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【 パイの話 その後 】 [コンピューター]

【 パイの話 その後 】

 フランスの技術者がパソコンを使って円周率を求める計算で、到達桁数が、筑波大学のスーパーコンピューターの記録を抜いたというニュースがありました。http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2681124/5146651 

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もし、このニュースが事業仕分けの前に飛び込んでいたら、蓮舫あたりは、鬼の首を取ったかのように言ったでしょう。「スパコンで世界一にならなきゃ・・なんて言ってるけれど、パソコンでも同じ事ができるじゃないの」新聞記事でも、この技術者が使用したパソコンの価格を27万円足らずだとして、高額なスーパーコンピューターを揶揄する様な論調です。多くのマスコミは、民主党を支持しており、その民主党政権が行い、多くの国民が注目した事業仕分けについても、好意的な立場なのです。しかし、実際にはパソコンとスーパーコンピューターを比較する事は全くナンセンスです。

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今回のフランスでの快挙はCPUCORE i 7を用いたパソコンを使用していますが、計算に要した時間は、スパコンの場合よりかなり長目の時間です。それはともかく、この記事からスーパーコンピューターの要否の議論はできません。

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オヒョウの独断と偏見ですが、円周率の計算の進歩と、コンピューター(ソフトとハード)の進歩がリンクしていたのは、10年以上前だと思います。特に記憶に残るのは、オヒョウが学校に通っていた頃、桁数の大きな演算で特に有用なFFT(高速フーリエ変換)技術が急速に進歩した事です。その頃、円周率の計算も進歩しました。通常の数値計算では、大きな数字を計算すると、桁数の二乗に比例して演算時間が伸びてしまいます。しかし、FFTを使うと、桁数と演算時間はほぼ比例するレベルに収まります。

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今、私の手元には19823月の数理科学No.225号があります。それには、ユニークな在野の数学者、柴田昭彦さんが書いた円周率1000万桁への歩みという記事があり、円周率の素人でも十分に楽しめる記事になっています。 余談ですが、オヒョウはこの柴田昭彦さんを尊敬し、そのライフスタイルに憧れます。

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その内容を紹介すると、円周率の算出方法全体に関する解説とコンピューターを用いた場合の計算内容の解説の2種類に分かれます。彼の説明では、計算機での円周率計算は、大別すると3項目に分かれます。それに似た内容が、下記のURLにも書かれていますので、興味のある方は、お読みください。

http://ja0hxv.calico.jp/pai/pietc.html 

3項目を順番に書きますと、

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1.円周率を求める計算

π=の形で示される無限級数の計算で、円周率を求めますが、いかに収束の早い無限級数を見つけるかがポイントです。多くはArcTangentの級数の形をとります。  古来、多くの数学者がπを計算するのに適した級数を発見しています。あのインドの天才数学者ラマヌジャンの式もありますし、ル・ジャンドルの式もありますし、柴田昭彦の式もあります。

実に多くの研究者の名前を冠した公式があり、それぞれに計算速度(収束速度)を競っています。

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2.10進法への変換

2進法の計算結果を10進法に換算するプログラムを高速化します。 全てのコンピューター(含む電卓)で必要なプログラムですが、膨大な桁の計算結果を変換するとなると、能率の良い計算方法が求められます。

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3.検算

桁数が非常に大きい場合、特に、検算方法が重要です。算出した結果が正しいかどうかの確認は、円周率の計算の場合、特に重要です。

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お気づきの通り、1は数学者のテーマです。2はコンピューター技術者のテーマです。3は数学者と技術者の共通のテーマであり、円周率計算桁数の新記録がでる場合というのは、この3拍子が揃った時です。柴田昭彦さんの記述をみると、コンピューターを使って円周率を計算するようになってから、頻繁に新記録を塗り替えているのは、専らフランスと日本です。

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今回のフランス人技術者は、2.の2進法→10進法への変換プログラムと、3.の検算方法に工夫を凝らしてオリジナルのものにし、高速化に成功した・・という事です。

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円周率の計算には、数学的要素がありますが、しかしπを計算するために効率の良い無限級数を探す事は現代数学の主な話題からは、ちょっと外れています。π自体は超越数である事が証明されていますから、今更何桁求めようと、数学的な意味はほとんどありません。 これは趣味とこだわりの世界です。

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円周率の計算には、コンピューターの技術開発の要素もありますが、これはスーパーコンピューターの性能向上とは、ちょっと方角が違うかも知れません。スーパーコンピューターは、何兆桁もの1つの数字を短時間の内に求めるのが仕事ではなく、シミュレーションなどで膨大な計算を並行して実行する事が本来業務です。確かに個々のCPUの演算速度が高速化すれば、円周率の計算速度はあがりますが、それだけの事です。πの桁数の追求は、数学とも技術とも少し離れた存在です。

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多くの桁数を短時間で計算してチャンピオンデータを得る事は、このテーマに特に拘る、一部のファナティックな人たちの世界の事です。オヒョウがそのひとりなら、π(パイ)オリンピックを開催し、4年に1回、オリンピックの様に到達桁数と、所要時間のコンテストを行います。より高速で収束する無限級数の式を見つけた人が金メダルです。効率的なプログラムを考えた人は銀メダルです。一番安くて当たり前のコンピューターを用いた人は銅メダルです。

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東京大学の金田教授は、このπの計算に拘る人の一人です。もしπオリンピックがあれば、何度か金メダルを取っていたはずです。しかし、彼はπの桁数の追求には興味がありますが、スーパーコンピューターに興味があるかは分かりません。金田研究室が開発したソフト、スーパーπは、パソコンの性能評価に使えるものであり、逆に言えばコンピューターの種類を問わないものです。

民主党の枝野氏は「事業仕分けには(その分野の)専門家も揃えた」と言いますが、金田教授が、スーパーコンピューターの仕分け人として適していたとは思えません。 まして、スパコンやパソコンよりも、違法なマジコンやゲーム機の方に興味がある蓮舫には適切な判断などできなかったはずです。事業仕分けの内の幾つかは茶番でペテンであるとオヒョウは思います。


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