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【 ハイポキシアを防げ 】 [中国]

【 ハイポキシアを防げ 】 

中国青海省で発生した大地震の死者が2000人を超えました。大都会で発生した阪神淡路大震災の死者数が6000人ですから、山間僻地の地震で2000人以上の死者・・という訳で、非常に激しい地震であった事がわかります。

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それなのに、日本で大事件としてあまり注目されないのは、

1.少し前にチリで大地震があり、さらにその前にはハイチで桁違いに大きな被害を出した地震があり、それと比較して小規模に思えるから。

2.2年前の四川大地震と比較して小さな地震だから。

3.中国が外国からの支援申請を断り、報道内容も統制されているから。

という事情があるからでしょう。

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しかし、今度の地震では、興味深い(というと不謹慎ですが)ポイントが幾つかあります。一つは、現地が標高4000mの高地で酸素が少ない事。その為、報道関係者のひとりが高山病で亡くなったとの事です。この患者は風邪を引いたあと、肺水腫になって、助からなかったという事で、ただの高山病とは言えないかも知れませんが、高地での行動が引き金になったのは事実でしょう。 http://mainichi.jp/select/world/news/20100420ddm007030144000c.html

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この患者は発病後、青海省から甘粛省蘭州市まで移送されそこの病院で治療を受けたそうですが、重篤な容態で長距離を運ぶとはいささか乱暴です。 自動車で運べる距離ではありませんし、もし移送に飛行機を使用したなら、仮に与圧があったとしても、気圧は下界より低いので高山病で低酸素症になった人には辛いはずです。まして非与圧の軍用機で運んだりしたのなら論外です。

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例えて言うなら、日射病の患者を炎天下に病院まで運ぶようなものでしょうか?

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急に気圧が下がった場合、身体がそれに追従できずホメオスタシス(恒常性維持機能)が対応できなくなるのが高山病で、その対策は時間をかけて高度馴化する事が一般的です。 しかし地震の被災地に駆けつけて、救援活動を行うには、馴化に費やすその時間がありません。 ではどうするか?

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高山病は、低酸素症をもたらすという点で、航空医学のハイポキシアと共通しています。ハイポキシアとは与圧されていない航空機のキャビンで酸素を吸わない場合に、発症する低酸素症で古くて新しい病気です。航空機は急速に高度を上げますから、馴化などは全く不可能です。つまりハイポキシアは高山病がより極端な形で現れたもので、原因と対策には共通点が多くあります。最も基本的な対策は酸素を吸う事です。

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今回の様に、高地で災害が発生して、大規模な部隊を派遣する必要が生じた場合、対策は3つあります。

1.救援部隊も高地民族で構成する。チベット自治区(西蔵自治区)の人達で救援部隊を組織すれば、もともと高度馴化した人達ですから、問題ありません。

2.空軍兵士や空挺部隊等、低酸素の環境下での仕事に慣れている人を選抜して救援部隊を組織する。

3.通常の救援物資に加えて、大量の酸素ボンベを携行する。

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今回は、政治的配慮が強すぎました。漢民族と少数民族の融和を演出するために、低地に暮らす漢民族の部隊を送り込み、献身的に救助・救援にあたる姿をTVで放映しましたが、救助にあたった本人達は大変だったはずです。

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高地の事はやはり高地の人々で対応するのが適切です。低酸素の問題だけでなく、言葉の問題も生活習慣の問題も最小限になります。 それで少数民族が団結して中央政府に反発して、反乱や暴動が起こるというのなら、これは中央政府の方の問題で、地震の問題ではありません。

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古来、中国では天変地異に乗じて革命が起こったり、政権交代があったと言いますが、現代中国の為政者がそんな事を気にしてはいけません。

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また中国政府は、四川大地震の時と違い、外国からの応援を断ったという事ですが愚かな事です。いろいろうまく活用する方法があります。中国政府は、貧しい少数民族が暮らす土地を外国に見られたくないとか、中央政府の統制に対して反乱の恐れがある地域を外国に知られたくないとか、外国の援助に頼るところを国民に見せたくないという思惑があるのかも知れませんが、つまらない事を考えるものです。

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オヒョウなら、大量の酸素ボンベ、及び酸素発生器、コンプレッサーなどの応援を外国に頼みます。 そして救助活動にあたる漢民族の救助隊員には、ふんだんに酸素を吸わせて、彼らの健康維持と、作業能率維持を図ります。 外国から提供される救援物資が食料や医薬品、毛布やテントなら、国旗や国名が書いてあって、中国政府の面子が潰れますが、酸素には国旗も国名も書いてありません。 日本で圧搾した酸素でも、吸って吐いた後は中国の空気です。

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もう一つ、ひっかかるのは救援活動にあたる重機です。パワーショベルもブルドーザーもエンジンはディーゼルエンジンですから当然、高地では出力が低下します。 建機メーカー各社は高地作業用の特殊モデルを用意すべきです。 幸いにしてディ-ゼルエンジンは過給機との相性が非常にいいエンジンです。スーパーチャージャーやターボチャージャーをボルトオンするだけで、高地でも出力を回復できます。そのまま、低地に持っていけば、出力はさらにあがります。

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中国製建設機械は、安価である事で世界市場を席捲しつつありますが、値段が安いだけでは早晩行き詰まります。何らかの特色を出して差別化する必要があります。エンジンに過給機を備え、キャビンのヒーターを強化し、可動部の凍結防止装置を備えた、高地用のパワーショベルなどを開発すれば売れるのに・・とオヒョウは思います。 さしあたり、高地と平地の境界の四川省成都にあるコベルコ建機あたりが研究してはどうか?と思うのですが。

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かつて中国の為政者は、中原に鹿を追う事ばかり考えていました。今の北京政府は、少数民族を慰撫するためにも、中原ではなく辺境の高原で羊を追う事も考えるべきでしょう。 救援隊が酸素を持たなかった事、高地仕様の重機を持たなかった事は、今回の地震の大きな教訓です。


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雪紘

今回の中国の地震の報道があまりなされていないのは気になっていましたが…
規制に加え、いろいろな事情があるのですね;;

現地の方々の安全を祈るばかりです。。。
by 雪紘 (2010-04-23 12:58) 

笑うオヒョウ

雪紘様 コメントありがとうございます。

同じ規模の地震にみまわれても、どこの国のどの地域で地震にあうかで、
被害の程度は随分ちがうようです。日本は地震国ですが、住宅の耐震性や
災害救助体制を見る限り、恵まれた方です。 私が暮らす新潟県では過去に新潟地震、中越地震、中越沖地震と50年間に3回、大地震がありましたが、
被害はどんどん小さくなっています。 その点、中国の辺境の人たちは気の毒です。中国政府は宇宙船を飛ばしたり、空母を作る前に、学校の校舎を耐震建築にすべきだと、私は思います。 中国政府はそのあたりを非難されたくないので、報道を規制するのでしょうか・・・。
by 笑うオヒョウ (2010-04-24 02:51) 

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