【 ゆらぎの人 その1 】 [政治]
【 ゆらぎの人 その1 】
鳩山政権の方針のブレについて、記者に尋ねられた鳩山首相は「民主主義自体は“ゆらぎ”だ。物質の本質は”ゆらぎ”であり、宇宙も地球もその本質は“ゆらぎ”だ」と返答して煙にまいたとの事です。ブレを”ゆらぎ”と言い換える事の是非はさておき、マスコミはさすが理系首相・・・と褒めているのか皮肉っているのか分からない論評をしています。
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多分、オヒョウが新聞記者でも同じコメントを書いたと思います。90%の皮肉と10%の尊敬を込めて・・。
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実際、彼が言う通り、自然現象は”ゆらぎ”に満ちています。オヒョウが学校で勉強した頃、マクロ的な物理現象、ミクロ的な物理現象、量子論的な世界の3段階でそれぞれに”ゆらぎ“がありました。 “ゆらぎ”は物理現象の本質だ・・・という首相の指摘はあながち間違いではないでしょう。
ちなみに新聞によっては、物理現象の”ゆらぎ”の根源をハイゼンベルグの不確定性原理に置いていますが、不確定性原理で説明できる”ゆらぎ“は限定的です。光量子のエネルギーの値が波動関数で示される事は、確かに不確定性原理に基づいた”ゆらぎ”ですが、反粒子の対の生成と消滅を示す”真空のゆらぎ”は別の説明が必要です。
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量子論の”ゆらぎ”はこのブログでは説明しきれませんし、書きすぎるとボロが出るのでここで止めます。
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マクロ的な”ゆらぎ”は、そよ風や雲の動き、水の流れなどで観察される”1/fゆらぎ”と呼ばれるもので、パワースペクトルが周波数に反比例するものです。 風や流れには、カルマン渦のように明確な周期性を持ったものもありますが、非周期性のものもあり、それが”ゆらぎ”です。これにはピンクノイズという名前があり、オヒョウはその呼び方が好きです。
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ミクロ的な“ゆらぎ”は物質の凝固現象などで見られる現象です。凝固過程で、温度勾配や濃度勾配が一様なら、本来固液界面は平な平面になりますが、実際には”ゆらぎ”によって微小な凹凸があります。 凹凸があると、凝固速度に差ができて、ますます凹凸が激しくなります。その結果、デンドライトと言われる樹枝状結晶ができます。デンドライトは典型的なフラクタクル図形で、重力場の”ゆらぎ”と熱的な"ゆらぎ”の両方の影響を受けます。だから凝固金属のデンドライト形状は、無重力の宇宙で凝固させた時と地上で凝固させた時で全く異なります。
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それどころか”ゆらぎ”ですから形の再現性は限定的です。子供の頃、冬の朝の窓ガラスに、美しいシダの葉状の氷の模様がつくのを見ていましたが、毎日違う模様になるのを不思議に思っていました。でも”ゆらぎ”の現象だから、ある意味で当然なのです。
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実はデンドライト凝固には”摂動”も関与します。 摂動とは、解析解の方程式には現れないmiscellaneousな項目の微細な力による運動の事です。天体の軌道や地球の自転を計算する際、3つ以上の天体の重力の影響を解く事はできません(多体問題)。それらの影響による微細な影響は”摂動”とされます。
フラクタクル図形であるデンドライトの先端の微小な凹凸でも”摂動“が見られます。溶質原子の衝突などによるものと思われますが、昔、東北大学の佐藤侑という研究者が研究していました。 周囲の物体との衝突によって、運動の方向が無秩序に変化する”摂動”はブラウン運動とも呼ばれ、その位置と運動量は確率論的にしか示されません。かのアインシュタインが研究したもので、その位置の確率的分布は酔歩問題として知られています。 デンドライト成長の先端部分の”摂動”とそれによる”ゆらぎ”は面白い現象で、一度勉強してみたかったのですが、オヒョウには機会がありませんでした。
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とりとめの無い話になりましたが、鳩山首相の場合は”ゆらぎ"というより”摂動”という方が的確です。周囲とぶつかる度に、方向を変化させ、一定しないのですから、まさにブラウン運動というか”摂動”です。
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政治家である以上、臨機応変に変化していく部分も必要でしょうが、逆に不動のバックボーンというか信念も必要です。 鳩山氏の場合はそれがあるのか・・不明です。
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オヒョウが高校時代に物理の先生に質問した事があります。電子の電荷を決める「ミリカンの油滴の実験」に関して、油適に及ぶブラウン運動の影響については考慮しなくていいのか? という質問です。先生は、少し考えて、油適は十分に大きいのでブラウン運動は考慮しなくていい・・と言われました。 そして、関係ない話をされました。
「“ゆらぎ”のある自然現象をそのまま受け止めて、解析するのが理学部だ。”ゆらぎ”の無い人工の世界を造り出すのが工学部だ。同じ理科系でも性格が異なる。 本人の好きな道を選べ・・」
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政治は、法律にせよ予算にせよ、人工の物を創り上げていく世界ですから、理学部ではなく工学部の世界に近い訳です。つまり”ゆらぎ”に惑わされず、確固たるものが必要なのですが、”ゆらぎ”を認めてしまう、鳩山首相にはその自覚はないようです。彼も、理学部ではなく、工学部の出身のはずですが・・・。
以下次号、(次号ではもっと論旨を明確にします)
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