【 たま屋の終わり 】 [雑学]
【 たま屋の終わり 】
東芝が歴史のある電球工場を閉じる事にしました。一部の新聞記事には伝統ある電灯工場とダジャレが書いてありますが、これは本当に伝統がある工場です。東芝の電球製造は19世紀に始まり、120年の歴史があります。新美南吉の「おじいさんのランプ」に登場するランプ屋に廃業を決意させたのは、この電球でしょう。http://eco.nikkeibp.co.jp/article/news/20100322/103443/
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オヒョウがかすかに記憶する子供の頃、電球の底にはマツダランプと書かれていました。これは松田さんの会社という事ではなく、ゾロアスター教のMAZDA神の意味だそうです。 それはなぜか?と母に尋ねると、不思議なことを言いました。
「この電球会社は、エジソンが始めた会社と東芝との合弁企業で、外国資本であった。しかし、日本の会社である事を装う為にマツダという名前を用いた。MAZDA神は光の神様なので、ちょうど都合がよかった」
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母が語るのは、戦前にナチスドイツにおもねる学者が書いた「ユダヤ禍の世界」という本に記載された内容です。この本の記述をそのまま信用できるかは不明ですが、この電球は、輸出用にはEdison Mazda Lamp、さらにエジソン社がGEになった後はGE Mazda Lampというブランドで販売されており、その経営者が外国人であった可能性はあります。国粋主義の体制下では、外国企業である事で具合が悪かった可能性があります。
1910年から使われたマツダランプという商標は、1962年以降は姿を消し、東芝という名前になりました。
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その東芝が白熱電球の製造を止めるのは、確かに照明技術史では大きな事件です。 でもオヒョウはそれ以上の感慨を持ちます。これは「バルブの時代」の終焉を象徴するのです。
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マツダランプの時代、電気は全て真空管の時代でした。
・照明は白熱電球。(ガラス管内にアルゴンガスが入っており、真空ではありませんが)。
・ラジオは真空管(5球スーパーヘテロダインなんて言葉がありました)。
・テレビ受像機はブラウン管。
・テレビ局のカメラに用いる撮像管のイメージオルシコンやビジコンも 真空管。
・ステレオのアンプも勿論真空管です。
・重電の分野での交流発振だって、パワートランジスタ(サイリスタ)が登場する前は真空管でした。
・小学校の放送室の放送機材も真空管で、スイッチを入れてから、暖まるまでちょっと待たなくてはなりませんでした。
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そして小中学校の理科少年が最初に習う電気の知識は3極真空管の原理と構造でした。
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自然科学を学ぶ人達は、自分の専門に「~屋」を付けて自称するのが好きです。物理屋とか電気屋と言ったり、理論屋とか実験屋という言い方もあります。 そして玉屋とか石屋という言い方もありました。 玉屋とは・・・花火屋ではなく、真空管自体や真空管を用いた電気工学を専門とする人です。固体物理学や半導体を用いたデジタル回路を専門にする人は石屋でした。 さらに言えば、石屋はモス屋とバイポーラ屋に分かれていたりしました。(1970年代の話です)。
そして1960~1970年代に、真空管は急速に姿を消していきました。
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最初に半導体になったのはラジオで、トランジスターラジオは1960年代のハイテク日本製品の代名詞です。次に、半導体に置き換わったのは、電子計算機です(世界初の電子計算機エニアックはなんと真空管でできていました)。
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やがて、テレビの回路が半導体になり、オーディオ装置も全て半導体になりました。当時、真空管を追放したステレオのアンプなどのオーディオシステムをソリッドステートと呼んでいました。
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さらにテレビの撮像管もCCDやイメージセンサーに代わりました。もう真空管は見かけません。そのテレビでは、YMOがソリッドステートサバイバーを演奏していましたが、まだブラウン管は残っていました。
