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【 メガフロートの怪 】 [雑学]

【 メガフロートの怪 】 

今は、某製鉄会社の執行役員をしているT君が、入社した時に同期のオヒョウに語った事があります。

「去年の五月祭では、船舶工学科でメガフロートの模型を作って池に浮かべて展示したところ、大変な反響があった」

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ちょうど関西新空港の建設が話題にのぼった時で、埋立工法で行くのか、メガフロートで行くのか・・という議論があった頃です。その模型とは空き缶を束ねただけのちゃちなものだったそうです。それなら小学生がペットボトルを束にして作った筏と同じなのに、それが三四郎池に浮かぶと、とたんにありがたみが増すというのが実にバカバカしいところです。T君はその事を揶揄したかったのか、自慢したかったのか、それは分かりません。

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メガフロートとは、実に不思議なものです。一般には海上空港を建設する際、メガフロートは埋立方式に代わる海洋構造物と理解されています。計算では、関西新空港の場合、メガフロートは埋立方式に比べ1割程度建設コストが安かったはずです。

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メガフロートは、技術的には既存の巨大タンカーの建造技術の延長上で、それほど目新しいものではありません。問題は、波長の長い波浪や海面のうねりの為に、構造物をたわませる力がかかる事で、蝶番機構か緩衝装置が必要になる場合もありえます。(実際、波のうねりの力で大型タンカーが折れた事もあります)。後は、造船所から設営地までの移動で、分割して曳航する事になりますが、巨大構造物ですから大変です。

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ある巨大施設を陸上に建設しようとして、地元に反対されたり、用地取得がままならない場合に、メガフロートは便利です。基本的に行政の海面(内水面も)使用許可さえあれば建設できますし、海の環境破壊の程度も、埋立方式に比べれば、軽いとされます。

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前述の通り、海上の飛行場での応用が第一番に考えられますが、発電所やゴミ処理場、下水の週末処理場や火葬場などに使う事も可能だと思われます。

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海に浮かぶ滑走路という点で、巨大な航空母艦と錯覚する人もいますが、全然違います。 航空母艦は移動できる事が特徴ですが、メガフロートの飛行場は設営したら動かさない事が前提です。だから、軍用飛行場にメガフロートを用いても、他国への脅威だとか、専守防衛との兼ね合いはあまり考えなくてもいい・・・(とオヒョウは考えます)。

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それほどメリットが大きいメガフロートですが、実際に用いられた事はありません。それには多くの理由があります。

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1.造船会社の熱意が中途半端。

造船会社は、造船不況になって注文が途絶えると、ドックを埋める為に様々な鋼製の構造物を提案します。メガフロートもその一つです。逆に、好況になると、付加価値が低く単価が安いメガフロートの事を忘れて、船を造り出します。メガフロートが造船各社から提案されるのは、ほぼ20年置きに来る、造船不況時だけです。 今、造船会社は合併と新造船ドックの集約が進み、設備能力の過剰感が少ない状況です。だからメーカーはあまり乗り気でありません。

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2.行政はやはり土建会社の利権を重視する事。

大規模施設を建設する際は、地元の協力が不可欠です。そして地元にお金が落ちたり、雇用を創出する形でないと、協力してもらえません。そして、地元の利益代表というか、元締めはしばしば土建業者です。そうなると、遠くから完成した鋼構造物を運んできて、据え付けるだけのメガフロートは、地元に歓迎されません。

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3.外国が真似する事。

メガフロートの建造技術は、それほど目新しいものではありません。船舶に比べても、差別化の要素の少ない製品です。そして実力を付けてきた、韓国や中国の造船所が同じものをつくれば、かなり安価にできます。そうなれば、せっかく日本で開発したメガフロートも、外国の造船所に「トンビに油揚げを盗られる」形になります。

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だから、現れては消える、メガフロートの話ですが、ここに来て、沖縄の普天間飛行場の移設先に、辺野古沖の海上にメガフロートを建設する案がでています。

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ただ、技術的には問題があります。 メガフロートのメリットが発揮できるのはポンツーン方式(浮橋方式)ですが、波の荒い辺野古の海岸はQIP工法(杭をたくさん打つ方式:セミサブ方式)がいいとされます。

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しかし、米軍はテロ防止の観点から、QIP工法のメガフロートを拒否しています。しかし、彼らが難色を示したのは、技術的に解決できる問題で、本質的な困難がある訳ではありません。

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オヒョウは別の観点から、辺野古沖にメガフロートを建設すべきだと思います。それは海洋構造物の寿命に着目するからです。

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メガフロートは、メンテナンスを的確に行い、腐食防止対策をすれば、寿命は半永久的です。具体的にはスプラッシュゾーンをチタンクラッド鋼板にするという方法ですが、それをしなければ、普通の船舶と同じ様に20年ほどで寿命になります。 あくまで移設先の海兵隊基地は暫定的なものだと地元に約束し、米軍にそれを示すために、わざと防錆性能を手抜きしたメガフロートを建設するのです。

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やがて、20年後に鋼製の滑走路は錆びてボロボロになります。それまでに海兵隊は本国へ引き上げろ・・という事になります。さらに言えば、それまでに極東の国際情勢を安定したものにするという宿題が為政者には課せられます。 我ながら面白いタイムリミットの設定方法です。

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(一応)理科系宰相の鳩山さんなら、海水で滑走路が錆びる事を理解するかも知れません。そして賛成するかも知れません。なぜなら宿題の期限の20年後には、自分は責任を取る立場にいない事が明らかだからです。


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