですが)。

・・・・・・

では、このまま、日本の製鉄業が衰退してもいいのか?といえば、そうも行きません。( 個人的にはもう滅んでもいいと思いますが・・・・ )。地球規模の環境問題を抱え、製鉄業には社会的責任があり、いやがうえにも、技術開発を行わなければならないからです。

・・・・・・

具体的には、地球温暖化ガスの発生を減らした製鉄法。リサイクル率を極限まで高める循環型社会の確立、資源枯渇に対応した低品位原料の有効利用の研究、電気自動車などの新技術に必要な新素材の開発など、やらなければならないテーマが目白押しです。 ちょっとうらやましいくらいです。

・・・・・・

しかし、それらは、どれも巨額の費用がかかる研究です。一方で、研究開発費は削られ、優秀な研究者たる人材は不足・・・となると、どうするか?

・・・・・・

オヒョウの提案は、日本の鉄鋼各社の研究開発部門だけを統合し、1箇所にまとめるものです。そもそも、今の日本は製鉄会社が多過ぎます。日本の経済規模であれば高炉メーカーは2社で十分です。1社あたりの粗鋼生産量が年間5000万tというのが、ひとつの目安です。

・・・・・・

製鉄会社の合併が難しいとしても、研究部門の合併、整理統合は可能です。 フランスにかつて複数の製鉄会社があった頃、いちはやく研究所だけを統合しました。研究所の名前はIRSIDで、かなり意欲的な研究をして多くの論文を出していました(オヒョウが読んだのは、連続鋳造関連のものだけで、しかもフランス語のものは読めませんでしたが・・・)。

・・・・・・

その後、フランスの製鉄会社は1社に統一され、さらにルクセンブルクの製鉄会社に買収され、その会社も今はインド人のミッタルに買収されました。 でも、フランス独自の製鉄技術の最後の段階でIRSIDの研究は光っていました。 ちょうどロウソクが消える直前に輝くみたいに。

・・・・・・

だから日本も、日本版IRSIDを作ってはどうでしょうか?そして画期的な新素材や、革新的な製鉄技術を発明するのです。その後は、香港なり、台湾なり、インドなりの製鉄会社に買収されても結構ですから・・・。

・・・・・・

なに?非国民みたいなことを言うな?ですか。でも、鉄鋼・冶金を学ぼうという日本人学生自体が、もういないじゃありませんか・・。


nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。