【 果てはギリシャかジンバブエ 】

【　果てはギリシャかジンバブエ　】 

ユーロ通貨圏のひとつであるギリシャが財政破綻の危機に陥っています。実に財政赤字はGDPの12.7%に達し、公的債務残高はGDPの113%に達しているのですから、確かに深刻です。旧政権が隠蔽していた問題が、新政権になって公になったという事情もありますが、ショッキングなニュースです。

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以前のブログ【アジア共通通貨の夢　その２】にも書きましたが、共通通貨ユーロに加盟する為には、マーストリヒト基準（または収斂基準）を満たさなければなりません。

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その中には新規国債の発行額をGDPの３％以内に納めるという条件がありますが、今のギリシャはその４倍も発行しているのです。参加当時は条件を満たしたのでしょうが、今ならユーロの仲間には逆立ちしても入れません。

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これは例えて言えば大相撲の大関陥落みたいなもので、大関になった時にはそこそこ強かったけれど、今はもうダメだね・・。という事でしょうか。

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従来は、一つの国の財政が危機に瀕すれば、まずその国の通貨が下落しました。しかし、ユーロの様に共通通貨を使う場合はどうなるのだろう？とボンヤリと思っていましたが、今回ギリシャの場合は国債の格付が下落したのですね。　まあ当たり前ですが。

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欧州の国にとって通貨ユーロに参加するという事は、健全な財政を持つことの証です。　しかし最初は経済優等生の国ばかりで構成する事ができても、どんどんユーロ圏は拡大していき、必ずしも健全な財政の国ばかり・・・とはいかず、いずれ破綻する国もまれには出てくるだろう・・・とは予想された事です。

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それがギリシャだったか・・・と思ったところ、実はそうではありません。今回の世界恐慌で、なんとユーロ参加国全てで国債発行額がGDPの3%を超えていて、どの国も収斂基準を満たしていない・・という事です。ギリシャだけではなかったのです。

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これは、今回の経済恐慌がひどくて、各国が財政出動を盛んにせざるをえなかったか、それとも最初の基準である３％以下がもともと厳しすぎたかのどちらかです。実際、ユーロを始めた時にはかなり無理をして、基準を満たした国もあるそうです。

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話をギリシャに戻します。どの国も台所が苦しいにしても、ギリシャが一番早く危機に陥ったのには理由がありそうです。

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ギリシャの主要産業は観光と海運業です。どちらも重要な産業ですが、外国の景気変動の波をもろに受けます。

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第二次産業は、あまり強くありません。オヒョウが少しだけ事情を知っている金属産業では、ギリシャには製鉄所はなく、アルミの精錬と圧延の工場があるだけです。

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もともと、西側のヨーロッパといっても、アルプスより北側の豊かな工業国と南側の地中海沿岸部では、様子が違います。その南側でも、ギリシャは第二次産業が弱いのです。

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以前のブログにも書きましたが、ギリシャで青少年に将来どんな職業に就きたいかをアンケートしたところ、男子で人気No.1は海軍の軍人、女子で人気No.1は美容師だったとの事です。これは困ったことです。

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ギリシャは海洋国家であり、しかもトルコとは長年のライバルですし、北には伝統的な火薬庫バルカン半島があります。だから海軍も重要な事は分かります。でも海軍は何も生産しません。国や国民を豊かにしません。その分野に人気がある・・つまり一番優秀な人材が流れるのは、国家としては問題です。それ以外に若い人を受け入れる産業が無い事も問題です。　女子の美容師も同様です。大事な仕事ですが経済を拡大再生産させる産業ではありません。国を豊かにする産業がなく、若い人材を吸収できないのでは、経済危機の津波がくれば経済は破綻します。ユーロ圏に属する他の諸国は、ギリシャの救済を急ぐべきです。

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実は日本もそういう時代がありました。戦前、昭和の大恐慌が日本を襲った頃、男の子が憧れるのは軍人で、陸軍大将になる事が最大の夢だった頃があります。その結果、日本がどうなっていったか言うまでもありません。国にとって軍隊が必要な場面もありますが、最高の職業として軍人に人気があるという状態は不健康です。

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今の日本はギリシャとは違います。戦前の日本とも違います。でも、安心はできません。　今回、経済が破綻したギリシャの国債発行残高は邦貨換算で約7兆円です。巨額ではありますが、日本の国債発行額44兆円よりずっと少ないのです。対GDP比での国債発行残高は、ギリシャが約100%、日本は180%です。

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国家規模が違うとは言え、「　来年度の国債発行額は４４兆円。日銀に買ってもらいますよ　」と藤井財務大臣は涼しい顔で言いますが、日本も事態は深刻です。ギリシャ以下となると・・後はジンバブエに向けてまっしぐらです。

タグ：ギリシャ 国債 アジア共通通貨 財政赤字 ユーロ ジンバブエ 収斂基準 マーストリヒト基準 藤井財務大臣 国債格付

コメント 4

今晩は。
私如きにも分かりやすく。お相撲の喩え特に。
長男は海兵でした。

栗の花波濤の向かう信じけり

畑うっすら雪化粧。



by 夏炉冬扇 (2009-12-19 21:31) 

勉強になりました。
日本は綱渡り状態ですね。
by 白熊パパ (2009-12-19 23:07) 

夏炉冬扇さん　コメントありがとうございます。

お読みになると解ると思いますが、私は決して海軍や自衛隊を志す事が
悪いと言っている訳ではありません。自衛隊に優秀な人物が集まる事には大賛成です。　オヒョウが学校にいた頃と違い、近年は自衛隊も社会的に認知され、その活躍も肯定的に報じられています。

今、TVで放映中の「坂の上の雲」の影響で、ますます自衛隊を目指す人が増えるかも知れませんね。

またコメントをお願いします。

by 笑うオヒョウ (2009-12-20 02:44) 

白熊パパさん　コメントありがとうございます。

この雑文で勉強になるなどと言われると・・恥ずかしくなってしまいますが、
我々は国家経済の危機に対して無頓着なのかも知れません。
ギリシャでは公務員の首切りと給与カットが問答無用で始まる見込みです。

ギリシャには何度か行った事があるのですが、やはり観光立国で持っている国ですね。古代の遺跡があるおかげですが、大昔の先祖の遺産で食っているなんて、なんだか放蕩息子みたいですね。

またコメントをお願いします。


by 笑うオヒョウ (2009-12-20 02:48)