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そのブラウン管TVが液晶やプラズマの薄型TVにとって代わられたのはほんの数年前です。 そしてついに最後に残ったバルブである電球もLEDに置き換わるのです。蛍光灯は白熱電球より少し長生きするかも知れませんが、時間の問題です。 蛍光灯には微量ながら水銀が含まれ、RoHS規格対応で、早期に規制される可能性があるからです。
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LED電球が、どのくらい早く普及し、白熱電球が駆逐されるかは、分かりませんが、価格次第です。おそらく2,3年以内でしょう。 えっ?と思うかも知れませんが、薄型TVの普及を見れば分かります。 韓国・台湾・中国のメーカーが量産を開始すれば、あっという間に値段は下がり、旧式の家電は駆逐されます。LED電球も同じ事です。
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そうなると、バルブが残るのは、スーパーカミオカンデのニュートリノ検出装置ぐらいになるかも知れません。 その場合、日本の最後の「たまや」が仕事を続けられるのは浜松ホトニクスだけになるでしょう。
電球にも歴史あり、ですね。
LEDのは、そんなに早く普及しそうですか…。
まだ高価で手が出ないのですけれど。
by おじゃまま (2010-03-23 16:13)
こんばんは。
本日おもしろく。
先日ぎゃらりぃの電球消えて、「切れた」と思って買いに行ったら2千円ほど。購入し交換したらつかない。本当は接触不良。高い勉強代でした。
by 夏炉冬扇 (2010-03-23 20:21)
初めまして。
ニュースを見たとき、教科書に載っていた『おじいさんのランプ』を思い出していました。おじいさんがランプに石を投げて割っていったシーンが強く印象に残っています。
by sako (2010-03-23 21:04)
おじゃまま様 コメントありがとうございます。
LED電球の普及速度の見込みは、憶測ですが、過去1年の間に約半分に値段が下がっていますから、もう1年で今の半額まで下がれば、爆発的に普及しだします。 実はLED電球の価格を下げるには、もう一つのハードルがあります。 それは白色ダイオードに関する基本特許がいつ切れるかです。数種類ありますが、どれもあと数年あるようです。もっとも、特許など知るか!という国が製造する分には関係ありませんが。
またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-03-23 21:55)
夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。
私も購入した電球の口金があわなくて、せっかく買った電球を無駄にした事があります。自分の不注意なのですが、なぜか電球メーカーに対して腹がたちました。
またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-03-23 21:58)
sako様 ご訪問、そしてコメントをありがとうございます。
電球には懐かしさがあるだけではありません。ちらつかない柔らかい光線と
温かみがあります。 暖房にも使えて、鶏卵を孵化させる時や、ひよこを育てる時に、白熱灯の電球を使いました。
もっとも、夏場はそれが暑苦しさをもたらしますし、エネルギー効率は悪いし、
寿命も短くなる訳ですから、悪く言えば欠点です。 地球温暖化防止を叫ぶ人からは目の敵にされるかも知れませんね。
またのコメントをお待ちします。
明日は、所用により、更新をお休みします。
by 笑うオヒョウ (2010-03-23 22:02)
ギターアンプもデジタルアンプなる奇怪なものがありますが、
プロミュージシャンは現在でも真空管アンプ愛好者が大多数です。
何か大事なことを意味してると思うのですが・・・。
by 白熊パパ (2010-03-24 02:51)
白熊パパ様 コメントをありがとうございます。
実は、もう亡くなられましたが、オヒョウの学生時代の恩師も真空管アンプのファンでした。先生はギターは弾かず、もっぱら聞くだけでしたが、完全に忠実ではない(ハイファイではない)世界を愛しておられました。弦楽器もアコースティックな方を良しとされ、線形ではない非線形なものに味わいを見出しておられました。
デジタルを愛し、線形な世界だけを考え、数値解析で全てを処理しようとする若い学生たちを苦々しく思っておられたようです。私は不肖の弟子でした。 いや弟子未満だったかも。 またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-03-25 17:21)