【 3月20日のパンダ 】
【 3月20日のパンダ 】
読者諸兄は、世界で一番短い手紙というのをご存知でしょうか?フランスの文豪ビクトール・ユーゴーがレ・ミゼラブルを出版した際、その評判が気になるので、出版社に問い合わせたのだそうです。内容は簡潔明瞭で、「売れ行きはどうか?」の意味を示す疑問符「?」のみ。
・・・・・・
出版社の方も心得たもので「爆発的な売れ行きだぞ!」という意味を示す感嘆符「!」のみ。 これで互いに通じたというのですから不思議です。村上春樹の「1Q84」ではあるまいし、情報メディアの乏しかったその頃、小説の前評判の情報がそれほどあったとは思えません。それにレ・ミゼラブルは大変な長編小説ですから、読み終えた人がその読評を語るには、相当の時間差が必要です。発売当初から爆発的に売れた・・とは思えないのですが。
・・・・・・
一方、世界で一番短い携帯Eメールは、オヒョウのメールでしょう。長男の大学受験の合格発表日に、単身赴任で離れて暮らす私は家族の携帯電話に問い合せて、受験の結果を知りました。
・・・・・・
試しに受けた私立の合格発表日に「?」を送信すると、返信は「○」。その後に「但し、入学の意思は無いので、入学手続きはしない」との文が続きます。国立大学の前期日程の合格発表日に、「?」を送信すると、返信は「×」。 やれやれ後期日程にかけるしかないか・・・。
・・・・・・
やがて後期日程の試験結果が明らかになりました。 その日オヒョウは所用で新潟にいました。 その出先から携帯電話に「?」を入力しましたが、しばらくして届いた返事は「×」でした。
・・・・・・
やれやれ、浪人確定か。どうやって息子を慰めようか・・とオヒョウは考えました。 どうせなら「世界一格調高い負け惜しみの文」を考えよう・・・。
・・・・・・
「かつてフランスの最高学府、エコール・ポリテクニークは天才数学者のガロアを2度までも入学試験で不合格にした。 その結果、彼の才能を見抜けなかった愚かな試験官と、この学校は、かえってその事で自らの名誉を失った。 お前も、後年、××大学に恥をかかせるくらいの仕事をしろ」
・・・・・・
うーむ、でもこの喩えは逆効果かも知れないな。第一、息子はガロアなんて知らないだろうな。多分高校生では群論も知らないだろうし。高校生で群論を理解しているなら、そもそも浪人はすまいて・・・。
・・・・・・
そしてオヒョウは、ン十年前の自分の時の事を思い出しました。
・・・・・・
オヒョウが大学を受験したのは、センター試験も共通一次試験も無かった頃です。 国立大学にはⅠ期校とⅡ期校の2種類があり、オヒョウの受験した某Ⅰ期校の二次試験の結果は、毎年3月20日に発表されました。御殿下グラウンドという場所に掲示された合格発表を見て、合格した者は合格した者どうし、不合格の者は不合格の者どうし、学校を出て歩きます。失意のオヒョウは、なんとなく不忍池を廻って歩き、上野に着きました。
・・・・・・
ご承知の方も多いのでしょうが、実は3月20日は合格発表日であると同時に、上野動物園の開園記念日であり、その日は毎年無料で開放されます。 ぼんやり入っていくと、それほど混んではいない春の動物園ですが、パンダ舎の前には順番待ちの列があります。そこには、まだ生きていた上野公園のパンダがいました。 オヒョウが日本でパンダを見たのはその一度きりです。
・・・・・・
だから、パンダを見るとその日の事を思い出すような気がしますが、実はそれ以来、私は上野動物園に行っていませんし、日本ではパンダを見ていません。そして現在、上野動物園にはもうパンダはいないそうです。
オヒョウの息子が、今日の記憶をどういう形で留めるかは・・分かりません。
残念でしたね…。
パンダと合格発表、妙なところで出会いがあったものです。
by おじゃまま (2010-03-22 16:42)
こんにちは上野まり子です。
ご本人にとっては人生での初めての挫折になるかも知れませんが
長い人生において高校受験や大学受験での
1年や2年の足踏みはたいしたことはないと思います。
そのことによりレベルを下げることのほうがその後の人生にとって
重大な痛手となるでしょう。
もう一度トライし、最も学びたい学校に行くことをお勧めします。
by 上野まり子 (2010-03-23 01:09)
おじゃまま様、上野まり子様 コメントをありがとうございます。
慰めと励ましのお言葉は、そのまま本人に伝えます。
私にとって気がかりなのは、本人が、何時どの様に立ち直るかです。
わが子ながら、長男がどの程度たくましく育っているか、
ちょっと自信がないのです。
またのコメントをお願いします。
by 笑うオヒョウ (2010-03-23 01:23)