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【 炭酸ガスがいっぱい 】 [鉄鋼]

【 炭酸ガスがいっぱい 】

複雑な現象を調査検討する場合、おおざっぱにくくると単純明解なのに、細かいところを調べて行くと、とてもこみいっていて、訳がわからない・・という事がしばしばあります。

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医学の分野などは、その典型かも知れません。お医者は「風邪ですね」の一言でも、症状は患者によって千差万別です。

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政治の分野もその典型です。「行政の無駄を無くして歳出を削減するのだ」というスローガンは正しく、総論には誰も反対しません。しかし、具体的にどの事業を仕分けするのか?という各論に入ると、議論は喧々諤々で、なかなか目標額まで歳出を削減できません。

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全体を見回すと単純なのに細部は複雑・・・というジレンマは、アプローチ手法に関係するのかも知れません。一般に理科系の人はAnalysisに優れるがSynthesisが苦手で、一方文科系の人はSynthesisの訓練も受けていると・・・オヒョウはかってに考えています。 だから理科系か文科系のどちらか片方のセンスだけで、考えると難しいのかも知れません。

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前置きが長くなりましたが、製鉄所で発生するCO2量の評価・把握は、まさに「大雑把に考えれば単純で、細かく考えれば複雑」という事例の典型です。

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製鉄業は、石炭を燃やすのが商売ですから、年間にその製鉄所で消費する石炭の量を把握すれば、発生するCO2の量も簡単に分かります。ごくごく一部の炭素は、CO2にならずに、鋼中成分として残りますが、これはわずかで無視すべき量です。

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同時に生産・出荷する鋼材製品の量も正確に把握できますから、鋼製品1t当たりのCO2排出量も簡単に計算できます。

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でもミクロでみると、話は複雑です。 高炉で燃やすのは殆ど石炭(コークス)ですが、重油を吹き込む事もあります。あるいは最近は廃プラスチックを燃やしています。それらは炭化水素ですから、同じ熱量を発生させても、石炭(コークス)を燃やす場合とは異なります。

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更に製鉄所内では膨大な量の電力を消費しますが、その発電方法でCO2発生量が異なります。ご存知の通り、製鉄所はかなり大型の発電設備を持っており、電力料金の高い昼間は電力会社に売電して、料金が安い夜間は電力会社から買電したりしています。

購入する夜間の電力は原子力の比率が高く、CO2排出量は低くなります。 しかし、昼間の買電は火力発電の比率が高く、CO2排出量は多くなります。 一方、製鉄所や併設する火力発電所で発電する分は、化石燃料を消費していると言えますが、コークスガスや高炉ガスを燃やす分には、製鉄所で消費する膨大な石炭の内数で、別計算にする必要はありません。 しかしその発電所で一緒に天然ガスを燃やしたりすると、話が複雑になります。

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更に、消耗品である耐火物を製造する際に必要とする熱エネルギー、石灰石から生石灰をつくる時の熱エネルギー源を考えると、計算は更に複雑になります。いや、それどころか、CaCO3CaOCO2という反応もありますから、これは固定されていたCO2を空気中に排出したと言えます。なにも、化石燃料の燃焼だけではないのです。

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製鉄所で行われる化学反応は単純ですが、発生するCO2の量を精確に求める事は、極めて困難です。 仮に日本だけが精確に計算しても、中進国や途上国の製鉄所が精確に計算するとは思えません。

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中進国の場合、ミクロ的な計算だけでなくマクロ的な計算も正確とは思えません。 例えば中国の場合、粗鋼の生産量は、日本の3倍以上となり、世界最大の鉄鋼生産量です。しかし、同国の鉄鉱石消費量と、原料炭消費量と、粗鋼生産量の3者を比較すると計算があいません。電炉鋼を計算にいれても、うまく説明できません。

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それに、如何に経済成長著しいといっても、中国の国内市場で年間3億トン以上の鋼材が消費されているとも思えません。輸出量を計算に入れても、帳尻があいません。

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つまり、中国政府が発表する鉄鋼業に関する経済統計は、あまり信用できない・・・という事です。目に見える鋼材の生産量の数字さえ眉唾なのに目に見えないCO2発生量を精確に把握して、正直に発表するとは思えません。

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ではどうするべきか?

1.ミクロ的な排出量の計算をあきらめ、極めておおざっぱな方法でCO2排出量を把握する。具体的には人工衛星で、大気中のCO2濃度の局所的な分布を把握し、CO2発生源付近のCO2濃度を評価基準とする。

2.CO2発生源を叩くという今の方法を見直し、緑化推進と海面上昇対策を講じる。 

オヒョウは、1.と2.の併用しかないだろう・・・と思っています。

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コメント 4

はっこう

はっこうです。
おっしゃるとおりですね(^^)
by はっこう (2010-02-18 10:24) 

おじゃまま

人工衛星ですか…。なるほど。そのほうが説得力ありますね。
(というより、私にも何となく分かる?かな、と。)
by おじゃまま (2010-02-18 15:45) 

笑うオヒョウ

はっこうさま コメントありがとうございます。

CO2発生と地球温暖化の問題は、これからも駄文を書き続けようと思います。 オヒョウは製鉄会社とは無関係ですが、現在のCO2排出産業への風当たりの強さを考えると、ちょっと弁護したくなったりします。
勿論、基本的には公平な立場から書こうと思っているのですが・・・。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-02-18 21:45) 

笑うオヒョウ

おじゃまま様 コメントありがとうございます。

人工衛星の利用方法は、実にさまざまで地球温暖化ガスの発生状況を調べるのは、ほんの一例です。 JAXAが、一般から人工衛星の利用方法を公募してアイデアコンテストを行えば面白いのに・・・なんてオヒョウは考えております。やがて。オナラやゲップまで、人工衛星でトレースされる時代が来るかも知れません。そのあたりは次号で。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-02-18 22:48) 

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