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【 つくば山麓逆転層 】 [雑学]

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【 つくば山麓逆転層 】 

茨城県の西部には果樹園がたくさんあります。山形県や岡山県にはかないませんが果物王国です。 その筑波山の山麓には観光ミカン園もあります。北関東(利根川以北)でのミカン栽培は、気候的にちょっと辛いのですが、それなりに栽培されています。そして不思議な事に、ミカン畑は、低い平地ではなく、山の斜面にあります。それはなぜか?

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そのミカン園に遠足に行った小学生が話したそうです。

「 暖かい方がミカン栽培には都合がいいそうだけど、どうしてこのミカン畑は下の平地ではなくて、山の中腹にあるのかな?低い平地より上の方が暖かいのかな? 」それを聞いた先生がどう答えたかは知りませんが、オヒョウならその児童の発見を褒めたはずです。

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ご承知かも知れませんが、気温は標高が100m上がる毎に0.65度下がると言われています。 これは下から上に空気が移動した場合、気圧が下がり、断熱膨張の仕事をして熱を奪われるから気温が下がるとも言えますし、まず太陽光線で地表や海面が暖められ、その後に空気が暖まるから地表から遠いほど気温が低いという言い方もあります。

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しかし上にいくほど気温が高くなる場合も、まれにあります。それが逆転層です。 実は冬の北関東平野では、逆転層がしばしば発生します。八溝山地と太平洋の間にある日立では、その逆転層より高い煙突を立てる事で、銅の製錬所の公害発生を軽減しました。このいきさつは、新田次郎の小説「ある町の高い煙突」に登場します。

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関東平野の独立峰である筑波山も、逆転層が発生する条件が揃っています。 冬の季節風が山の斜面に沿って下る際、断熱圧縮で山の東側斜面で気温が上昇する、沈降型逆転層が発生します。(中腹で発生するフェーン現象と言えます)。あるいは、風の少ない日は、平野部の地表が放射冷却で冷え込み、山麓より、気温が下がる接地型逆転層の場合もあります。筑波山の場合、その両方の逆転層の可能性があります。

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冬の温暖さが勝負のミカン栽培では、むしろ中腹の方がミカン栽培に適しているかも知れません。

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逆転層が存在するとどうなるか?基本的には対流が起こらなくなり、空気が淀みます。下に暖かい空気があり、上に冷たい空気があれば、対流で上昇気流が発生しますが、その逆であれば上昇気流は発生しません。

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逆転層を超えたその上でなければ、気流は発生せず、大気の拡散もおこりません。 大気汚染は滞留し、空気は淀みます。

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利根川を超えて、千葉県佐原から茨城県の水郷地帯へ向かう道路から鹿島臨海工業地帯が見渡せます。中でも製鉄所の第3焼結工場のひときわ高い煙突が目立ちます。これはオヒョウの義父が建設に関わったものですが、煙の向きを見ると、昼間は陸から海へ流れています。海岸での海風・陸風とは逆で、この煙突が逆転層を突き抜けた高さにあることが分かります。 大気汚染防止を考えた場合、逆転層を突き抜ける事が重要だと分かります。

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実は逆転層は、気象の世界だけではありません。実社会、企業組織の中にもあります。

例えば・・・・賃金。 一般職者が管理職に昇進すると残業手当がなくなり、代わりに管理職手当が付きますが、結果的に手取り収入が減る事があります。 責任は重くなりサービス残業が増えて、収入が減るのでは、管理職への昇進意欲が減退します。つまり、上昇気流がなくなり、空気が淀みます。本来なら下位の人の収入が上位の人の収入を上回る事はないはずですが、景気の悪化で、管理職の年収が抑えられ逆転層が存在するのです。

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企業の年齢構成も同じです。本来ならピラミッド型の構成のはずが、景気の良し悪しで、採用人数を変化させたために、構成はいびつな形になっています。一般者より管理職の方が多い逆転層も存在します。年長の世代に多くの人がいるため、若い人にはポストが回ってきません。 この点も若い人のモラールダウン(労働意欲の減退)をもたらします。

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もっとも、今は会社を退職しても、再就職が難しい状況ですから、それを恐れて、頑張る人もいるでしょうが、それは本来の姿ではありません。逆転層が存在する環境は、全てが停滞し、活動的でなく、それでいて不安定です。

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空を飛ぶグライダーのパイロットは、上昇気流を見つけるのが得意です。地表に熱せられた空気は、上昇気流になり、もっとも高くなる場合は、成層圏と対流圏の境界まで達します。夏の入道雲やかなとこ雲はその例です。サーマルとか、テルミックと呼ばれるその気流を見つけるのが、グライダー乗りの醍醐味(だそうです)。逆に逆転層の停滞した空気の中では、グライダーは飛行できません。

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企業社会でも、上から俯瞰して逆転層の存在と、その結果停滞している人事、よどんでいる雰囲気といった問題点を見つけ、清新な上昇気流を吹き起こす人がいなくてはなりません。まずは気流を読むグライダーパイロットの感覚が必要です。 いやグライダーでなくてもいいのです。トンビの目があれば、上昇気流と停滞した逆転層は見分けられます。

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経営者や組織のリーダーの皆さんに、オヒョウはトンビの目を期待します。

閉塞感の漂う環境にいる若い人には、逆転層を突き抜ける気概を期待します。

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ところで国会にはトンビならぬギョロ目の鳩がいますが、彼に、上昇気流は見えているのか・・? あるいは逆転層は見えているのか?それはオヒョウには分かりません。


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雪紘

つくばに佐原に鹿嶋の工業地帯の様子、
馴染みある地名が多く、ほくほく拝見させて頂きました^^
みかんといったら、温暖な地方。。。
児童の素朴な疑問もあっぱれですが、
逆転層の発想を実社会にも当てはめて考えられるとは流石ですね。
私も疑問・興味をその場だけで終わらせないよう、心掛けたいです;;
by 雪紘 (2010-02-19 13:41) 

笑うオヒョウ

雪紘様 コメントありがとうございます。

私の家内は、少女時代を鹿嶋で過ごしました。高校は佐原で、
毎日利根川を電車で渡って通学していたそうです。

鹿嶋の小学生は一度は、筑波山に登ります。
私の子供達も歩いて登りました。私はロープウェイで登りましたが・・・。

あまり詳しく書くと家族のプライバシーに触れますので、ここでやめます。
またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-02-19 21:44) 

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