【 オーダーは合っているけれど その1 】 [鉄鋼]
【 オーダーは合っているけれど その1 】
鳩山首相がCO2削減マイナス25%を高らかに宣言した後、コペンハーゲンの会議が失敗に終わった為、あの国際的公約は宙に浮いた状態です。しかし、日本人の律儀さというか、目標を立てて計画的に取り組むというスタイルが板についている我々は、既にマイナス25%の達成に向けてのロードマップを検討しています。
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CO2発生に関しては、他産業よりも遥かに重い責任を負う鉄鋼業界もその一つです。 その鉄鋼業界の取り組み内容についてECO・JAPANの増谷茂樹氏が面白い記事を書いています。http://premium.nikkeibp.co.jp/em/report/191/index.shtml
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ここで紹介されている新技術の幾つかは、実はCO2問題が顕在化する前から、コスト低減の為に取り組んでいたものです。それが、たまたま省エネとコスト低減が同じベクトルにあった為に、今になってCO2削減対策技術として脚光を浴びています。しかし、総花的にそれらの技術を取り上げても、最終的なコンソリデーションとして、CO2排出量がなんぼ減るのかは、明確になりません。
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この記事の意見で、オヒョウが素直に同意できるのは、高炉鋼が減って電炉鋼が増えればCO2排出量は減るという事と、最悪、海外に生産拠点を移す事で日本のCO2排出量は減るという事で、それは私のブログにも以前書いた通りです。
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一方で鉄鋼連盟は、日本の鉄鋼産業が、高いCO2削減ノルマを課せられる事がいかにナンセンスかを切々と訴えています。
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対策を進める一方で、ノルマの不当性を訴えるのは、理屈にあっています。 しかし記事に登場する日本鉄鋼連盟の宮本武史常務理事の言葉を読むと、はて?と首を傾げてしまいます。
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「RITEでは、CO2排出量を現状から1t削減する際にかかる費用を試算しているが、日本の場合は476ドルかかるとされている。米国は約60ドル、欧州は8~35ドルだから、その金額の大きさがわかるだろう。中国にいたっては0ドル。これは導入した省エネ設備によってエネルギーコストを下げられるので、プラスマイナスを相殺して結果的にコストがかからないことを意味している」
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これを見て、首を傾げるのはオヒョウだけではないでしょう。
「確かにオーダー的には合っているだろうが、このデータを信用していいのだろうか?」
日本の数字と、欧州の数字の有効桁数の違いに気づけば、あなたは理科系の人です。 気付かない理科系の人も・・・いますが。
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日本の場合は476と3桁の精確な数値で、欧州は8~35と4倍以上も幅のある数値であり、両者を比較する事すら全くナンセンスです。昔、同じように精度の全く異なる数値を比較しようとして、先生から叱られたのを思い出します。 鉄連はこの中学生でも微笑んでしまうようなデータで誰を説得しようというのでしょうか?
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欧州にはさまざまな製鉄所があり一概に数値を決められない・・と言う意見もあるでしょうが、それは日本も同じ事です。個々の数値が正確なら平均すればいいだけで、平均した数値も有意となります。 それが8~35までばらつくというのは、調査自体がちゃらんぽらんだったという事です。さらに言えば、欧州の鉄鋼業界は、CO2削減にまじめに取り組んでいないのではないか?とも言えます。 いわんや中国においておや・・です。
では日本の数値は信用できるか・・と言えば、さあどうでしょう?
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鉄鋼連盟が、この種のデータを発表する時は、会員各社にアンケート型式で照会して情報を収集します。しかし、それがデタラメなのです。オヒョウは、また昔の苦い記憶を思い出しました。
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今から十数年前、LCAの議論が盛んになされたことがあります。LCA ( Life Cost Analysis )とは製造時、使用時、廃却時にかかる環境への負荷(コスト)を算出して、素材や方法の優劣を判断するというものです。 例えば、コーヒーをこぼした時に、使い捨てのペーパータオルで拭くのがいいか、布の雑巾で拭くのがいいかを、真面目に議論する時の手法です。
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当時、自動車業界は軽量化と燃費改善の為に材料を鉄鋼からアルミやプラスチックに変える事を検討していました。危機感を持った鉄鋼産業は
「 アルミは精錬時に莫大な電力を消費するからLCAで計算すると、鉄鋼よりもエネルギーを食う。プラスチックは廃棄・再利用の負荷やコストが大きい。だから鋼が一番優れている 」と主張するためにLCAで理論武装しようとしたのです。
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早速、鉄連ではフランスのエコビラン社から、LCAの評価値が算出できる、その名もエコビランという高価な計算ソフトを購入し、製鉄所にデータ入力を要請してきました。賢明なる読者諸兄はお気づきでしょうが、英語のエコバランスをフランス語読みした発音がエコビランです。当時、今ほど世の中はエコ・エコとかまびすしくなかったのですが、既にエコバランスの概念は、先駆的な人々では重要視されていました。
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エコビランの中身はブラックボックスですが、インターフェースはEXCELの形式を取っています。 本社は製鉄所の技術総括部にいたオヒョウにデータ入力を要請してきました。オヒョウは男性一人、女性一人のスタッフに指示してデータ入力を開始しました。 そこで辛い思いをしたのです。
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以下 次号
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